忠犬五題
全てお気に召すまま (深作×達海/ジャイアントキリング) 深作の前での達海は従順だ。 なんだかんだ言っても結局は深作の意に沿わないことはしない。 全てお気に召すまま、だ。 そんな達海を可愛いと思う反面、時折、物足りなく感じる時がある。 昔はもっと我儘で強引だった。 深作が嫌だといっても抱きついてきたし、止めろといっても好きだと言うのを憚らなかった。 「なあ、達海」 「何、フカさん」 お前、昔と比べて大人しくなったよな。 そう問えば、そうかな、と達海が笑う。 大人になったって事じゃないの、と言う達海にはなるほど穏やかさが備わっている。 どちらの達海が良い、というわけではない。 どちらの達海も達海であり、愛しい事に変わりは無い。 ただ少し。 「それがどうしたの、フカさん」 「いや、何でもない」 あの頃の達海を、もう少し大切にしてやれたらよかったのに。 そう、少しだけ思った。 *** 深作って幾つなんだろうなあ。達海より二つか三つくらい上のイメージで書いてるけど…。 それは聞けない命令 (村越×達海/ジャイアントキリング) ※限りなくタツコシですがコシタツと言い張るレベルの内容です。 じゃーん、と効果音つきで達海が枕の下から取り出したのは一本のディルド。 瞬間的に村越はまたろくでもない事を考えていると察した。 「これ、使ってみねえ?」 ぺたりと先端を頬に当てて笑う達海に村越は溜息をついた。 「あんた、そんなので足りるのかよ」 見たところ細めに作られたそれ。 自慢するわけではないが村越のものより大分劣っている。 すると達海はやはりとんでもない事を言い出した。 「コレ使うのは、お前だよ村越」 「は?」 「これねーこれでもアナル用なんだって。今のディルドってすげーよな」 そんな事は聞いていない。 達海は村越の上に圧し掛かると、ちろりと男性器を象ったそれの先端を舐めた。 「コレでお前の後ろ、開発してやんよ」 冗談ではない。 達海相手に使うなら未だ吝かではないが、何故自分に使われなくてはならないのか。 初めから問うまでもなく達海が受け入れる側としてきた。 それが今後逆転するなんてことは考えられないし考えたくも無い。 止めるなら早いほうがいい。 村越は即座にそう判断すると達海の腕を掴んで体勢を入れ替えた。 「おお?!」 突然の事に眼を白黒させる達海の手からディルドをもぎ取るとぽいっと部屋の隅に放り捨てる。 「あー何すん、んっ」 文句を言う達海の唇に口付け、言葉を奪う。 聞けない命令は無視して流してしまうに限る。 そう判断して村越は舌を達海の口内へ滑り込ませた。 *** ゴトさんだったら多分ギリギリオッケーしてくれると思う。器の差がでるなあ。 絶対的な信頼 (後藤×女達海/ジャイアントキリング) ※前中後の中の後くらい。 美幸が生まれて三ヶ月。 性交渉を持ってもいい、と医者に言われた。 美幸が生まれるまでは、と後藤が言ったので今のところ二人は清い関係だ。 それをもどかしいと妊娠中は何度も思ったものだったが。 美幸が生まれてからはそれ所ではなくて、すっかり忘れていた。 そうか、後藤とセックスしてもいいのか。 そう思うと浮き足立つ気持ちを抑え切れなかった。 だって、後藤とのキスはとても気持ちがいいのだ。 触れるだけのキスも、深く舌を絡めるキスも、優しくて達海への愛が溢れんばかりに感じられる。 村越との快楽だけを求めてのキスとは違う。 暖かくて、胸が一杯になる。 後藤とのキスはそんなキスだった。 だからきっと後藤とのセックスはとても気持ちがいいのではないだろうか。 ただ、一つ気になるのは、出産後初めてのセックスは痛いことがあると雑誌で読んだ事だ。 