あいうえお題

ないものねだり
(村越&ジーノ/ジャイアントキリング)

※前中後のその後です。


お前も幸せになれよ。
そう告げて去っていく達海の背を呆然と見送っていた村越の背に突然声が掛かった。
「いいの?」
はっとして村越が振り返ると、そこにはジーノが無表情で立っている。
「タッツミーを追いかけなくて」
「……今更何が出来る」
あの子は達海と後藤の子として今まで生きてきたし、これからもそれが変わる事は無いだろう。
それを村越が壊していいはずが無い。
「でもあの子、殆ど毎日クラブハウスに来るんだよ?コッシーは平気なの」
「平気なわけあるか」
村越は苦々しげに吐き捨てる。
ただクラブハウスにやってくるだけというなら無視していれば問題ない。けれど。
「そうなんだよね。何故かコッシーに懐いちゃってるんだよね、あの子」
ホント不思議。ジーノは指先を整った顎に当てながら小首を傾げる。
「セリーやタンビーと話してる最中でも君を見つけたら絶対君に突進していくものね」
でもこれでよく分かったよ。ジーノは笑う。
「やっぱり君たちは親子なんだね。お姫様は君によく似ているよ」
「は」
ぽかんと口を開けた村越にジーノは似てるよ、と繰り返して言った。
「……じゃあね。僕は先に帰るよ」
「ま、待て、ジーノ!」
「なあに」
振り返ったジーノの表情はそれを予測していたといわんばかりで少し悔しい。
「その……本当に、似ているのか」
「……ウチにあの子の写真、あるけど見に来る?」
「あ、ああ……」
村越はどこか躊躇いを残したまま、しかし好奇心に勝てぬままジーノの後に続いた。


「…ってこりゃアルバムだろ」
てっきり数枚の写真が出てくるものだと思っていたら、どんと目の前に置かれたアルバムに村越は目を丸くした。
「そうだけど。タッツミーが就任した頃のからあるよ」
それがなにか、と言わんばかりの視線に村越はそれ以上の詮索をやめた。
「ほら、この辺りから姫の写真だから」
好きに見てよ、と渡されたそれを捲っていく。
生まれてすぐの頃、小さな身体で這っている姿、掴まり立ちをしている姿。
「……ちょっと待て、どうしてお前がこんなに写真を持っている」
どう考えても私的な写真まで混じっているそれに疑問の声を上げるとジーノはふふ、と意味ありげな笑みを浮かべた。
「そんな事より、ほら、これ」
似てるでしょう?と指差されたのは、最近のものだろう、深刻そうな顔をした美幸だった。
「笑ってるとタッツミーなのに、深刻そうな顔をすると君に似てるの。わかる?」
そう言われても自分に似ているかどうかなんて良くわからない。
しかしその写真だけはどこか達海の面差しに違う何かが交ざっているようで妙な気分だった。
「これはね、タッツミーにおやつは一つって言われて悩んでる所」
そんな事か、と思うが子供にとっては重要な事なのだろう、写真の中の眼差しは真剣だ。
これが、俺の子供。俺と、達海さんの。
それと同時に、達海と後藤の子でもある。
「……」
真剣な眼差しの美幸が写された美幸の隣には彼ら三人が幸せそうに歩いている姿が写っていて。
「……コーヒーでも淹れてくるよ」
そっとジーノが席を外したのも気づかないまま。
村越はじっとその写真を眺め続けていた。



***
写真は有里ちゃんかGMに言えばもらえます。(笑)ネタ提供ありがとうございました!





にたものどうし
(??&女達海/ジャイアントキリング)

