あいうえお題
はい、ありえないから (三雲×達海←持田/ジャイアントキリング) 珍しく達海が近くまで来たというから迎えに行ったらそこには何故か持田までいた。 やばい。 咄嗟に踵を返そうとした三雲を達海は目敏く見つけて手を振ってくる。どうしよう、これでは逃げられない。 ちらりと持田を窺うと、とてもとても不機嫌そうだ。やばい、本気でやばい。 三雲は無意識に背筋を正し、視線だけを動かして持田の傍らの達海を見る。 しかし達海は相変わらずの飄々とした態度で緊迫感の欠片も見られない。 「お疲れ、三雲」 突然呼び出してゴメンな、と手をぐっぱする姿は傍らの不機嫌の塊など見えていないかのようだ。 「い、いえ……」 「……で、なんで三雲が来るんですか」 「うん、あのさ、持田。俺、三雲とお付き合いしてるんだよね」 ギャー!三雲は思わずそう叫びそうになった。何て事を言ってくれるのだこの人は。 確かに、確かに事実だけれど、どういう数奇な運命に導かれてか自分と達海は付き合っているのだけれど。 それをここで、というか持田に言うとは死にたいのだろうかこの人は。否、殺されるのは三雲だけだ。 「だから持田とは付き合えないわけ」 悪いね、と全然悪びれず言い切る達海に持田は目を細めて達海と三雲を見比べている。 「……ふうん……」 もうお終いだ、と三雲は覚悟を決めた。 だが、持田は意外な事を言った。 「いいんじゃない?達海さんが三雲の事好きならそれで」 は?三雲は思わず目を見張った。この人は今何と言った。 あれ程達海に執心していた男が、三雲と達海の付き合いを認める発言をした、と? 「え、持田さ……」 しかし持田はそれだけで終わる男ではなかった。 「でもさ、達海さんって俺の事も好きだよね」 すると達海はんー?を腕を組んで首を傾げて考え出した。え、ちょっと。 「まあ、好きか嫌いかって言われれば好きだけど?」 「じゃあ俺が付け入る隙、あるってことじゃん」 「お前ね、その自信どこからくんの。あと瞳孔開いてるから。怖いから」 「そういうわけで三雲」 持田独特のあの笑顔を向けられ、三雲はびくりとして硬直する。 「奪わせてもらうから」 「は、ははは……」 達海の視線を感じながらも、三雲はただ引き攣った笑いを浮かべるしか出来なかった。 *** 情けないミックが大好きです。(笑) 卑怯な人 (三雲×達海/ジャイアントキリング) 俺ね、可愛いものが好きなの。 そう言って達海は三雲にアプローチを仕掛けてきた。 最初それを言われたときは何のことかと思った。 だが、どうやらそれが三雲自身を指しているのだと知った時にはまさか、と思った。 自分の容姿が人並みだという事は自覚しているし、当然可愛さなんてものは無い。 けれど達海は三雲を可愛いと言う。 確かに彼からすれば三雲はまだまだ若造だ。きっとそういう意味なのだろうと三雲は思った。 けれどそんな風に言われる謂れは無い。 からかわないで下さい、と何度跳ね除けたことだろう。 けれどそうすればする程達海は嬉しそうに笑って言うのだ。 三雲は可愛いね。と。 そう何度も何度も言われているうちにどうしてか面映い気持ちになってきて。 次第に彼がやって来てそれを言うのを待っている自分がいた。 そんな自分が恥ずかしくて彼に冷たく当たった。 もう来ないで下さい。迷惑です。 それでも達海はやってきた。何度突き放しても暇を見つけてはやってきた。 そうしていつものように今日も三雲は可愛いね、と言って去っていく。 とうとう耐え切れずに聞いた。 どうして、と。 そうしたら彼はやっと聞いた、と言わんばかりの笑みを浮かべて言ったのだ。 「お前の事が好きだからに決まってるだろ」 さあ、告白はしたよ。達海が握手を求めるように手を差し伸べる。 お返事は?と促されて三雲は俯いた。 耳まで真っ赤な自分を、自覚したくなかった。 *** 情けないミックが以下略www ふたりきり (三雲×達海←持田/ジャイアントキリング) 「ねえ達海さん」 持田は床に直接座ってテレビを見ている達海を後ろから抱きしめながら言う。 