上に立つ人へ・五題

人の上に立つ器
(深作×達海/ジャイアントキリング)

達海は王だ。
人の上に立つ器を持って生まれてきた存在だ。
だけど同時に鳥のような存在だ。
人の柵に囚われず、自由に羽ばたいていく鳥だ。
そして、達海は去ってしまった。飛び去ってしまった。
それが十年も経ったころ、突然舞い戻ってきた。
あの冬の日、達海に会いに行った日の事を今でも思い出す。
達海は深作を覚えていてくれた。
そして今でも好きだ、と囁いた。
あの瞬間、どれほど嬉しかったか、達海は知らないだろう。
誰にも囚われないはずの王が、自分の元に舞い戻ってきた。
この腕の中に自ら囚われに来た。
それがどれほどの歓喜か。達海には分かるまい。
あの日、達海を尋ねた自分を褒めてやりたい。
この男を、自らの腕に囲える幸せを。
深作は今、噛み締めている。



***
フカタツ誰か書かないかなー。





肩に掛かる全ての重圧
(佐倉×達海/ジャイアントキリング)

プレッシャーに潰されそうだ。
正直、佐倉は泣きそうだった。
会いたい、という言葉にほいほいと新幹線に飛び乗って東京まで来て。
泊まる事になるだろうからホテルも取って。
待ち合わせ場所に立っていた達海と合流して。
一緒にご飯を食べて。
何となく、良い雰囲気だと分かった。
だから、言うなら今しかない、と思った。
だけど、拒絶されたときの事を考えるととてもじゃないが言えたものじゃない。
達海だって折角良い気分だろうに壊されたくないだろう。
でも、次いつ会えるかなんて分からない。
となれば、やはり今言うしかない。
「ねえ、サックラー」
「は、はい!」
「さっきから何か考え込んでるけど、何?」
「は、はい、あの、その…」
もう言うしかない、今だ、言ってしまえ!
「す、好きなんです、タッツミーが…!」



***
そして「俺がいじめたみたいじゃないか」に続く。





どうか勇気をこの手に
(杉江×達海/ジャイアントキリング)

どうか神様、勇気を下さい。
チャイナドレスを着るという勇気を。
だってスギが着て欲しいって言うんだもん。
…そんな事頼まれても神様だって困るよな。
うん、俺が一番困ってる。達海はチャイナドレスを手に溜息をついた。
嫌ならいいです、と引っ込めようとしたそれを慌てて引き戻してしまって。
ああ、今が最後のチャンスだったのに、と気付いたのはその直後。
もう後には引けない。着るしかない。
見るなよ、と念を押して寝室に引っ込んで着替え始める。
こんなのどうやって着るんだよ、ともぞもぞすること五分。
…サイズがぴったりなのが怖いです杉江さん。
達海はちょっと泣きたくなった。
そろりと寝室を出てリビングに戻れば、眼を丸くした杉江とご対面して。
「…似合わないとか思ってんだろ」
だから止めておけば良かったんだ。
けれど杉江はいいえ、と首を振って手を差し伸べた。
誘われるがまま杉江の腕の中へ歩み寄ると、座ったままの杉江が腰に抱きついてきた。
「似合ってます、凄く」
それはそれでちょっと切ない。
とか思っていたらスリットから杉江の手が滑り込んできて、ぴくりと腿が震えた。
「…今日はこのまましてもいいですか」
「…最初からそのつもりのくせに」



***
ベタ「女装(男装)させられる」の続き。




手の内は明かさない
(??×達海/ジャイアントキリング)

好きだなんて言ってやらない。
愛してるなんて言ってやらない。
全部このカラダで感じてよ。
ほら全身で言ってるだろ。
お前が欲しいって。
俺がこんなに素直になるなんて珍しいんだぜ。
だから言葉は最後の切り札。
好きで好きでどうしようもなくなったら言ってやるよ。
アイシテルって。



***
お相手は誰でもお好きな人をどうぞ。





嫌われる覚悟
(黒田×達海/ジャイアントキリング)

嫌われる覚悟なんてとっくに出来てる。
愛してもらえないなら嫌われたほうが良い。
だって、嫌われてるってことは、それだけあいつの心を侵してるってことだろ。
だったら、愛が無いなら嫌われたほうがいい。無関心より良い。
そう思ったら一切の遠慮が消えた。
思い切りクロに好きだと伝えられた。
最初は信じてもらえなかったけれど、それでも好きだって言い続けた。
あれだ、野良犬を慣らすのと同じだ。根気よく、根気よく。
でも、最初は押して押して押しまくってたけど次第にこれ失敗かなーとちょっと思い始めた。
だってクロ、凄い嫌そうな顔してるし。
あ、てことは俺、嫌われてる?ちょっとそれショック。
ああでも嫌われてもいいと思ってはじめたんだし、それでもいいか。
あ、クロ発見。
「ねークロ、今日メシ一緒に食べよーぜ」
あ、また嫌そうな顔。でもそんな顔も好きだって思う自分がいる。
懲りないなあ、俺も。



***
そしてその内陥落してしまうクロでした。

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