あいうえお題

初めてはもう少し待って
(成田×女達海/ジャイアントキリング)

※「なんで逃げるんだ」続編です。


「先天性転換型両性具有?」
何だそれは、という成田に達海は簡潔に説明した。
すると成田はそれで理解したらしく、なるほど、と頷いた。
「それで会ってくれなかったんだな」
「そ」
「だがもうお前が逃げる必要はなくなった。これからは、男でも女でも構わない。俺の傍にいてくれないか」
そっと手を握って言う成田に、「本当に?」と達海は問う。
「こんな厄介な身体でもいいの」
「ああ、構うものか」
ぐいっと腕を引かれ抱き寄せられて達海が成田の腕の中に納まると、頬をそっと撫でられた。
その意図するところを悟った達海が顔を上げると、成田の顔がすっと近付いて口付けてくる。
「ん……」
達海もまた成田の広い背に腕を回し、それを受け止めるとゆっくりと押し倒された。
「ぁ……ちょ、成さん、待って」
胸元に成田の手を感じた達海が慌てて押しとどめる。
「何だ」
「何じゃなくて。何しようとしてんの」
「駄目か?」
無駄に真摯な眼差しで問われ、達海はぐっと言葉を詰まらせた。
「……だ、だめ」
「何でだ」
「だって……」
ぼしょぼしょと恥ずかしそうに囁かれたそれに、成田の眼が見開かれる。
「……お前、処女だったのか」
「デリカシーの無い言い方しないでくれる?今まで誰にも言った事無いんだから、無いに決まってるだろ……!」
「すまん」
「……何嬉しそうな顔してんの。成さんのえっち」
「いや、その……今度、夜景の綺麗なホテルにでも行くか?」
達海は目をぱちくりした後、ぶっと吹き出して笑った。
「なにそれ、ベタすぎる……!俺そこまでこだわんないよ……!」
くくくと喉を鳴らして笑う達海に、そうか、と成田はばつの悪そうな顔をした。



***
おあずけされてればいいよwwネタ提供ありがとうございました!





秘密の出来事
(山井×達海/ジャイアントキリング)

「山井ちゃんはさ、なんで俺と寝るの」
情事の後の気だるさを残したままベッドに寝そべった達海が問うと、山井は手にしていた煙草を灰皿に押し付けた。
「そりゃこっちのセリフさ。アンタこそなんで俺と寝てくれるんだい、達海さんよ」
「俺の質問が先ー」
もそもそと男に擦り寄ってくる姿は気紛れな猫そのものだ。尻尾の幻だって見える。
「ねえ、何で?」
興味に輝く瞳で見上げられ、山井はそれだよ、と達海の顔を指差した。
「その眼に弱いんだよ、俺は」
「眼?」
「構えっつーオーラ出して擦り寄ってくるから構いたくなるんだよ」
さあ俺は答えたぞ。山井は達海の頬を突いて言う。
「俺の質問の答えを聞かせてくれるかい」
「いいよ」
達海がのそりと身を起こすとシーツが細い身体を滑り落ち、肌が露わになった。
けれど達海はそんな事には頓着せず、山井の体を跨いで座る。
そうして達海は山井の耳元に唇を寄せ、そっと答えを囁いてやった。
「それはね、」



***
人はそれをフェロモンというww





二人の兄妹
(??&村越/ジャイアントキリング)

※「だって独りは寂しい」続編です。


「俺を殺したいと思っても、解任されてからにするように」
そう不敵に笑った男の元を去り、花やしきを出ようとすると、とんと足元に軽い衝撃が走って村越は足を止めた。
そこには幼稚園くらいの女の子がぺたんと尻餅をついていた。
「すまない、大丈夫か」
きょとんと眼をまん丸にした少女は村越を見上げた後、「sorry」と流暢な発音で謝った。
膝をつき、少女の身体をひょいと抱き上げて立たせてやるとありがとう、とこれまた英語で礼を言われた。
「アリー!」
すると少し離れた所から少年が駆けてきた。この子の兄だろうか。
「カイト!」
『ダメだろ、勝手に離れちゃ!父さんに怒られちゃうよ』
『ごめんなさい』
村越はそこそこに英語は理解できるので、恐らくはそんなような事を言っているのだろうと推測する。
それにしても、と村越は少年と少女を見る。
どう見ても日本人なのだが、彼らの英語の発音はとても流暢だ。
日系か何かだろうか、と思いながら眺めていると、兄が「あ」と今更ながらに気付いたように村越を見た。
「ソ……ごめんなさい、妹がぶつかっちゃって」
どうやら日本語も堪能らしい。
「いや、こちらこそ考え事をしていてすまなかった」
そう謝って立ち上がると、背後から「カイト、アリア」と男の声が聞こえて三者三様に振り返った。
「ダッド!」「ダディ!」
子供たちが男の元へと駆けていく。
「こら、日本ではちゃんと日本語使えって言っただろうが」
そこに立っていた男の容貌は、村越の記憶に引っかかった。
「すみません、子供たちがご迷惑を……」
そこで向こうも相手が村越だと気付いて眼を見開いた。
「村越、か。久しぶりだな」
「……あんたは、まさか、成田、さん?」
思わぬ人との再会に、村越は思わず言葉を失った。
そんな村越に苦笑しながらも成田は「達海と会っていたんだろ?」と聞いてきた。
「どうしてそれを……」
すると成田の脚にしがみつくようにしていた少女がぱっと顔を輝かせ駆け出した。
「マミィ!」
「え!マム?!あ!マムだ!」
すると少年も少女の後を追って駆け出す。
その先に居たのは。
「マミィ!」
「マム!」
「こーら、お前ら日本にいるときはマム禁止つったろ」
先ほど別れたばかりの達海だった。
「あれ、何でお前ら一緒に居んの」
達海は二人の子供の手を引いて近付いてくると、暢気にそう言った。