※前中後村越編その後です。


学校から帰ってくると、玄関では母親が待ち構えていた。
「お母さん!」
「幸乃、おかえりー。充電充電」
ぎゅっと抱きしめられ、幸乃は三日ぶりだなあと思いながら母親の身体を抱き返す。
「お母さんもおかえりなさい」
抱き返してみて相変わらず細い達海の身体に幸乃は眉を顰める。
やだ、またちょっと痩せてるんじゃないの?
碌に食事も摂っていなかったのだろう、クラブハウスに篭った後はいつもこうだ。
「今日はこっちなの?」
「うん。あーやっぱ女の子はいいよなー」
幸乃いい匂いがする、と言われて幸乃はもうお母さんてば、と身を離した。
「あっちにずっといると右見ても左見ても男ばっかでさー。華が無いよね、華が」
「有里さんがいるじゃない」
「あれは女のうちに入りません」
またそんな事を言って。有里に聞かれたら怒鳴られそうだ。
そんな事を言いながらも母が彼女を気に入っている事を知っているので幸乃は苦笑するに留めた。
「しげとたけはフットボール?猛人は?」
「そう。猛人兄は大学の友達とご飯食べに行くから今日は晩御飯いらないって」
「大学ねえ。まさかアイツが医大に行くなんてなあ。今でも信じらんないや。誰の影響かね」
「それより、ねえ、お父さんはどうしたの」
いつもなら一緒に帰ってくるはずの父親がいない。と母親を見ると、途端母親はむすっとして横を向いてしまった。
「……また喧嘩したのね」
「俺悪くないもん」
どうせ些細な事で口げんかになり、父親を置いて後藤に送ってきてもらったのだろう。いつものパターンだ。幸乃も心配はしていない。
「はいはい、じゃあ今日は私がご飯作るから、お母さんはゆっくりしてて」
母親と比べれば幸乃が作れる料理など限られている。
しかし、それでも目の下に濃い隈を作っている母親に夕食の用意をさせる気にはなれなかった。
「ほんとに?あんがとー」
じゃあ待ってる、とにかっと笑ってリビングへと向かう母親を見送って幸乃はよし、と気合を入れた。
幸乃は母に食事を作ってやるのが結構好きだったりする。
どんなに失敗しても何だかんだ言いつつ母は美味そうに食べてくれるからだ。
おいしかったからまた作ってよ。
そういわれて張り切ってしまったのは小学何年生の頃だっただろう。
自室で制服から着替えてキッチンへ向かう途中、リビングのソファを覗いてあらら、と思った。
たった数分の間に達海はソファの上で寝息を立てていた。
風邪をひいてはいけないとブランケットをかけてやると、達海はうにうにと唇を動かして何か呟いていた。
そんな仕草に可愛いなあと思いながら、もう少し自分の身体を労わってよね、とも思う。
試合前はクラブハウスにこもりっぱなしで、食事はコンビニ菓子で済ませて徹夜なんて当たり前。
その内身体を壊してしまうのではないか、といつもヒヤヒヤとしている。
恐らく今回の父親との口論もその辺にあるのだろう。いつもの事ではあるが。
「「たっだいまー!」」
すると玄関から元気なユニゾンが聞こえてまずい、と幸乃は慌てて玄関へと向かった。
「あれ、お母さんの靴がある!」
「ほんとだ!」
「二人とも、静かにっ」
しーっとぴんと立てた指を口元に当てると、双子はきょとんとして同じ方向に首を傾げた。
「お母さん、疲れて寝てるの。だから静かにね」
漸く得心がいった二人は小さな声ではーいと囁いてリビングへと向かおうとする。
「こらっ、そんな泥だらけでお母さんに近付いたらダメよ。手を洗って着替えてきなさい」
「「はあい」」
ぱたぱたと軽い足音を立てて自室へと向かう二人を見送って幸乃は再びキッチンへと戻る。
そうして夕食の準備を進めていると、リビングに戻ってきた双子が眠っている達海の腕をぎゅっと抱いているのが見えた。
「充電ー」
「あ、今日はお母さんだ」
健が上機嫌で腕を抱いている隣で繁が無遠慮に達海の膨らんだ胸をぽむぽむと触っている。
一瞬怒ろうかと思ったが、耐性が出来ているのか全く起きる素振りのない母親に幸乃は放置することを選んだ。
するとまた玄関が開閉される音がして、幸乃は鍋を掻き混ぜる手を止めた。
弱火にしてキッチンから顔を出すと、父親がどこかばつの悪そうな顔でやってきた。
「おかえりなさい。お母さんなら寝てるわよ」
「…だろうな」
「「あ、お父さんだ!」」
飛びついてくる双子を抱きとめて、村越は溜息を吐いた。



***
村越はちゃんと毎日帰ってます。ネタ提供ありがとうございました!





抜かせぬ想い
(後藤&達海/ジャイアントキリング)

※前中後村越編その後です。


ねえ、僕がお母さんと同じ体質だったらお嫁さんにしてくれた?
幼い子供の声で、けれど大人びた表情をして見上げてくる猛人に、後藤はごめんな、と言うしかなかった。
まだ、お母さんの事が好き?
お前の事も好きだよ、と答えようとしてそれは猛人が欲しがっている答えではないと悟った後藤は正直に答えた。
ああ、今でも愛してる。きっと、死ぬまで愛し続けるだろうな。
だろうね、と猛人は涙が零れそうな顔で笑って後藤のマンションを飛び出していった。
「で、部屋から出てこないんだけどウチの長男」
代わって後藤の元にやってきた達海の怒気を孕んだ声に後藤はすまない、と肩身狭そうに謝った。
「大体お前はやりすぎなんだよ。未だに一つのベッドで寝やがって。あいつもう中学生だぜ、中学生」
「そ、それは小さい頃からの習慣で…」
「習慣で、じゃない。べたべたに甘やかしやがって」
「すまん」
「俺はね、こういう環境だから男同士に反対はしないよ。だけどお前はダメなの」
「なんだ、嫉妬してくれるのか達海」
途端やに下がった笑みを浮かべた男に達海は本気で拳を握り締めた。
「あ、そう、殴られたいと」
ごめんなさい。後藤は素直に頭を下げた。
「あのね、アイツとお前、どんだけ年の差があると思ってんの」
「……四十」
「さすがにそれは無い。それは無いよ後藤」
首を振る達海に、分かってるさと後藤は苦笑する。
「俺だって一緒に子育てしたんだ。わが子同然のあの子と俺がどうこうなんて事はありえないよ」
「当たり前だ。分かってんなら自重しやがれ」
「ああ、そうするよ」
そこまで話すとふと二人の間に沈黙が下りた。
もう多少の沈黙くらいでは気まずい気分になったりするような関係ではなかったが。
しかし今日ばかりは後藤はどこか落ち着かない気分で達海を窺った。
すると何か考え込んでいる風な達海があのさ、と口を開いた。
「お前、本当にずっと俺の傍にいるつもりなのか」
「……いるさ。お前が嫌じゃなければな」
村越は嫌がるだろうけれど、と思ったがそれは口にしないでおいた。
「……そっか」
その声音がどこかほっとしているような気がしたのは、後藤の思い込みかもしれない。
けれど。
「俺は永遠に、お前の親友だよ」
その言葉に微笑った達海の笑顔は、一生忘れないだろうと後藤は思った。



