野獣五題
提供:リライト(甘利はるき)様
飼い慣らされない獣 (ジーノ×達海/ジャイアントキリング) 獣を一頭、飼っている。 毛並みの美しい獣だ。 少し痩せぎすな所があるが、それもまた良い。 寝そべっていても眼つきだけはぎらぎらとしていて、見ていて心地よい。 「いつまでこんなことをするつもりだジーノ」 獣が喋った。丸一日ぶりのまともな声だった。 喋っていなかった所為で少し掠れてしまった声もセクシーだ。 ジーノが満足げに頷いていると、彼は不機嫌そうに首を弄った。 そこには重厚で美しい首輪が彼を彩っていたが、彼はそれが不服らしい。 「ジーノ」 繰り返されるその音が自分の名だと思うと感慨深い。 ジーノはくすりと笑うと、冗談だよタッツミーとその首に手を掛けた。 「お前は冗談で人を監禁するのか」 首輪を外してやると、首がこっていたらしくクキクキと音を鳴らして彼は首を回した。 重厚な首輪は彼に良く映えるけど、健康面には良くないようだ。 「だってタッツミーがバッキーばかり構うから」 偶にはこちらを見て欲しいって思っただけさ。 「これで暫くは我慢が出来るよ。よかったね、タッツミー」 「お前そのわけわかんないキレ方やめてくれる?」 オフシーズンだからよかったものの。なんて。 ぶつぶつ言っている彼はもういつもどおりの彼だ。 獣なんかじゃない。達海猛という一人の人間だ。 (初めから獣なんかじゃなかったけれど) 獣だったのは、自分だ。 ジーノは首を擦る達海を眺めながら、ふと笑った。 *** 初ジーノ!ジーノわかんないお!!(涙) プライドと風格 (成田×達海/ジャイアントキリング) 一人でいると、たまに達海と自分の差について考えてしまうことがある。 達海には自分には無いスター性と言うか、風格みたいなものが備わっていて、それは成田だって嫌というほど自覚していた。 しかし今まで培ってきたポジションへのプライドから、それを認めたくない気持ちの方が大きくて。 そんな風に一人で苛々している時に限って達海が電話してきたりするものだから喧嘩腰に対応する事になって。 だけどそんな時は達海はすぐにマンションにやってくる。 そして出て行け、帰れと怒鳴る成田をそれでも抱きしめて、キスをして、セックスになだれ込む。 そんな時のセックスは無茶苦茶だ。 箍が外れたように達海を求める。 体中に歯を立て、腰を叩き付け、前をきつく握ってイかせない。 けれどそんな成田を達海は受け止める。 嵐が過ぎるのを待つことしか出来ない幼子のようにただ受け入れる。 全てが終わって、達海の背が折れそうなくらいきつく抱きしめて成田は目を閉じる。 きつく閉じていなければ、溢れてしまいそうな何かを堪えながら成田は達海を抱く。 達海もまた成田に縋るようにしてきつく抱きしめてくる。 それが心地よくて、漸く成田は自分を取り戻すのだった。 そうして身体を離すといつも後悔する。 自分のした仕打ちが達海の体にありありと残っていて、居た堪れなくなる。 そんな成田に達海はいいよ、と笑う。 成さんが楽になれるなら、それでいいよ。と。 俺だって、色々考えちゃうことあるし。 それで成さんに八つ当たりしたこともたくさんある。 だから、成さんが俺に当たるのは、間違いじゃない。 まるで成田が何に鬱屈していたのかを見透かしたような言葉に成田は己を恥じた。 それでもきっとまた、自分はこうして達海を抱くのだろう。 度し難い。 成田は震える声で彼の名を呼んだ。 *** 偶には明るいナリタツが書きたい。 雄々しき視線 (持田×達海/ジャイアントキリング) 持田の何処が好きだと聞かれたら、眼だと答えるだろう。 彼の傲慢なまでに自信に満ちた視線に晒されるだけで背筋がぞくぞくする。 その視線が自分にだけ伏せられ、屈するのだと思うともう堪らない。 それだけで下肢が反応してしまいそうになるというのに。 「あ、こら、モッチー」 脱がすな、と続くはずの言葉は意味を成さないことに気付いた達海自身によって止められた。 既に靴下を脱がされてしまった足首に持田の唇が落ちる。 王と呼ばれる男が跪き、自分の足にキスをしている。 