雰囲気的な10の御題:在
01.安心の温度 (後藤×達海/ジャイアントキリング) 「ごとーぅ」 ぺたりと後藤の背中に張り付くと柔らかな声が響く。 「どうした、達海」 お前が甘えてくるなんて珍しいな、なんて微笑いながら前に回した達海の掌を包み込む。 んー、と鼻に掛かった声を漏らして達海はもう一度ぎゅっと後藤を後ろから抱きしめた。 「後藤って癒し系だよな」 「は?」 「俺、後藤といると体の力抜けるもん」 頬を後藤の広い背中に押し付けて達海は言う。 「今日疲れたーって思ってても後藤の傍にいるとそんなの忘れるし…うわっ」 ぐりぐりと顔をこすり付けていたらぐいっと腕を引かれて体勢を崩した。 「…嬉しいこと言ってくれるじゃないか」 ぽて、と後藤の膝の上に仰向けに寝そべった達海はにひーと笑う。 「何が狙いだ?達海」 照れ隠しなのだろう、困ったように笑う後藤に達海は楽しげにちゅっと投げキッスを贈る。 「愛してるぜ、ゴトー」 *** 投げキッスをする達海さんが書きたかっただけ。(爆) 02.音のない夢 (村越×達海/ジャイアントキリング) これが夢であると直ぐに気づいた。 目の前で達海が何か喋っていたが、その声が全く聴こえなかったからだ。 ここは自宅の寝室で、ベッドの中で、隣には一糸纏わぬ姿の達海が居て。 最近漸く見慣れてきた光景ではあったが、それでも未だに村越は分からないでいる。 何故自分なのか。 彼にアプローチをかけていた人間など、自分が知るだけで片手では済まない数だ。 我こそはと誰もが名乗りをあげる中で、ただ見ている事しかできなかった自分を何故選んだのだろう。 ぺちり、と額を叩かれてはっと我に返る。 目の前の達海が不機嫌そうに何かを言っている。 恐らく考え事をしていた自分に対する文句だろう。 なあ、達海さん。 そう問いかけたが自分の声も音にならない。 しかし達海には聴こえたようで、何だよ?と言う様に首を傾げてくる。 どうして俺なんだ。 音にならない問いかけに、達海は一瞬眼を大きく見開き、そして、 「おい、村越」 べちん、と先程よりも強く叩かれて村越の意識は一気に覚醒した。 「たつみ、さん?」 視界一杯に先ほどと同じ様に不機嫌そうな顔をした達海がいる。 「お前、うるさいよさっきから。変な夢でも見たんだろ」 夢。 そう言われて漸く理解する。 夢は醒め、現実に戻ってきたのだと。 「…何か、言っていたか」 「…ただ唸ってただけ」 「そうか…」 夢の中の達海はなんと答えただろう。 きっと音の無いあの世界ではその答えすら村越には届かない。 ならば。 「なあ、達海さん」 「何だよ?」 ああ、何という既視感。 「どうして俺なんだ」 *** あえてここで終了。 03.背中合わせの幸福 (羽田×達海/ジャイアントキリング) 達海が何故羽田を選んだのかなんて、羽田の知ったことではなかった。 羽田は達海の囁く愛の言葉なんて信じやしない。信じれるわけが無い。 重要なのは今現在の事実だけ。 達海猛という存在が自分の傍らに在る事。 メールをすればきちんと返事が返ってくること。 電話をすれば直ぐに出てくれること。 来いよ、と誘えばふらふらと寄って来ること。 時折、腕の中で甘えてくること。 その事実が何よりも重要だ。 それ以外にこの男に対して信じられるものなど何も無い。 「だったらさ」 羽田の背に持たれかかった達海が言う。 「俺が羽田を好きって言ったら、三秒くらいは信じてよ」 そのたった三秒がどれだけ命取りになるかなんて。 アンタにはきっと、わからない。 *** ちょっとデレ期に入ってきた羽田さん。 04.風の便りが (後藤×達海/ジャイアントキリング) 何気なくリビングを見回してふと一点に眼が留まった。 「あれ」 てこてことそれに近付いてよく見てみる。 サイドテーブルの上に置かれた一つの写真立て。 そこに映っているのは、イングランドの片田舎だ。 達海はそれに嫌というほど見覚えがあった。 「…これ、俺が送ったハガキじゃんか」 とっくに捨ててしまっていると思っていたそれが、今こうして後藤の部屋を彩っている。 ぱたりとそれを伏せて起き、達海は溜息を吐いた。 「…恥ずかしいヤツ」 その頬が朱に染まっていたことは、誰も知らない。 *** 後藤はあの葉書は大切に保管してると思います。 05.微笑む君は (後藤×達海/ジャイアントキリング) 後藤は達海の微笑む姿が好きではない。 再会してからというもの、達海が微笑むたびに何故か胸が締め付けられた。 昔はそんなことなかったのにな、と思いながら後藤は足を進める。 「椿が最近調子良いんだよな」 行きつけの定食屋で飯を済ませた二人はクラブハウスまでのんびりと歩いていた。 達海が余り嬉しくなさそうに言う。 「あのまま行けばいいんだけどなー」 溜息をついて達海が微笑む。 またふと胸が締め付けられる気がした。 「でも続かないだろうなー」 達海は仕方ないなあと言うように笑う。 ふと昔の達海と姿が重なった。 ああ、そうだ。あの時だ。 十年前、あの空港で一人駆けつけた後藤に達海は微笑っていた。 いつもの人を食ったような笑みでも無く、ただ穏やかに微笑んでいた。 じゃあな、後藤。 そう言って彼はゲートの向こうに姿を消した。 ああそうか、そういうことだったのか。 後藤は一人納得する。 後藤は達海の微笑みが好きではない。 後藤にとって、それは別れを意味するものだったからだ。 「ん?どした、ゴトー」 だけど、もう良いのだ。 「…いや、何でもない」 達海は帰ってきた。 だからもう、良いのだ。 *** タッツのニヒー笑いが好きです。 |