意地っ張りな君へ5のお題

一人だって、大丈夫
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

達海が好きだ、と後藤は言った。
だから達海はうん、と頷いて一気に言葉を続けた。
「俺も後藤の事が好きだけど俺は一人だって大丈夫だからそういうのは要らない」
用はそれだけ?俺忙しいから。
それじゃあ。
さっさと踵を返してその場を立ち去ろうとすると腕を掴んで引き止められた。
誰が掴んだなんて考えなくても分かる。後藤だ。
渋々振り返ると、怒ったような困ったようなよく分からない顔をした後藤が居た。
「今の言葉はどう取ればいいんだ」
「どうって、そのまんまだよ」
俺も後藤の事好きだけど、俺は一人でも平気だから。
だってキャパシティオーバーなんだよ。だから要らない。
びっと後藤の腕を振り払って再び歩き出す。
また掴まれた。
「後藤、離して」
「嫌だ」
断られた。
後藤の馬鹿。
どうして逃がしてくれないんだよ。



***
そして「独りになりたがるのは失うのが怖いから」へ続く。





頼る事なんて、出来ない
(後藤×女達海/ジャイアントキリング)

※前中後の中くらいです。


妊娠した。
するわけ無いと思ってたのに妊娠した。
何で、って思った。
俺、そんなの望んでいなかったのに。

でも、嬉しい。

でも、どうしよう。
産めるわけ、ないのに。
誰にも相談なんて出来ない。
頼ることなんて、出来ない。
堕ろすしかない。
堕ろすしかない、けど。
でも本当は、産みたい。
村越と、俺のコドモ。
産みたい。生みたい。
でも、どうすれば。
「達海」
後藤、
「俺には相談できないことなのか?」
後藤、
「俺はいつだってお前の味方だ」
後藤、
「お前の事が心配なんだ」

ごとう、

「後藤、俺な、男と女の両方の性別もってるんだ」

信じて。
俺を、この子を、救って。



***
そして「子どもが出来る」へ続く。





無駄なプライドが邪魔をする
(村越→達海/ジャイアントキリング)

もし、なんてことは考えても仕方がない。
けれど人は愚かだからもし、なんてことを考えてしまう。
もしあの時。
達海の体調が悪い事に気づいたあの時に問い詰めていたら。
自分の想いをあの人に伝えていたならば。
何かが変わっていただろうか。
あの人は後藤の隣ではなく、自分の隣で笑っていただろうか。
あの子は自分を父と呼んでくれただろうか。
考えても仕方のないことだ。
そう分かっていても、人とはそれを考えてしまう虚しい生物だと思い知る。
ありもしない幸せな夢を見て、後悔に泣くくらいならどうしてあの時。
無駄なプライドなど、捨ててしまえばよかった。



***
後に悔いると書いて後悔。





守ってあげたい
(??/ジャイアントキリング)

※前中後村越編その後です。


村越幸乃、という少女がいる。
彼女はとても大人しく、しかしどこか華がある愛らしい少女だ。
彼女の周りにはいつもたくさんの人が居て、その人気ぶりを示していた。
引っ込み思案の自分では到底声の一つもかけられない。
そんな高嶺の花だった。
そのはずが、何の奇遇か今年は同じクラスになり、しかも席まで隣になれた。
よろしくね、と笑った彼女の笑顔が焼きついて、その日のことは余り覚えていない。
守ってあげたい。そう思わせる愛らしい笑顔。
そんな彼女の隣の席になれるなんて。
俺は何て幸せなんだろう。

「…って鈴木先輩が言ってたらしいよ、繁」
しげる、と呼ばれた少年は可哀相に、と涙を拭うふりをした。
「いい先輩だったのにね、健」
「ああ、本当に」
たける、と呼ばれた少年もまた涙を拭うふりをした。
「…私の可愛い双子ちゃんたち、何を話しているのかな?」
二人はぎくりと肩をすくめると、そっくりの顔を見合わせてそろりと振り返った。
「「あはは…」」
そこには二人の姉であり、話題の中心であった村越幸乃がにんまりとした笑顔で立っていた。
「やあ、幸乃お姉さま」「僕らに何か御用で?」
「御用で、じゃない」
幸乃はがっと二人の胸倉を掴むとぎりりと締め上げた。
その細腕のどこからそんな力が出てくるのか分からないが、強い締め付けに二人はギブギブ!と声を上げる。
「今、お姉さまの悪口言ったでしょう」
「だって姉ちゃんが学校で猫かぶってるせいで俺らやりにくいんだよ!」
「何かあるとすぐお姉さんは立派なのにって言われるんだよ?!」
するとぱっと手を放した幸乃が腰に手を当てて「馬鹿じゃないの?」と二人を見た。
「実際、私は立派なんだからその評価は正しいのよ。あんた達みたいに遊び呆けてませんからね!」
「遊んでるんじゃないよ!プロになるために特訓してるんだよ!」
「そうだよ!お父さんとお母さんみたいになるために頑張ってるんだよ!」
「何よ!サッカーばっかで勉強が疎かになってるくせに!」
双子はぐっと言葉を詰まらせた。事実、先日のテストは散々で両親に呆れられたばかりだ。
「プロになれたって何年現役でいられると思ってるの?引退してからはどうする気なの」
「お父さんみたいにコーチになる」「お母さんみたいに監督になる」
「ばーか。どっちにしたって勉強しなきゃならないじゃないの。一般教養を勉強したくないとか言ってる間は無理ね!」
すると「その辺にしておけよ」とのんびりとした声がして双子はほっと息を吐く。
長男の猛人が欠伸をしながら三人の間に割って入ってきた。
「猛人兄!だって!」
「いいよいいよ、放っておけば。困るのこいつらだし」
「猛人兄ちゃん、それはそれで」「助けになってない気が」
「まあ助けてるつもりあんまりないし」
俺はコーヒー取りに来ただけーとふわふわした足取りでキッチンへ向かう。
「猛人兄!そんな半分寝てる状態でコーヒーなんて淹れないでよ!」
私が淹れるから!と兄の後を追っていく後姿に双子ははあ、と溜息をついた。
「上二人が文系だと辛いね、健」
「でも俺らが悪いのも事実だしね、繁」
次のテストはもうちょっとマシな点数を取ろう。
二人はそう思ってまた深い溜息をついた。



***
猛人はスポーツドクター目指して医大で頑張ってます。(え、双子の説明は?)





ちらりと覗いたきみの本音
(成田×達海/ジャイアントキリング)

達海は恋愛に対して自由奔放だ。
好きな人は好き、嫌いな人は嫌い。
付き合うにしても一人に絞らない。
付き合って欲しいと言われたら、嫌いな相手でなければ即オッケー。
一度聞いてみたことがある。
どうしてお前はそうなのか、と。
すると達海は滅多に見せない、人を皮肉ったような笑みで答えた。
だって人はすぐ変わるから。
たくさんストックしておけば、少しくらい減っても問題ないでしょ?
そして今一番好きなのは成田だと達海は言う。
今のところ、ダントツで成さんが好き。
だから成さんはまだ減らないでいてね。
達海はそう言って笑う。唇だけを歪ませて笑う。
そこに滲むものの正体に成田は居た堪れなくなる。
そういう風にしか人を愛せない達海が哀れで、成田は達海を抱きしめた。
きっとこの抱擁の意味も、達海は理解できないだろうけれど。
それでもやりきれなくて、成田はきつく抱きしめた。



***
ナリタツは暗くなる罠、現在も発動中です。(爆)

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