狂犬五題
デンジャラス・ライフ (清川×達海/ジャイアントキリング) 達海監督はキス魔らしい。 そんな噂がチーム内に広まっていた。 何でも椿ら若手を初めにベテラン陣もかなりその被害にあっているらしい。 被害?いや違う、恩恵だ。チームメイトの殆どはそう思っていることだろう。 さすがイングランド帰り。 その恩恵を受けた事のある世良がそんな事を言いながら頷いていた。 そんなある日。 ロッカーへ向かっていると向こうから達海が歩いてきた。 手には水色のアイスを持っている。あたりつきのアレだ。 「お。キヨお疲れー」 「お疲れ様っす」 慌てて頭を下げると、暑いねー。と言われた。 「監督は涼しそうっすね」 アイス食って。 「涼しいよ」 と達海がすいっと近付き。 「ほら」 ちゅ、と音を立てて口付けられた。 「?!」 驚きの余り硬直している清川の歯列を割って、ひやりとした舌が入り込んでくる。 舌先は口内をゆっくりと蹂躙し、やがて微かな水音と共に離れていった。 「な、すっごい冷たいだろ」 な、とか言われましても。 これはイングランド帰りとかそういうレベルじゃないんじゃないでしょうか。 「…あれ?キヨ?キーヨ?」 神様仏様石浜様、俺はどうすればいいんでしょうか? *** この後電話でハマに意味不明の事を叫ぶキヨの姿が目撃されました。(爆) 従うのは彼にだけ (後藤×達海/ジャイアントキリング) 猫化した達海というのは時折扱い辛くなる。 基本的には猫化していない時と変わらないのに、突然気紛れを起こす事がある。 そしてそれが聞き入れられないと尽く不機嫌になる。 不機嫌になった達海はもう手がつけられない。 近付けば逃げられるし、無理に近付けばパンチが飛んでくる。 言葉も何を言っても通じなくなってしまう。 そんな達海を宥められるのはただ一人。後藤だけだ。 なので猫化している達海がおかしな事を言い出したら即後藤を呼べ、とチーム内には広まっている。 そして今日も後藤は自分の仕事もそこそこに駆りだされ、屋上に上がって降りてこない達海を宥めに行かされた。 「達海」 屋上の真ん中で寝そべっている達海がちらりと視線だけをこちらに向けた。 「戻ろう、達海」 耳をぱたりと振って達海が起き上がる。 その手を取って立たせると、達海は後藤の腕の中にぼすりと収まってきた。 「ごとー、撫でて」 「はいはい」 ぎゅっと抱きしめて髪を撫でると、ぐるぐると喉を鳴らして達海が悦ぶ。 「ごとー、もっと」 「あとは事務室でな」 お前は練習終わったから良いけど、俺はまだ仕事が残ってるんだよ。 そう言うと達海はじゃあ早く、と急かした。 「早く仕事終わらせて、俺だけを構って」 *** あの屋上(?)って立ってると下からでも見える…よな…。 Bow wow!! (後藤×達海/ジャイアントキリング) 達海はモテる。 普段は勿論だが、猫化している時の達海は更に厄介だ。 街を歩けば野良猫や野良犬が寄って来る。 本人曰く、動物園やペットショップは危険地帯、だそうだ。 そして今日も。 「…今日はまた盛大だな」 「モテモテで困っちゃうよホント」 クラブハウスを出た途端、どこからか集まってきた野良猫たちに後藤と達海は溜息を付いた。 「ごとー」 「何だ?」 「どうもさー俺発情期入ったみたいなんだわ。だからこんなに寄って来るんだと思う」 発情期、の一言に後藤の頬が微かに朱に染まる。 発情期の達海のベッドでの乱れぶりは半端無い。 幾度か経験してきたそれは、後藤にとって刺激の強すぎるものだった。 それがまた。 「…仕事に支障が出ない程度に頼む」 照れくさくてぼそぼそとそう言うと、達海は可笑しそうに唇を歪めた。 「まあ、年に数回の事と思って諦めろよ」 にひーと笑う達海に、後藤は明日の仕事出勤できるだろうか、と一抹の不安を抱いた。 *** きかんげんていぜつりんたっつみーとかでもいいんじゃないでしょうか。(なぜひらがな) 噛み跡にキスを (赤崎×達海/ジャイアントキリング) 息苦しさに目を覚ますと、赤崎にがっちりホールドされていた。 起こさないようそうっと腕をどけ、達海は身を起こす。 そして己の身体を見下ろしてうわあ、と内心で思う。 見えるだけで十数か所のキスマークと噛み痕。 腕も見れば手首にまで噛み痕が付いている。 ほんと、手加減てもんを知らねえな、こいつは。 腕捲りも出来ないじゃん、と達海は溜息をかみ殺す。 でも。 「……」 こんなのも、悪くない。 手首の噛み痕にそっと唇を落として、達海は微笑った。 *** 「躾不足です」その後。 どこまでもいっしょ、 (深作×達海/ジャイアントキリング) 腰を上げるとぱっと達海が身を起こした。 「フカさん、何処へ行くの」 「便所。…付いてくるなよ」 そう一言付け加えるとむっとしたように達海はまたラグの上に寝そべる。 深作はトイレに行きながら一つ溜息を吐いた。 達海は何処へでも一緒に行きたがる。 まるで分離不安を抱えた子猫のように深作の後をついてまわる。 最初は可愛いと思えていたそれも、今では少し、重い。 用を足してトイレを出ると、部屋で達海が動く気配がする。 きっと扉の近くで待っていたのだろう。 部屋に戻ると何事も無かったかのようにラグに寝そべった達海が出迎えた。 じっとこちらを見つめる瞳に、まるで監視されているような気になる時もある。 けれど、それほどまでに達海が自分を想っているのだと思うと、その重圧すら優越感を擽るのだから自分も相当だ。 「達海、飯食いに行くか」 そう言うと行く、と達海が起き上がった。 狭い玄関で二人並んで靴を履き、通路へ出る。 「フカさん、手、繋いでいい?」 「駄目だ」 もう何度も繰り返された問答。 それすらも、心地よい。 *** おっかしいなーなんでこんな方向に行ってるんだウチのフカタツは。(爆) |