あいうえお題

奏でるのは幸せの音色
(ジーノ&達海/ジャイアントキリング)

※前中後その後です。


「バッキーはどうしたの。いつにもまして挙動不審だよ」
自主トレ中も危うく怪我する寸前だった椿は、今もまた何も無い所で躓いてこけていた。
そんな椿を呆れ顔で見るジーノに、赤崎と世良は昨日の事なんすけど、と打ちあけた。
「実は俺ら、昨日監督のお見舞いに行ったんすけど……」
その時の様子を事細かに並べ立てると、ああ、そうとジーノは苦笑した。
「タッツミーの柔肌の刺激に耐えられなかったんだね」
「それに持田と監督が親しげだったっつーのもショックみたいっす」
「二人にしか分からない会話とかしてたし」
悔しいっす、と世良は拳を握り締めて唸った。
「なんすかあれ!俺らの監督なのに!」
「ふうん……そう、彼が、ね」
いつの間に我らが姫監督にちょっかいをかけていたのかな。
ジーノは一度探りに行くべきかな、と形のよい顎に指を当てた。


「タッツミー」
病室を訪れると確かに花畑に近い室内で達海がサッカー雑誌を捲っていた。
「元気そうだね」
「暇で死にそうだけどな」
「いいじゃない。あと三日の楽園だと思えば」
まあ、楽っちゃ楽だけど。達海はそう言いながらも物足りなさそうだ。
「ちびならもう来る時間だぜ」
するとまるでタイミングを計っていたかのようにノックがされ、看護師が入ってきた。
「達海さん、授乳のお時間ですよ」
入ってきた若い看護師の顔におや、とジーノは思う。
「あんがと」
「もう!達海さんてばたまには授乳室に来てくださいよね!」
「だって身体動かしたくないもん」
「みんな誰だって同じです!」
次は絶対来てくださいよ!と言い残して看護師は出て行った。
「彼女、ユーリに似てるね」
「あ、やっぱお前もそう思う?」
胸元を寛げながら達海が笑う。堂々と乳房を露わにした達海に、ジーノは目を丸くした。
「……なんていうか、男らしいよね、タッツミーは」
「は?何が」
「ううん。何でもない」
さすがに椿と違って女性の胸を見たくらいではジーノはうろたえたりはしない。
しかしそのさすがのジーノでもその思い切りのよさには少し驚いた。
「美味しそうに飲んでるね」
「やらねーぞ」
「それは残念。ねえ、タッツミー。どう?母親になるっていうのは」
達海はんーと少し考えた後、わかんない、と首を傾げた。
「でもさ、こいつ抱いてると安心する。それは確かだ」
そう穏やかな顔をする達海にジーノはどうも甘酸っぱい気分になる。
面映いような、もっとこの表情を見ていたいような、不思議な気持ちだ。
そうそう、とジーノは提げていた紙袋から真っ白な箱を取り出して達海に向けて開いて見せた。
「タッツミー、今日はお姫様のために可愛いドレスと靴を用意したよ」
純白のベビー服と靴に達海はうわ、と目を輝かせて覗き込んできた。
「すっげ、無駄に高そう」
涎塗れになるんだぜ、これ、とジーノを見上げてくる視線に、ジーノは構うものかと笑う。
「ベビーは汚すのも仕事だよ」
「よかったなあ、みゆき。お前にくれるってよ」
んくんくとミルクを吸っている腕の中の子に笑いかけるその表情は柔らかい。
そんな表情を見ていると、当初ここを訪れた目的であるはずの持田の事なんてどうでも良くなってくる。
タッツミー眺めてる方が楽しいしね。ジーノはベッドサイドに座って母子を眺める。
僕は男のタッツミーの方がお気に入りだったんだけど、女のタッツミーも母性を感じさせていいね。
本当に、飽きないよタッツミーは。
ジーノは赤子の頬をそっと指で撫でながら微笑った。



***
こうしてみんなに美乳を披露していく事になるタッツミーでした。え。ネタ提供ありがとうございました!




君には見せられない
(ジーノ/ジャイアントキリング)

