あいうえお題

だって独りは寂しい
(成田×女達海/ジャイアントキリング)

嘘を吐いた。
子供が出来ない身体だと、嘘を吐いた。
こんな体質だったから、成さんはすぐに信じた。
今までこの体質に感謝したことはなかったけれど。
この時ばかりは、俺、自分がこんな身体でよかったって、思ったんだ。
だって、独りは寂しかったから。
走る事を奪われた俺には、もう何も無かったから。
だから少しだけ、希望を持ってみたかった。
成さんが訪れた日に女性化したこと。
それは神様が俺にくれた、チャンスなんだと。
そう信じたかったのだ。
それがまさか、こんな結果を産むだなんて。
あの時の俺は、ただ必死で。
全く思いもよらなかったのだ。



***
始めてみましたナリニョタッツ。どうしよう楽しいwww





小さな幸せの大きな覚悟
(リチャード&女達海/ジャイアントキリング)

※「だって一人は寂しい」続編です。


達海の目論みは成功した。
一ヶ月経っても、二ヶ月経っても男の体に戻らない事に喜びを覚えた。
医者はおめでとうと言った。嬉しかった。
だけど。
三ヶ月、四ヶ月と過ぎていくうちに「何で俺、こんな事したんだろう」と思うようになった。
脚もまだまだリハビリが必要なのに、胎に人一人抱え込むなんて。
自分の事も儘ならないのに、子供なんて産んで育てられるのだろうか。
無理だ。だけどもう手遅れだ。産むしかない。
後悔してる、とリチャードに告白したら、怒られた。当然だ。
だけどあの時はそれしかないと思ったのだ。それが、生きる希望になるのだと信じていた。
そう言ったら余計に怒られた。信じていた、じゃなくて、信じなくてはダメだ。
お腹の子にとっては、君こそが希望そのものなのだから、応えてあげなくてはダメだ、と。
応えられるだろうか、と言う達海にリチャードは大丈夫、と笑った。
タッツとナルの子だもの。きっと元気な子が生まれてくるよ。
そう元気付けてくるリチャードに、達海はお前、いい男だったんだな、と微笑った。
今頃分かったのかい?そう得意げなリチャードに、達海は久方ぶりに笑った。



***
私の中でリチャードは安全牌になりつつある。(爆)





強がりな君が愛しくて
(成田×女達海/ジャイアントキリング)

※「だって一人は寂しい」続編です。


数日前から前駆陣痛が来ていたからいつ産まれてもおかしくないと覚悟は決めていた。
だが、実際に本格的な陣痛が来ると一気に不安になった。
リチャードやリチャードの母親が励ましてくれたがもうそれどころではない。
成田の顔が見たかった。見ればきっと不安もなくなるだろうから。
写真の一枚でも、記事の切り抜きでもいいから持っておくんだった。
達海がそう痛みの中で後悔していると奇跡が起こった。
病室に、成田が現れたのだ。
始めは痛みが見せた幻だと思った。だけど幻じゃなかった。
何でここにいるの、ここ日本じゃないよ。そう震える声で問えば、リチャードから連絡が来た、と成田はばつが悪そうに言った。
リチャードを見れば、彼はぱちんと可愛らしくウインクをしてくれて。
達海はそれで全てを悟った。
いつからかは知らないが、成田は達海が成田の子を産もうとしている事を知っていたのだ。
そして恐らくは前駆陣痛が来た辺りで連絡が行ったのだろう。
でも成さん、練習は、試合は。
すると成田は驚くべき事を口にした。
イングランドの某チームに移籍する事になったと言うのだ。
成田は以前、日本を出る気は無いと言っていた筈なのに。
俺のせい?俺のせいなの。達海の問いかけに成田はああそうだ、お前のせいだ、と頷いた。
お前の傍にいたいから、日本での地位を捨ててきた。
全部、お前のせいだ。
だから責任とって俺のものになれ。
無事に子供を産んで、俺と結婚してくれ。
順序逆だね、と達海が笑うと、それもお前のせいだ、と頬を指で弾かれた。
そうだね、俺のせいだね。達海は微笑う。
じゃあ、頑張って産んでくる。さっきまでの不安が嘘のように消えていた。
達海はナースに付き添われ、分娩室へと向かった。



***
ボールは何処でも蹴れる。吹っ切れた成さんはきっとそう思ってる。





手付かずの恋心
(三雲&堀×達海/ジャイアントキリング)

可愛いものが好きだとあの人は言った。
どこをどうとってこの身を可愛いと言うのかは分からないが、三雲は達海に選ばれた。
幼い頃憧れた人が、三雲を可愛いと言って愛でる。
それは余りにもくすぐったく、面映いものだった。
三雲、可愛い。と余りにも繰り返すものだから、勘違いしてしまいそうになる。
あの人が、自分だけのものであるかのような、勘違い。
だけどあの人の甘い言葉は三雲だけではなく、他の男にも吐かれていた。
それが同じチームの堀だった。
最初は愕然とした。だけどすぐに気付いた。
あの人が自分のものなのではない。
自分が、あの人のものなのだ。
自分達は同じ飼い主から餌を与えられる哀れなペットなのだ。
堀もそれに気付いているのだろう。時折もの言いたげな視線で三雲を見てくる。
だが三雲は何も言わない。好きにすればいいのだ、と態度で示す。
妙なプライドを持てば捨てられるだけだ。
あの甘い言葉としなやかな肢体を失いたくないのなら、ペットに甘んじる事だ。
三雲、可愛い。とあの言葉が首に巻きついている限り。
三雲は達海のものなのだ。



***
「そりゃあ好きですから」との関連はありません。





とんでもない事実
(後藤&達海/ジャイアントキリング)

※「だって独りは寂しい」続編です。


「そういえばお前、恋人とかいないのか」
イングランドを離れるその朝、別れもそこそこにあっさりと車に乗った達海に後藤はそう問いかけた。
「ん、いるよ。子供も二人いる」
「「はあ?!」」
思わず立ち上がってしまった後藤と有里が天井に頭をぶつけているのを達海はけらけらと指を指して笑う。
「何してんの、二人とも」
「いや、お前、置いてきていいのか?」
「なに今更な事言ってんの。じゃあ何。俺が家族と離れたく無いから監督無理って言ったら帰してくれるの」
にやにやして言う達海に、それは、その、と後藤が言いよどむ。
「大丈夫だって。引越しの準備とか手間取ってるだけで、来週には日本に行く事になってっから」
だから用意するマンションは家族用でヨロシク。達海はにひーと笑う。
「あ、ああ、わかった。それにしてもお前が父親になるとはなぁ」
しみじみとして言う後藤に、あ、それ違う、と達海が訂正を入れた。
「俺、父親じゃなくて母親の方」
「は?」
「言ってなかったけど、俺、先天性転換型両性具有者なの。だから俺が産んだの」
「はああ?!」
写真見る?と達海がジャケットの内ポケットから取り出した写真には。
達海と男の子と女の子。そして。
「……この男、もしかして、元日本代表の成田じゃないのか」
「そ。俺の旦那様」
「ええええええ?!」
車内に有里の悲鳴が響く中、後藤はぽかんと口を開けたまま、何も言えないようだった。



***
そして日本へ。成田と二人の子供もその内日本へ行きます。

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