「んー」 「俺にしときなよ」 「ヤダ」 即答されるそれにむっとしながらもそれでも持田は諦めない。 「なんで三雲なの。俺の方が良くない?」 「三雲可愛いもん」 「まずそれがわかんない」 けれど達海はわかんなくていいよと画面から眼を離さずに応じる。 「俺が分かってればいいの」 下手に教えてモッチーが三雲の事好きになっちゃったら困るから。 そう言う達海に止めてよ気持ち悪い、と持田は達海の首筋に顔を埋める。 「達海さんの身体から俺んちのボディーソープの匂いがする」 「そりゃ風呂借りたからね」 「すっげえそそるんですけど」 そのままちゅ、と首筋に口付ければこら、と漸く達海が持田を振り返った。 「えっちぃことするなら帰るよ」 「これエッチな事じゃなくてスキンシップ」 達海さんイングランド帰りなんだからキスくらいいいでしょ、と言う持田に、それでもダメ、と達海は身を捩ってそれから逃れる。 「今は日本にいるからダメ」 「じゃあ達海さん、二人でイングランド行こうよ」 「ETUの面倒見なきゃなんないからダメ」 「さっきからダメばっかじゃん。一個くらいオッケーにしてよ」 ぶーと唇を尖らせて文句をつければ、仕方ないなあと達海は手の甲を持田の眼前に向けた。 「はい」 「なにこれ」 「手の甲へのキスくらいなら許してやる」 持田は眼を丸くした後、ぶはっと吹き出して笑った。 少しずつガードの緩くなってきている達海が愛しくて仕方ない。 見てろよ三雲。 そう思いながら持田は達海の手の甲に口付けた。 *** おいおい三雲やべえぞwww 平穏の足音は遠く (成田→達海←後藤/ジャイアントキリング) 後藤に抱かれてからも達海は成田の元へ行くのを止めなかった。 どうして、と問えば、彼は当然のように後藤に告げた。 「俺、成さんと別れるなんて一言も言ってないし」 視線を逸らして言うそれに後藤は焦れたように「お前は、俺が好きなんじゃないのか」と問い詰める。 あの日、達海の口からそう聞いたはずだったのに。 けれど達海はふっと寂しそうに好きだよ、と笑った。 「好きだけど、昔みたいに後藤だけが好きって風には、思えない」 「……成田に情が移ったのか」 そうかもね、と達海は目を伏せる。 後藤は根本的な事が分かってない。 後藤の中にあるのは成田への対抗心だ。 その証拠に成田の事があるまで後藤は達海の気持ちにも、自分の気持ちにすら気付かなかった。 自分に懐いていた動物が他人に懐くのが許せない子供と同じだ。 そんな愛が、嬉しいとでも思っているのだろうか。 「達海」 後藤が達海を抱き寄せて囁く。 「頼むからもう成田の所へは行かないでくれ」 「嫌」 懇願の色すら混じったそれに、しかし達海はそれを無碍もなく切り捨てる。 「だって俺が行かないと成さんがこっち来ちゃうもん」 「だったら俺が、」 「あのね、後藤」 達海は後藤の腕の中から逃れながら言う。 「俺、男だらけの修羅場とか嫌なの。だからもう少し考えさせてよ」 「……俺は、待っていていいのか」 「……」 それに答えられずに俯くと、ふと目の前が陰った。 キスされる、と気付いて目を閉じる。 唇に柔らかく触れた温もりに、無性に泣きたくなった。 *** 「逃れられない柵」続編。 本当はずっと (赤崎×達海/ジャイアントキリング) この人の事だ、俺の事なんて覚えてもいないだろう。 赤崎はそう思いながら達海の身体を押し倒す。 達海と出会ったのは、決して達海が監督就任してからじゃない。 もっと昔、この人がまだ若手選手だった頃。 幼かった俺を相手にボールを蹴ってくれた。 そんなこと、覚えてないだろう。 だけど良いのだ、もう。 この人はこうして戻ってきて、今、自分の腕の中にいる。 「赤崎?」 何考えてんの、と言わんばかりの眼で見上げてくる人に赤崎はいえ、と首を振る。 だからいいのだ。 本当はずっとあなたが好きでした、なんて。 「何でもないです」 今更恥ずかしくて言えるわけが無い。 *** ジーノもだけど赤崎って何でずっとETUにいたんだろうと思ったらこうなった。 |