***
私の中で猛人の激烈後藤コンプレックスは中学を境に徐々に治まって来ているのでこうなりました。ネタ提供ありがとうございました!





ねだる姿が見たくて
(後藤×女達海/ジャイアントキリング)

※前中後の中の後です。


「あ、あ……」
ず、と熱いそれが確かな質量をもって入ってくる感覚に達海の身体はぴくぴくと震えた。
「んっ……」
ひたりと肌の触れ合う感触に、根元まで収められたのだと知る。
「……大丈夫か、達海」
後藤の気遣う声に大丈夫と返してほんの少し笑えば、後藤はすごいな、と囁くように言った。
「お前のここ、一杯に広がって俺のが入ってる……」
「ば、かなこと言ってないで動けよっ…ぁっ……」
後藤の指が繋がった所をぬるりと撫でたものだから達海はきゅっと眉を顰めて快感をやり過ごした。
「そんなの、あかんぼだって出てきたんだぜ、そこ…ゃ、あっ……」
「ほんと、凄いよな」
「あっ、あ、ごと……!」
時折思い出したかのように緩く突き上げられ、達海は下肢に集まる熱にもじもじと腰を揺らめかせた。
「なんだ、達海」
「なんだ、じゃねえよ、てめえだってガチガチにしてるくせに……!」
下から睨みあげると、ああ、そうだなと後藤も口調のわりに余裕の無さげな表情で達海の頬に唇を寄せた。
「お前のここ、ただでさえキツイのに、時々きゅってなってやばいよ…ああほら、また……」
「や…言うな、ばか……」
「……どうしてほしい?」
「……言わせるなよ、ばか」
さっきからバカばっかりだな、と後藤は小さく笑ってゆっくりと腰を動かし始めた。
「あ、あっ、ごとう……!」
漸く与えられた快楽に、達海は甘い声を漏らしながら後藤の背に腕を回した。



***
11/22はいい夫婦の日ということで。しかしこれも22日にうpするわけでもないww





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(持田×女達海/ジャイアントキリング)

※「好きを免罪符にして」続編です。


「ねえ猛さん、今日はゴムなしでもいい?」
濡れそぼったそこににゅくにゅくと指を出し入れしながらの問いに、達海はバカ言うな、と切れ切れの声で反論した。
「ゴムは絶対着けろって何度言わせ、あ、あっ…!」
「大丈夫だって、デキたらデキたでその時だって」
にゅくりと音を立てて指を抜き、そこに猛った自身を押し当てる。勿論スキンは着けていない。
「あ、こら、やめ、あ、ああっ」
「あーやっぱきもちいー猛さんの中ちょうきもちいー」
「ばか、抜け、こら!」
最奥まで一気に押し込んで持田は達海の身体を抱きしめた。ぽかぽかと背中を叩かれたが無視する事にする。
抵抗されないように抱きしめたまま腰を動かすと、達海の口からは抗議の声とあえぎ声が交互に漏れた。
「あ、やだって、いって、んっ、ああっ、くたばれっ」
「ちょっと猛さん、それ酷い」
「酷いのはどっち、あっ」
だんだん早くなっていく律動にやがて達海の口からはあえかな声のみが漏れるようになる。
「猛さんっ……!」
強くなる締め付けに耐え切れず精を吐き出すと、達海の中はそれらを逃がさないと言わんばかりにひくひくと収縮した。
「……っは、はあ…中出しまでしやがって……」
ぎろりと睨みあげられて、けれど持田はいいじゃん、と笑ってその眼光を跳ね除けた。
「三人目も俺、女の子がいいなあ」
最低だお前、と頬を抓られて持田は幸せそうに笑った。



***
最低は誉め言葉じゃありませんよ持田さん!

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