素直になれない君へ5のお題

つんと澄ました天邪鬼
(平泉×達海/ジャイアントキリング)

嫌だね。達海はつんと澄まして言った。
「せっかく平泉さんの部屋まで乗り込むことに成功したのに、ここで帰ったら全部無駄じゃん」
何が無駄なのかね。平泉が溜息混じりに言う。
「知ってんだぜ。平泉さん今奥さんと別居中なんだろ。寂しくない?」
「どこでそんな情報手に入れてきた」
「持田に聞いたらほいほい教えてくれたよ」
「……」
何ともいえない表情で黙り込んだ平泉に、達海がくつくつと喉を鳴らした。
「大丈夫。別に手を出したとかそういうんじゃないから」
俺、平泉さん一筋だし。
「どの口がそれを言うのかね」
「あ、しっつれーね、それ」
達海がするりと平泉の首に腕を回して笑う。
「試してみてよ。他の男咥え込んでないか、平泉さんので」
それともお年には勝てないの?
そう可愛い子ぶって言うと、仕方ない、と抱き寄せられた。
「仕方ないから俺を抱くの?」
「お前は本当に口が減らないな」
「だったら塞いでよ。平泉さんの唇で」
すると達海の唇は望みどおり、平泉の唇で塞がれた。
髭が当たってくすぐったい、なんて笑いながら。
達海は平泉の舌に己の舌を絡ませた。



***
とうとう書いちゃったよ平タツ!おじさまktkrww





素直になれずに後悔するのは
(後藤×女達海/ジャイアントキリング)

※前中後の後です。


「なあ、恒生」
美幸を寝かしつけた後、達海は後藤の顔を真っ直ぐ見て言った。
「今日はゴム無しでやろうぜ」
すると後藤は目を丸くして、やがて困ったように微笑った。
「…それは、困るだろう」
「困んない」
「だって、お前…」
「俺、恒生の子供が欲しい」
後藤の困惑が深くなる。
それもそうだろう。今まで達海がそんな素振りを見せたことは一度も無かった。
避妊をするのが当たり前となっていたのに、今更何故そんな事を言い出すのかと思っていることだろう。
「俺たちには美幸がいるじゃないか」
「うん。でも美幸ももう小学生だし。良いかと思って」
「でも達海、」
「何で駄目なの」
達海は後藤の思いを分かっていながらまるで分からないというように後藤に問う。
「兄弟が欲しいって思って何が悪いの。俺らそんなに生活切迫してないよな」
寧ろ、金銭面だけならもう一人くらい余裕を持って育てられるくらいだ。
後藤の言いたいことは分かる。
それらが全て美幸と達海を思っての事だと言う事も。
「美幸がどうってわけじゃない。ただ、俺が恒生の子が欲しいんだ」
どうしても欲しかった。
自分は後藤の子供を産める身体を持っていて、しかしそのリミットが近付いている。
そう思ったら堪らなかった。どうしても今、後藤の子供が欲しかった。
「好きな男の子供が欲しいって思って何が悪いの」
やっぱり自分には、女としての遺伝子が組み込まれているのだろう。そう思う。
「もう肉体的にもリミットだろうし、今言わずにおいて後悔するよりずっといい」
「達海…」
本当にいいのか、と手を握られる。
それを握り返していいよ、と頷いた。
「だから、今日は気合入れてやろうぜ」
「…余りプレッシャーをかけないでくれ」
がっくり項垂れる後藤に、達海はにひっと笑った。



***
気合入れてヤると男の子が生まれやすいっていう迷信ご存知ですか。(笑)





本当はうれしいけど
(羽田×達海/ジャイアントキリング)

達海は羽田が与えるものなら何でも喜んだ。
ちょっとした菓子を与えるだけでほにゃりと笑ってありがとうと言う。
余りにも嬉しそうにするものだからついつい会うたびにちょっとした菓子を手渡して。
ちょっと待て自分、これじゃ餌付けだろ、と思い直したりしてみて。
けれど結局コンビニの菓子棚に立つのは止められなくて。
さんきゅ、と嬉しそうに達海が笑う。
本当に嬉しいのは、こっちの方だとも知らないで。
その笑顔がどれだけ愛しいかなんて。
気付かなければ良かった。
もう、手放せない。



***
おかしい、羽田がデレ期だ。





…分かれよ、ばか
(村越×達海/ジャイアントキリング)