***
花やしきでついでに遊んでればいいと思ったらこうなった。





平然と惚気るなよ
(村越&達海/ジャイアントキリング)

※「だって独りは寂しい」続編です。


「まあそういうわけでさ、俺の旦那と子供たち」
ざっと説明を受けたものの、村越は俄かには信じられなかった。
先天性転換型両性具有という言葉は知っていた。テレビで時折見かけることがあったからだ。
しかし達海がそうであるとなると話は別だ。
現役時代、何度も着替えを共にしてきたが達海にそんな素振りは全く無かった。
そう村越が言えば、時期さえ気をつければばれないようにする事は簡単だった、と達海は言った。
「お前、記憶に無いか?俺がたまに脚の不調を理由に試合休んでた事」
そう言われてみれば確かに達海は時折、脚の不調を理由に試合を欠場する事があった。
「女の体の時は試合に出れない決まりだからな」
後藤さんたちは知ってるのか、と問えば当たり前じゃん、と達海は笑った。
「こいつらの住んでるマンション手配したの後藤だもん。俺もオフには帰ってるし」
「ママ、もっとおうちかえってきてよ」
拗ねたような声に達海はごめんな、と少女を抱き上げて頬擦りした。
「これが俺のお仕事だからな。我慢してくれよな、亜梨亜」
「アリアのメンドウは俺が見るから大丈夫だよ、母さん」
「海斗は頼もしいなあ。誰に似たんだか」
「少なくともお前ではないな」
「あ、ひっどい成さん」
暖かな微笑みを交わす達海に、村越はぎゅっと拳を握り締めた。
「……」
村越は無言で成田にぺこりと軽く会釈をすると、そのまま踵を返して出口へと向かった。
達海のあんな幸せそうな顔、見たくもない。
それがどんな感情から来るものなのか、今の村越には計りようがなかった。



***
そりゃ目の前で惚気られたら誰だってイラッとするwww





本当に着ますけど?
(堀×達海/ジャイアントキリング)


今日も今日とて監督室に堀を連れ込んで、達海は上機嫌に堀の隣に座った。
「堀クン堀クン。お願いがあるんだけど」
「何スか」
その上機嫌ぶりに少々引きながら応じると、これ、と達海は安っぽいベッドの下から紙袋を引っ張り出してきた。
「開けてみろよ」
「はあ」
言われるがままに紙袋を開いてみて、赤と白のそれに瞬時にして何かを悟って紙袋を閉じた。
「返します」
「えー何でよ」
良いから出してみろよ、とせがまれて堀は仕方なく今一度紙袋を開ける。
そしてずるりとそれを取り出してみて、堀は自分の予想が外れていない事を確信した。
「じゃーん、ミニスカサンタの衣装でーす!」
わーぱちぱち。一人盛り上がっている達海とは対照的に、堀はげんなりとして傍らの男を見た。
「ミニスカサンタは分かりましたけど、なんでこれ、こんなにサイズでかいんスか」
明らかに通常の女性用サイズではないそれに、まさかとは思うけど、と続ければ、達海はあっさりと。
「堀に着て欲しくて一番大きいサイズ買ってきた!」
と満面の笑みで答えてくれた。
やっぱり、とがくりと肩を落としていると、なあなあ、と達海がしなだれかかって来る。
「着ろよー着ーてー」
達海のおねだり攻撃にぐっと詰まりながらも寧ろ、と堀は達海の身体にそれを押し当てる。
「達海さんが着てくださいよ」
「やだよ、俺が着ても俺が楽しく無いじゃん」
「だったら俺も俺が着ても俺が楽しくないので嫌です」
すると達海はきょとんとして、それもそうか、と頷いた。
これで回避できる、と思ったのも束の間。
「じゃあ、まず俺が着るから次に堀、着ろよな」
え。
ごそごそと早速服を脱ぎだした達海を、堀は呆気に取られて見守る事になった。



***
どっちが着たところでタッツに襲われる事に変わりは無い。

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