あいうえお題

幸いの子
(村越&??/ジャイアントキリング)

※前中後その後です。


ほら、と美幸は村越に向かって手を差し出した。
「村越おじさん、見て」
差し出された手を言われるがまま見るが、特にマニキュアが塗ってあるだとかそういうわけでもない。
何だ、と視線で訴えれば、爪の形、と言われて更に混乱する。
「……爪の形が、どうかしたのか」
「お父さんもお母さんも生海もね、絵に描いたような綺麗な曲線なの」
だけど私だけ違うの。美幸は己の手を目の前にかざして言う。
「私の爪はどっちかって言うと平たいほうで、何で私だけ違うんだろうってずっと思ってたの」
だけどやっと分かった。
ほら、と手を取られて自分の手と美幸の手が並ぶ。確かに二人ともよく似た形をしていた。
「この爪は、村越おじさんが私のお父さんっていう証だったのね」
ずっと気付かなくてごめんね。
そう微笑う美幸に、村越は喉の奥が痛むのを感じた。



***
似ている所を見つけては笑いあってればいい。





幸せの肖像
(??&達海/ジャイアントキリング)

※前中後その後です。


「美幸、サンタさんに頼むプレゼント決めたか?」
達海の問いかけに美幸は満面の笑みで頷いた。
「何にしたんだ?」
「あのね、みゆね、パッカくんのおっきいぬいぐるみほしい!サンタのおようふくの!」
「あーこないだ発売されたヤツ?」
先日発売されたパッカの四分の一スケールぬいぐるみクリスマスバージョンの事だろう。
確かに試作品が出来上がった頃も欲しいと言っていた気がする。
「わかった、じゃあサンタさんにメールしとくな」
「ありがとうおかあさん!」
早速達海は携帯電話を取り出し、背の高い「サンタさん」へとメールを送るのだった。



***
サンタの存在をいつまで信じてたっけ。





好きって言ってよ
(平泉×達海/ジャイアントキリング)

「平泉さん、好き」
達海はいつもそう言っては平泉に擦り寄る。
けれど平泉の返事は素っ気無い。
「そうか」
それだけだ。
それを不満に思うことはある。けれどそれを表に出してはいけない。
自分達は男同士であるという以前に、平泉には妻子がいる。
仲は冷え切っていると聞いてはいるが、それでも離縁しないのには何かしら理由があるからだ。
それが打算であろうと情であろうと関係ない。
未だ縁が繋がっている。それが重要なのだ。
それがある限り、少なくとも平泉から達海への応えを聞くことは無いだろう。
だから達海は返事を求めたりしない。
ただ自分が好きであるという事だけを一方的に伝えて、それで満足している振りをする。
だけど。
「ねえ、平泉さん」
もし、いつか、「その日」が来ることがあれば。
「覚悟だけは、しておいてね」
その時は、もう、逃がさない。



***
離婚をじりじりと待つタッツ。





せっかくなんで煽ってみた
(堀×達海/ジャイアントキリング)

「堀って肌綺麗だよね」
顔立ちもだけど、と言う達海に、堀はそうですか、とぶっきらぼうに答えた。
それがただの照れ隠しだと知っている達海はにひーと笑って嬉しい?と聞いた。
「俺に誉められて、嬉しい?」
「そういう聞き方されると嬉しくないです」
今度は不貞腐れたような声を出す堀に、達海は楽しそうに男の頬に手を滑らす。
「すーべっすべー」
「やめてください」
ぺいっと手を退けられて達海はけーちと唇を尖らせる。
「いいじゃん、触ったって」
「ダメです」
「何で」
すると堀はぷいっとそっぽを向いて言った。
「……キスしたくなるから、ダメです」
達海はきょとんとした後、また楽しそうに笑って堀の頬へと手を伸ばした。



***
東京Vの堀君です。堀田君と間違えたわけじゃないのよ。





そりゃあ好きですから
(持田×達海/ジャイアントキリング)

「最近さあ、達海さん、うちの堀とか三雲とかに手を出してるって聞いたんだけど」
ホント?とじりじり詰め寄りながらの問いかけに達海は仰け反りながらもしれっとしてそうだけど、と頷いた。
「掘も三雲も可愛いよね」
「達海さんの可愛さの基準はともかくとして、俺という恋人がいながらそういう事するのってどうなの」
「言ったじゃーん、俺可愛い子に弱いって」
確かに、確かにお付き合いを申し込んだ時にそう言っていたのだが。
だから彼の選手である椿には警戒していたのだが。
どうやら達海の言う可愛いとやらは一般常識からはかなり掛け離れていたようだ。
「あとはシロさんにも声かけたってホント?」
「うん、断られたけど」
あれは残念。と反省の色も見せずに言う達海に、持田はぶちっと何かが切れた音を頭の奥で聞いた。
「しんっじらんない!達海さんサイテー!男なら誰でもいいわけ!」
「可愛い子なら誰でもいい」
「なんでそんな堂々としてるわけ?ありえないから!」
堂々と言い放つ達海に開いた口が塞がらない状態の持田に、でもね、と彼は続けた。
「モッチーは可愛くない」
「可愛いって言われたって嬉しくないんですけど」
「可愛くないけど一緒にいる」
そこんとこの意味、考えてくれる?
持田は一瞬考えた後、最低だ、と項垂れるしかなかった。



***
たまには手当たり次第なタッツでも。

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