あいうえお題
やっぱり気になる (??/ジャイアントキリング) ※前中後村越編その後です。 うちの保育園に、村越猛人君という男の子が居る。 凄く元気な子で、なのに乱暴な所は無くてとってもいい子だ。 だけど家庭環境はちょっと変わっている。 お母さんの達海猛さんが先天性転換型両性具有者で、基本は男性だというところ。だから籍は入れてないらしい。 達海さんは整った顔立ちをしているけれどどう見ても男性で、お父さんの村越さんも男らしい方だ。 他のお母さん方は最初こそ奇異の目で見ていたけれど、達海さんの人懐っこい性格からあっという間に人気者になった。 今では村越さん夫婦が原因でサッカーに目覚めたお母さん方も居るくらいだ。 そしてもう一人、彼らを語る上で外せない人がいる。 後藤さんだ。 後藤さんというのは、すらりとした高身長に優しげな顔をしたETUのマネージャーさんだ。 村越さんは現役選手で、達海さんは監督。 練習の時間帯によってはお迎えに来れない時がある。 そんな時、猛人君を迎えに来てくれるのが後藤さんだ。 猛人君は後藤さんにも懐いていて、お迎えがお父さんやお母さんじゃなくても泣いたりせず喜んで帰っていく。 それはきっと後藤さんの人柄によるものだろうと思うのだけれど。 猛人君から引き出した情報によると、後藤さんは村越家の結構なところまで入り込んでいるらしい。 なので村越夫婦と後藤さんの関係は私達保育士の中ではちょっとした話題だ。 たまに迎えに来る村越さんの反応からして、村越さんが後藤さんの事を余りよく思っていないのは察し済みだ。 きっと奥さんを取り合ってバトルがあったのよ、とか。 いいえ奥さんを思って最初から後藤さんが身を引いたのよ、とか。 まさか元々付き合っていた後藤さんと奥さんを旦那さんが略奪愛したんじゃ、とか。 話は尽きない。 そして今日もまた。 「あ!今日は達海さんが来たわよ!」 「え!本当!?私今日髪ぼさぼさなのに!」 聞こえてきたお母さん方の声に、私達もひょっこりと教室から顔を出した。 *** 保育園でも話題独占のタッツでした。 夢のランジェリー (達海/ジャイアントキリング) ※前中後の中の後です。 その日、トレーニングルームに居たのは世良、赤崎、椿、石神、丹波、堺の六人だった。 「お、丁度良い人数だね。お前らちょっと集合」 ひょっこり顔を出した達海にちょいちょい、と手招きされ、一同はぞろぞろと集まってくる。 「コレ見て」 差し出されたのは雑誌の見開き。 綺麗なお姉さんが下着姿でポーズを取っている。 何のエロ本だ、と思ったものの良く見るとそれは下着の通販ページだった。 「有里がさ、せめて一週間分の下着は持っておけって言うんだけど、どれ買えばいいのかわかんない」 お前らで選んでよ、と言う達海に世良が「えー!」と声を上げた。 「俺らが選ぶんすか!」 「うん、一人一個選んで…って椿、何赤くなってんの」 「い、いえ!あの、こういうのはやっぱり有里さんと選んだ方が…」 待て椿。丹波と石神ががしっと椿の肩を押し留めてひそひそと耳打ちする。 「俺らが選んだ下着を監督が着けるんだぞ。そんなの滅多に無いチャンスだろ!」 「そうそう、素直に乗っかっとけって」 「…何ひそひそやってんの?」 訝しげな達海の声に三人はいえいえ、と首を振る。 「えーと、俺はこの赤黒とか良いと思いますけど」 丹波が気を逸らすようにそう一点を指差すと、待て、と堺が止めた。 「監督、濃い色は透ける可能性がありますけど、その辺どうするんすか」 しかし達海はその辺はどうでもいいらしく、「好きにしていいよ」と笑った。 「よっしゃ!じゃあ俺この黒ピンク!」 「俺このピンクに赤の模様のヤツが良いッス」 「じゃあ俺はこれで」 「黒に黄色ってお前ムッツリだな赤崎!」 「何でですか!黒ピンク選んでるガミさんに言われたくないですよ」 「堺さんどれにするッスか?」 ピンクに赤模様を選んだ世良が問うと、堺は「無難にコレだろ」と白地にピンクを選んだ。 「王道だな堺!で、椿はどうするんだよ」 石神の問いかけに椿は真っ赤になりながら一点を指差した。 「お!白に黒リボンか!清楚派だな椿は!」 「すみません…」 丹波のからかいに消え入りそうな声で謝る椿。 達海はけらけらと笑いながらそれぞれ言われた柄に丸をつけていった。 「よっし、これで一週間分あるな」 「え、あと一枚は良いんすか?」 「いいよ。あと一枚は今着けてるから」 世良の言葉にほら、とシャツの襟を伸ばして見せてくる達海の手を堺が止めた。 「監督、もう少し恥じらいを持ってください」 「えーいいじゃんー」 「よくないッス」 堺に説教される達海を尻目に、丹波と石神が視線を交わす。 見えたか? 見えた。水色。 その隣では椿が真っ赤になりすぎて今にも倒れそうになっていた。 *** こうして達海の下着は用意されていくのでした。ネタ提供ありがとうございます!! 漸く、言えた (後藤×達海/ジャイアントキリング) ※前中後村越編です。でもゴトタツ。 「なあ、もう言っちゃえよ」 達海の言葉に後藤は苦笑する。 「…言えないさ。お前は村越を選んだんだろう?」 「うん。だからこそ言っちまえよ。スッキリするぜ?」 「そうだなあ…」 後藤は曖昧な笑みを浮かべて俯く。 やがて顔を上げ、なあ、達海。と達海を見つめた。 「うん」 「…お前の事が好きだ」 「うん」 「愛してる」 「うん…知ってた」 でもごめんな。達海もまた後藤を見つめて言う。 「俺、村越が好きなんだ」 「…知ってる」 そこまで言って、後藤は深い溜息を吐いた。 「振られる為に告白するって結構きついぞ?」 「でもずっと言わないよりスッキリするだろ?」 きしし、と笑う達海に後藤もまた微かに笑みを浮かべる。 「まあ、一つの区切りにはなったよ」 そう言う後藤に、俺はさぁ後藤、と達海が続ける。 「お前の気持ちには応えられないけど、親友としてのお前を手放すつもりは無いよ」 「…酷いな」 「そう。お前が惚れたのはそんな酷い男なの」 残念でした。これからもオトモダチでいてね。達海が笑う。 ああ、何て傲慢で愛しいのだろう。後藤は達海の笑顔を眩しそうに見る。 「なあ、達海」 「なに」 「一度だけ、抱きしめていいか」 「…うん」 後藤が立ち上がり、達海も立ち上がる。 歩み寄ってきた後藤がそっと達海の身体を包み込み、やがてきつく抱きしめた。 「…達海」 「…うん」 あ、後藤の匂いだ。達海はその腕の中で目を閉じる。 「…愛してる…」 「うん…ごめんな…」 やがて離れていく温もりに、もういいのか?と問えば後藤はもういいよ、と微笑った。 「これ以上は、村越に怒られる」 「あいつ、心せっまいからなぁ」 くすりとどちらからともなく笑い合って二人は離れた。 *** これで村越が必死になって盗み聞きしてたら笑えるww |