これほどスキャンダラスな光景は無いだろう。 達海はこの足で蹴り上げてやったらどうなるだろうと思いながらもくすぐったさに目を細めた。 「…まだ痛む?」 傷痕の残るそこに何度も何度も口付けて。 労わるようなその口付けに達海は唇を歪ませて笑う。 「そっちはもうそんなに痛くないよ」 痛いのはコッチ、と反対側の足を差し出すと、のそりと持田が身を起こした。 かちゃかちゃと音を立てて腰のベルトを外され、ジ、と低い音と共にジッパーが下ろされた。 「達海さん、腰、上げて」 言われるがままに腰を持ち上げると、ずるりとズボンを脱がされる。 「すみません、気付かなくて」 膝をやんわりと撫でられて、背筋がぶるりと震えた。 「いいよ、楽しかったし」 震えそうになる声を叱咤して吐き出せば、それを知っているかのように持田が笑った。 「本当に?」 ちゅ、と音を立てて膝頭を吸われる。 「ほんとうに」 それだけの接触でも快楽中枢を呼び覚ますには十分だったらしく、ボクサーパンツの下で自身が震えたのが分かった。 「しても、大丈夫ですか?」 ちろりと舌先で膝頭を擽りながらお伺いを立ててくる持田に、達海も笑った。 「いいよ、おいで」 *** 長く歩かせすぎたらしいよ。 自由ゆえの輝き (松本×達海/ジャイアントキリング) 達海は自由を好む。 気紛れな猫のように、空を自由に羽ばたく鳥のように。 達海は縛られることを厭う。 松本はそんな達海が好きだった。 どうして、なんて事はわからない。 けれどあの笑った顔が可愛いと思ってしまった。 あの声がもっと聞きたいと思ってしまった。 理由なんて、どうだっていい。 松本は、そんな達海が、好きだった。 だが、突然の移籍は納得できなかった。 追いかけて、その腕を掴んで問い詰めた。 けれど返って来るのはピッチで聞いた言葉と同じものばかりで。 俺は。 俺は、それでもお前が。 そう言い掛けた松本の唇を達海の手がそっと塞いだ。 言わないで。松さん。 聞いちゃったら、哀しくなるから。 そして触れるだけの口付けを残して、達海は去った。去ってしまった。 くそ、とアスファルトを蹴ると、ざり、とスパイクが傷む音がした。 *** 初マツタツが暗く…こんなはずじゃ…(涙) 操縦不可能 (志村×達海/ジャイアントキリング) 今東京駅に居るんですけど。 そんな電話が掛かってきたのは朝も早くだった。 「は?東京?」 半分寝たままの頭でこの声誰だっけ、と思う。 しまった、電話に出る前に着信画面見るべきだった。 いやしかし寝てた状態でまともに出れただけ凄いと言いたい。 達海はそんな事を思いながら眠気に負けそうな眼をこしこしと擦って身を起こす。 何処へ行ったらいいですか。なんて聞いてくるもんだから。 「…好きなところへ行けばいいんじゃないかな」 と返したら微かな笑い声が聞こえた。 ――達海さん、今どこですか? 「今?クラブハウス」 ――クラブハウスに住んでるって、本当だったんですね。 そこまで会話して漸く達海は誰だか見当が付いた。 志村だ。大阪ガンナーズの。 「ていうか何でこんな時間に東京にいんの」 ――会いたくなったんで、始発で来ました。 そりゃいつでも会いにおいでって言ったけど。 ――今日、オフですよね。 「そうだけど、何で知ってんの」 ――そうだろうと思ったんで。 「…意味わかんない」 ――朝飯、一緒に食いませんか。 奢りますよ、の一言に眠気と食い気のバランスが揺らぐ。 どうせこんな時間から開いてる所なんて限られているけれど。 珍しいお客様と一緒に食べるのもいいかもしれない。 「いいよ。じゃあ浅草駅で待ってな。のんびり行くから」 すぐ行く、じゃないんですね、とまた笑い交じりの声がする。 「だって俺朝飯食わないと頭働かないもん」 それから二言、三言言葉を交わして電話を切った。 通話時間の表示されたディスプレイを見ながら、行動力あるなぁ、なんて思って。 「さーて、準備しますか」 達海は顔を洗うためにベッドを降りた。 *** シムさんてつかめないよね、キャラが…(言い訳にもなってない) |