肉体的なものだったり精神的なものだったりと原因は様々らしいが、達海自身には良くわからない。 初めて村越と寝た時は多少痛みを伴ったが、その時のような感じだろうか、と想像するしかない。 少なくとも達海としては精神的なものは無いだろうと自分で思っている。 だって、こんなに後藤としたいと思っているのだ。問題ないだろう。 肉体的な方も今日太鼓判を押されたことだし、問題ない。 育児疲れだって寧ろ後藤の方があるんじゃないかと思うくらいだ。というか実際そうだろう。 だったらやっぱり達海側に後藤とのセックスに問題があるとは思えない。 あとは後藤の気持ち次第だ。 達海はクラブハウスの扉を開けた。 *** ベタ「女体(男体)化する」と同時期ぐらいの感じで。 勇敢なるパートナーへ (後藤×達海/ジャイアントキリング) ※前中後の中の後くらいです。 後藤、お前凄いよ。 こんなオッサン捕まえてさ、好きとか言っちゃえるんだぜ。 こんな男のような女のような不明瞭な人間捕まえて、一緒にいようっていえるんだぜ。 俺と一緒に居ると面倒な事ばかりだって言ったけど、後藤はそれでも良いって言ってくれた。 俺には俺しかないけれど、後藤はそれが欲しいって言ってくれた。 だから俺は後藤に俺をあげるよ。 俺はフットボールバカだから、全部はやれないけれど。 フットボールを抜かした残りの部分は後藤にあげるよ。 俺には俺が残らないけれど、後藤が残るならそれでいいや。 俺はきっと、ずっと一人で生きていくんだと思っていた。 だから、この手に後藤が在る事がとても嬉しい。 後藤、ごとう。 俺、お前の事が好きだ。 アイシテルなんて言葉、俺には無関係だって思ってたけど、凄く好きって気持ちが愛ならば、これがきっと愛なんだろう。 俺がそんな風に思ってるなんて、言うつもりは無いけれど。 後藤、ありがとう。 *** 妊娠後期くらいの感じで。 君のためなら、たとえ (後藤×女達海/ジャイアントキリング) ※前中後の中の後くらいです。 「は?取材?」 うん、そう。達海は大きくなったお腹を撫でながら事も無げに頷いた。 「今日久しぶりに集会に出たらさーマスコミ関係者も来ててさ。ゼヒ密着取材させてくださいって」 集会、というのは達海のように性別が周期的に変わる人たちの集まりの事だ。 ほら、と差し出された名刺には某有名テレビ局の名前が印字されている。 「今色々と署名運動とかしてるらしくて、その旗印に担ぎ上げたいみたい」 彼らは未だ知名度が低く、隠して生活しているものが殆どだ。 その中には達海のように同性をパートナーとしたものも居れば、元の性別と異なる性別で子供を儲けたものも居る。 それらの問題を解消するべく様々な法案が持ち上がっているが、これがなかなか進まない。 そこで達海を担ぎ上げることで一般人への理解を求め、法案を通そうという心算なのだ。 「…達海はどうしたいんだ?」 「んー…俺はどっちでもいい。今更隠す様な事でもないし」 それに、と達海は時折感じる胎動に耳を澄ますように目を閉じる。 「法律とか詳しいことは俺にはわかんないけどさ、後藤と結婚できるようになるならそれもいいなあって思う」 後藤はどう思う?そう目を開ければ真摯な目をした後藤と目が合って。 「俺は、出来ればお前たちを晒し者にするような事はしたくない」 でも、と後藤は続ける。 「俺たちが協力することによって、他の同じ苦しみを抱えている人たちが少しでも楽になれるなら、それもいいと思う」 結果、それが自分達のためにもなるのだから悪い話ではないと思う。 そう言う後藤に、じゃあ決まりだな、と達海が笑う。 「引き受けるかどうかはともかくとして、とりあえず、詳しい話聞いてみようぜ」 *** 実際、引き受けたかどうかは知りません。(え) |