※前中後その後です。


「長居してすまなかったな」
村越がジーノのマンションを辞したのは夜も更けてからだった。
「いいよ。また見たくなったらいつでもおいで」
すまない、と軽く頭を下げて出て行った村越の気配が遠ざかっていく。
恐らくもうエレベーターに乗っただろうという頃になって漸くジーノは玄関からリビングへと戻った。
ローテーブルの上に積み上げられたアルバム。
それを素通りしてジーノは棚から一冊の本を取り出した。
イタリア語で書かれたその本を捲ると、中から一枚の写真が出てくる。
「……これはさすがに悩めるコッシーには見せられないね」
そこには、穏やかな顔でわが子に授乳する達海の姿。
その横顔に軽いキスを落とし、ジーノは再びその写真を本に挟んだ。



***
その写真をよk(ryネタ提供ありがとうございました!!





くだらない大切なもの
(持田×達海/ジャイアントキリング)

捨てられないものがある。
あの人が置いていった、飲み干したドクター・ペッパーの缶。
他のチョコやら菓子の包みはちゃんとゴミとして認識するのに、これだけはどうしても捨てられない。
持田にとって、この空き缶はただの空き缶ではなかった。
あの人があの日、本当にここに居たのだと知らせるための、大切な印。
宝物のように棚の上に飾って、毎日眺めてみる。
あの人が、傍にいてくれた証。
この大切なゴミを捨てる日は、きっと。
またあの人がコンビニの袋を提げてここを訪れる時。
それは。
「もしもし、達海さん?」
今日かもしれない。



***
達海が来るちょっと前に処分するのを繰り返してたら可愛いな、と思った。何処がだ。





結局それですか
(持田×達海/ジャイアントキリング)

達海は先ほどから持参したカイロに夢中だ。
それはもう大切なものを扱うように包み込んでいる。
それが気に入らなくて、持田はひょいと手の中のそれを奪い取った。
「何すんだよ」
「達海さん、カイロに頼りすぎ」
「寒いんだから仕方ないじゃん」
ダメ。持田が容赦なくゴミ箱に捨てると達海が抗議の声を上げた。
「鬼!」
「バカだなあ達海さん。こういう時はこれでしょ?」
これ、と持田は手を差し出してくる。その意図を悟った達海はきょとんとした後、バカはお前だ、とそっぽを向いた。
「バカでいいからさ、手を繋ごう」



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バカップルめ。大好きだ。え。ネタ提供ありがとうございました!





こうしちゃいられない!
(佐倉/ジャイアントキリング)

※前中後の中の後らへん


15:10 ETUモバイルサイト
件名:緊急速報!
本文:こんにちは、広報の永田です。寒い日が続きますがみなさんお風邪など引いてないですか?
   さて、今日はとっても嬉しいお知らせがあります!
   なんと、本日午前十四時二十分ごろ、達海監督が無事赤ちゃんを出産いたしました!
   おめでとうございます!
   詳しい情報はまだ届いていませんが、元気な女の子だそうです。名前は「みゆき」ちゃん!
   とっても可愛いですね!
   達海監督とみゆきちゃんの写真は小部屋にアップしてありますので見てみてくださいね。
   では、私はこれからそのみゆきちゃんに会いに行ってきます。
   その時の模様はまた順次アップしていきますので楽しみにしていてくださいね。
   広報:永田


「!」
携帯電話を片手に勢いよく立ち上がった佐倉は、がたーんと派手な音を立てて倒れた椅子にも気付かず口をパクパクさせていた。
「監督?どうしたんですか」
訝しげなコーチの声も彼には届かず、「タ、タタタタ」と壊れた玩具のような声を佐倉は漏らした。
「た?」
「タ、タッツミーの赤ちゃんが産まれた……!」
「え!おめでとうございます!」
「あの、あの!」
挙動不審に何かを訴えてくる佐倉に全てを悟ったコーチはどうぞ、と快く彼を送り出した。
「気をつけて行って来て下さい。明日中には帰ってきてくださいよ」
「ははははい!」
上着を小脇に抱えて部屋を飛び出していった佐倉を見送り、コーチはやれやれと苦笑した。
オフシーズン中で本当によかった、と。



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