雰囲気的な10の御題:在

06.夜の気配
(村越×達海/ジャイアントキリング)

達海はふと真夜中に眼が覚めた。
目は開けたもののどこか未だ寝ているようでぼんやりする。
自分の部屋のパイプベッドとは程遠い柔らかなシーツの感触にここどこだっけ、と思う。
そして直ぐにああ、村越の部屋だ、と思い出して納得する。
そっと頭だけ持ち上げてベッドサイドの時計を見ると午前三時。
おかしな時間に目が醒めたものだと思う。
ぽすんと頭を下ろすと、その衝撃で村越が目を覚ましてしまった。
「悪い、起こした」
「…どうした」
「ん、変な時間に目が覚めただけ。寝な」
覚醒しきっていない村越の瞼に軽く口付けを落とし、達海はベッドを抜け出そうとした。
しかし腕を引かれて元いた場所に戻されてしまう。
「こら」
「何処へ行く」
「リビング。何か目ぇ醒めちまったからDVDの続きでも観てくる」
あ、お前は寝てろよ。監督命令。
そう続けてもう一度ベッドを抜け出そうとするが、再び腕を引かれて戻されてしまった。
「おい」
「行くな」
「何で」
「寒いだろう」
「俺は湯たんぽか」
同じ様なもんだ、とシーツの中に引き戻されてしまっては仕方ない。
たまには甘えさせてやるか。
達海は溜息を一つ吐いて湯たんぽに徹することにした。



***
コシさんもデレ期。





07.足音ふたつ
(持田×達海/ジャイアントキリング)

ぺたぺたと足音が聞こえる。
持田が歩けば歩いただけその足音はついてくる。
どこまで着いてくるのだろうと意味も無く歩き回ってみる。
ぺたぺたぺた。ぺたぺたぺた。
ついてくる。どこまでも。
いい加減鬱陶しくなって背後を振り返るとそこには足があった。
右足と左足が並んでいる。
膝から上は無かった。
なんだ、そういうことか。
一人で勝手に納得して持田はまた歩き始める。
ぺたぺたぺた。
相変わらず後をついてくる音はしていたが、持田は振り返らず先に進む。
ぺたぺたぺ、
不意に背後の足音が途切れる。けれど持田は立ち止まらない。
俺のパートナーはもうお前じゃない。
かつん。
不意に響いた足音に今度こそ持田は立ち止まった。
目の前に現れたのは、持田が待ち望んでいた人物。
「達海さん」
「捨ててきたのか」
「勝手に消えました」
貴方を前にすれば、未練など消えてしまうのだ。


***
普通のモチタツが書きたい。(爆)




08.ここにいるよ。
(椿×達海/ジャイアントキリング)

監督の姿が見当たらない。
着替え終わったらすぐに来いって言われているのにその姿が見当たらない。
みんなに聞いて、コーチにも聞いて、後藤GMにも聞いたけど見つからない。
はあ、と溜息をついてとぼとぼと廊下を歩いていると、椿、と呼ぶ声が聞こえた。
「監督!?」
探していた声に振り返ると、そこには倉庫から首だけひょっこり出した達海の姿があった。
ちょいちょい、と手招きされるがままに駆け寄ると「ちょっと手伝え」と引っ張り込まれた。
「ほい」
手渡されたのは小さめのダンボール。
その中にはDVDが綺麗に並べられて詰まっていた。
「それ俺の部屋に持っていって」
「は、はあ」
言われるがままに廊下に出ると達海もまた数枚のDVDを手に倉庫を出た。
どうやら荷物持ちが欲しかったようである。
達海の部屋は相変わらず雑然としていて、おまけにDVDだらけで迂闊に歩けない。
「監督、これ何処におけば良いですか?」
「あーその辺に置いておいて」
その辺、と言われて戸惑いながらも比較的開いたスペースに何とかそれを置いた。
その間にも達海は早速と言わんばかりにディスクをデッキにセットしている。
「あの、じゃあ俺これで…」
立ち去ろうとした椿を達海が呼び止める。
「椿」
「はい?」
振り返った目の前に達海の顔があって。
「お駄賃」
ちゅっと軽い音がして暫く。
「かっ監督!」
椿はキスされたのだと気付いた。



***
椿可愛いよ椿。(でも攻)







09.咲かないつぼみ
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

ずっと胸の内で燻っている言葉がある。
十年前から、いや、もっと昔から…そう、お前と出会った頃からずっと。
だけどその言葉は決して言ってはならない言葉だ。
「お前も俺を抱きたいって思う?」
そう探るように見上げてくる視線を受け止めて微笑む。
そう、言ってはいけない。
「まさか」
言えるはずも無いのだ。
「だよな。後藤は違うもんな」
嬉しそうに笑うお前。
無邪気に、無神経に。
その笑顔は俺を傷つける。
けれど抗えるはずも無い。
「だから俺、後藤だけは信じてるんだ」
こんなに無防備に、無遠慮に信頼されて、突き放せるものか。
お前への想いは咲くことも枯れる事も出来ないまま。
永遠に蕾のまま、この心に在り続けるのだ。



***
煮つまりゴトさん。



10.交差点にて
(持田×達海/ジャイアントキリング)

交差点で信号待ちをしていると、ふいに密やかな声が聞こえてきた。
「ねえ、あれってサッカーの持田じゃない?」
「えーマジで?」
はいはい、本人ですよ。
そして聴こえてますお嬢さん方。人の事呼び捨てにしないでくれるかな。
お嬢さん方の囁きを聞いた人たちがちらちらとこちらを見てくる。
ああ鬱陶しいなあ。
何のためにグラサンしてると思ってんだよ。
プライベートなの、今。わかる?
声かけてきたら容赦しないからね?
あ、青になった。
さっさと行こう。
達海さんに癒してもらおうっと。


***
持田は心の中では余りファンを大切にしないタイプだと思う。

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