※ベタ「海辺で散歩」のその後です。


女性体から男性体に戻らなくなって一ヶ月が過ぎた。
これは本格的に妊娠したか、と思った矢先の事。
達海の身体は男性体へと戻ってしまった。
真夜中の出来事に達海は当然の事、村越も呆然としてしまった。
翌朝、ついて行くという村越を押しとどめて担当医の元へ走った達海に齎されたのは。
「ホルモンバランスが崩れてただけか、もしくは想像妊娠だね」
予想外の答えに達海は三度ほど聞き返してしまった。
想像妊娠。
妊娠に対する過度の願望や、または恐怖が原因で起こる現象。
しかし達海に妊娠に対する恐怖なんてものは無い。
となると必然的に出てくる答えは。
…恥ずかしすぎる。達海は帰路の途中、何度も頭を抱えたくなった。
そうだ、単にホルモンバランスが崩れたんだ。そうだそうに違いない。
…けれど今まで物差しで計ったようにきっちりしていたのに?それが急に崩れるものなのか?
そもそもホルモンバランスが崩れた原因は何なんだ?
最近は規則正しい生活を送らされている。となると肉体的な問題は低い。
じゃあ精神的な原因?何が?
……やっぱりそこへ辿り付いてしまう。
そりゃあ猛人も三歳になって、もう一人くらいいたら楽しいかもなあとか思ったけど。
ああもう。
部屋にたどり着くと、猛人が玄関に飛び出してきた。続いて村越もリビングから出てくる。
「どうだった」
猛人を抱きとめて、達海は視線を彷徨わせた後ぽつりと告げた。
「…多分、想像妊娠だって」
「想像妊娠」
村越は言葉を脳内で反芻しているようだった。
「想像妊娠」
「何度も言うな!恥ずかしいだろうが!」
がっと恥ずかし紛れに怒ると、何だ、と村越はほっと息を吐いた。
「…流れたのかと思った」
「…だから、出血も痛みも無かったって言ったじゃん」
ほい、と猛人を渡して達海は靴を脱ぐ。
「あーあ、なんかばっかみてー」
ぺてぺてとリビングへ向かうと、なあ、達海さん、と村越が声をかけて来た。
「何?」
「想像妊娠するほど、二人目が欲しかったのか」
村越の問いかけに、達海はぐっと言葉を詰まらせて視線を逸らした。
「……二人目とかじゃなくて、お前の子だから、もっと欲しいって…あーもう何言わせんだよ!」
分かれよ、バカ。
足音荒くリビングへと入っていってしまった達海の後姿を見送って、村越はふっと笑う。
「おとうさん、おろして」
「ああ」
とすんと猛人を下ろすと、猛人もまた母親を追ってリビングへと走っていってしまう。
お前の子だから、もっと欲しいって…。
緩む口元を押さえ、村越もまたリビングへと向かった。



***
想像妊娠でした。が、この後頑張って結局二人目が生まれます。(笑)





小さな意思表示
(村越×女達海/ジャイアントキリング)

※「…分かれよ、バカ」の続きです。ちゃんとデキました。(笑)


「多分女の子だって」
帰宅するなり達海はそう言って村越の隣に座った。
レポートを書いていた村越はその手を止めてそうか、とだけ言った。
「猛人は?」
「部屋で寝てる」
「そっか。…今回はお前の言うとおりになったな」
「まだ生まれてみなきゃわからんだろう」
「まあそりゃそうだけどさ」
コーヒーを淹れてくる、と立ち上がった村越に俺のも、と声をかける。
書きかけのレポートを眺めながら何でだろうな、と達海は思う。
猛人が生まれる前もそうだった。
何故か村越は生まれてくる子が女の子だと確信しているような節があった。
だから猛人の性別が判明したときは物凄く不思議そうにしていたのをよく覚えている。
「お、さんきゅ」
ことりと目の前に置かれたカップにはミルクたっぷりのカフェ・オレ。
自分はブラックの癖に、こういう気遣いが達海には嬉しくて堪らない。
「なあ、村越」
「何だ」
「何で女に拘るんだ?」
すると村越はちょっと考えた後、拘っているわけじゃない、と言った。
「ただ、変な夢を見ただけだ」
「夢?」
「ああ、アンタそっくりの娘が出てくる夢だ」
だから自然とそう思い込んでいた。そう村越は言った。
「ふうん」
夢、ねえ。達海はカフェ・オレを啜りながら思う。
「じゃあ、名前とかも決めちゃってたわけ?」
「いや、その時は特に考えてなかったんだが…」
「だが?」
「…その、さっき、あんたを待っていて考えていた名前がある」
ゆきの、だ。と村越は言いながらレポートの隅に「幸乃」と書いた。
「幸乃、ね。良いんじゃないの。…あ」
「どうした」
「今、ぽこって腹蹴った」
「…どういう意味だと思う」
「さあ?肯定でいいんじゃないの?」
どうせ本人は覚えてないって。達海はけらけらと笑った。
そして数ヵ月後、生まれた子は元気な女児で、幸乃と名づけられた。



***
ということでコシタツ組にも第二子登場ー。一応、ベタ「過去へタイムスリップ」とリンクしてます。

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