理詰の美人五題

いつもの小言に目を瞑る
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

その日の達海は機嫌が良かった。
「全くもう達海さんってば!」
だから有里が小言を漏らしても目を瞑ってやろうと思っていた。
といっても小言を言わせているのは自分なのだが。
ともかく、多少の事なら頷いて終わらせるつもりだったのだ。
だけど。
…早く終わんないかな。
今日の有里の小言はちょっと長かった。
だから、達海は我慢するのを止めた。
「ねえ、有里」
「何よ達海さん」
「もういい?俺、腹減っちゃった」
じゃあね、と手を振って後藤の元へ行く。
「達海さん!」
「ごとー、行こ」
「いいのか?有里ちゃん怒ってるぞ」
しかし後藤自身いつもの事と思っている節があるのだろう、言葉以上で止めようとしていない。
「いーのいーの」
達海はさっさと後藤の背中を押してスタッフルームを出て行く。
「じゃ、お疲れ様〜」
ぱたん、と閉められた扉の向こうで有里が何か叫んでいるのが聞こえたが無視する事にした。
「さって、飯食いに行こうぜ。奢ってくれるんだろ?」



***
後藤さんと一緒にご飯を食べられる上に奢って貰える事になってたので上機嫌だったみたいです。





口じゃ勝てない、それならば
(黒田×達海/ジャイアントキリング)

達海は狡猾で口達者だ。
直情気質の黒田が最も苦手とするタイプだ。
なのに気付けば彼は自分の恋人という枠に収まっていて、今も黒田のマンションに転がり込んでいたりする。
彼はああ言えばこう言うの典型パターンで、黒田を何度も丸め込んできた。
黒田はそれが口惜しいのだが、しかし口では勝てないことは良くわかっている。
だからせめて。
「達海さん」
「なに、ん…」
不意を付いて口付けると、最初は目を丸くした達海もすぐに瞼を伏せて腕を首に絡めてくる。
「ん、ふ…」
歯列を割って舌先を滑り込ませて絡ませあうと、達海の喉が切なげに鳴った。
「…ふ…クロからしてくるのって珍しいな」
欲に潤んだ目でそう笑う達海に、たまにはな、と黒田はそっぽを向いた。



***
自分でやっておいて照れてる黒田に萌えるww





そんな所も嫌いじゃない
(後藤&達海/ジャイアントキリング)

※前中後村越編です。

練習が終わり、達海がスタッフルームへ行くとそこでは後藤が二歳になる猛人をあやしていた。
「お疲れ、達海」
「おかしゃ」
母親の姿に気付いた猛人が後藤の腕の中からするりと降りて達海の元へ、とてとてと駆け寄ってきた。
「悪いな、後藤。任せちまって」
「いいさ。俺が好きでしてることだ」
最近では保育園へ猛人を迎えに行くのは後藤の役目になっている。
それを村越は余り快く思っていないようだったが、実質的に助かっているので余り強くは言えないようだ。
「今度飯でも奢るよ」
達海がそう言うと、後藤は可笑しそうに笑った。
「お前が奢るなんて珍しいな」
「たまにはな」
感謝してるんだぜ、と達海も笑う。
「お前はいつも好きでしてることだからって言うけど、俺だったら無理だ」
他人の子を面倒見るなんて無理だ。
況してや後藤にだって仕事がある。
その合間を縫って迎えに行ったり相手をしたりなんて達海には考えられない。
「そう難しいことじゃないさ」
後藤は猛人に引っ張られて緩んだネクタイを直しながら言う。
「だってお前の子だ。可愛くないわけ無いだろ」
そう思えば無理なんてないよ。
すると達海はきょとんとし、やがて「ばかだな、後藤は」と微笑った。
「お前のそういう所、嫌いじゃないよ」
達海の言葉に、後藤は嬉しそうに微笑った。



***
凄く仲良しなゴトさんとタッツに旦那であるはずの村越はギリギリしてればいい。





無言の攻防戦
(??/ジャイアントキリング)

※前中後村越編です。


お前が言えよ。
いや、お前から言えよ。
健と繁は瓜二つの顔を見合わせながら無言の攻防を繰り広げていた。
二人は同じ部屋で、勉強机も並んでおり、ベッドは二段ベッド。
やる事成す事全てを共にしてきた身として、これ以上の攻防は無駄だと分かっていた。
けれどやらずにはいられない。
何故なら、二人の手には一枚の紙切れ。
そう、テストの答案用紙という紙切れが握られていた。
そこにはじき出されている点数は二人とも芳しくない。
というか、悪い。
ギリギリ追試を免れたものの、その程度の点数だ。
今日返されたそれをこれから親に見せなくてはならない。
見せない、という手も考えた。
しかし姉が同じ学校に通っている以上、今日が期末テストの答案用紙が戻ってくる日だという事はばれている。
こういう時、中等部と高等部が同じ日程というのは厄介だ。
そう、その姉だ。二人は忌々しげに顔を見合わせた。
姉はきっと四捨五入してしまえば百点の答案用紙ばかりを持ってもうすぐ帰ってくるだろう。
それより早く見せてしまわねば小言が多くなるだろうことは幼い頭でも容易に想像がつく。
しかしそのための第一歩が踏み出せない。
そうだ、誰が好きで叱られに行くもんか。
だが遅くなればなるだけ自体は悪化する。
だからお前から言えよ。
嫌だよお前が言えよ。
二人は視線だけで会話する。
一緒に行けばいいのだが、お互いがお互いの陰に隠れたがっているのでどうしようもない。
すると軽いノック音がして二人は飛び上がらんばかりに驚いた。
『しげーたけー入るぞー』
のんびりとした母親の声に二人はとっさに手にしていたテスト用紙を鞄の中に隠した。
「「な、なにお母さん」」
見事なユニゾンも今は動揺を表しているようで嬉しくない。
達海はそんな双子を見下ろし、にかーっと笑った。
「お前ら、早い内に楽になっとけ」
母親の言葉に二人はがっくりと肩を落とし、鞄の中から答案用紙を取り出した。



***
そして「守ってあげたい」へ続くわけですな。





塞いでしまえばいい
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

「ごとーごとー早く終わらせろよー」
パソコンを打つ後藤の背にしがみ付いた達海がぶーぶーと文句を言う。
ああもうさっきから煩いな。
集中できない、と後藤は一言言ってやろうと達海を振り返った。
途端、唇を塞がれた。幾ら二人きりとはいえここは事務室だというのに!
「たつ、」
み、の声は再び重ねられた唇に飲み込まれてしまう。
「…何のつもりだ」
「仕事する気ぶっ飛んだ?」
「ああ、見事に失せたよ。どうしてくれる」
すると達海はいつものにひーという笑いを浮かべて言った。
「じゃあさっさと帰ってイイコトしようぜ」



***
後藤の扱いはお手の物です。(笑)

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