あいうえお題

飴玉行進曲
(三雲×達海/ジャイアントキリング)

何味でも良いから飴買ってきて。
そうメールが入ったのがついさっき。
まるで三雲がコンビニに入ったのを見ていたようなタイミングに思わず辺りを見回してしまった。
けれどそこに求める人の姿は無くて。
ほっとしたようながっかりしたような。複雑な気分で三雲は缶ジュースのコーナーへと向かった。
自分のコーヒーと、あの人のドクター・ペッパー。
そして菓子コーナーであの人がよく食べていたスナック菓子を籠に放り込み、最後に飴を物色する。
適当に袋に入った飴でも買っていこうかと思ったその時、ふと棒付き飴が目に付いた。
そういえば以前、これを舐めていた気がする。
けれど何種類もあるフレーバーに、三雲はどれを買っていくべきかと困惑した。
さすがにあの時何味を舐めていたかなんてことまでは三雲には分からない。
考え抜いた結果、同じ味ばかり三本を手に取ってそれも籠に放り込んだ。


「早かったな」
着きました、とメールをすればすぐに達海はクラブハウスから出てきた。
監督室までの道のりは相変わらず緊張するけれど、もう見慣れた光景だ。
「飴買ってきてくれた?」
「あ、はい」
コンビニの袋を手渡すと、達海はがさごそと中身を漁って三本の棒付き飴を取り出した。
「何でチェリー?」
「達海さん、ドクペ好きだから……チェリーの方が良いかな、と思ったんですけど……すみません」
「なんで謝るの?」
達海は飴のパッケージを剥きながら小首を傾げる。
「俺、チェリー味も好きだよ」
そして白と赤の丸い飴をぱくりと咥え、にひっと笑った。



***
私が基本的にチェリー味しか食べないのでこうなりました。(爆)





いっそ言わなければ良かったのか
(深作←達海←松本/ジャイアントキリング)

「好きだ」
二人きりのロッカーでそう告げると、達海は眼を丸くした後、すぐに冷静さを取り戻して視線を伏せた。
「……何となく、気付いてた」
くるりと背を向けた達海に、松本は歩み寄ると後ろからそっと抱きしめた。
「松っさん、ダメだよ」
ダメだと言いながらも達海は己を抱く手を拒まない。
「どうして」
「俺、フカさんが好きなんだ」
「知ってる」
抱く手に力をこめると、そこで初めて達海が身じろいた。
「ダメだよ」
「何が」
松本の腕の中でもぞりと動き、身を反転させた達海が真っ直ぐに松本を見て言う。
「俺が松っさんに甘えちゃうから、ダメ」
「それでもいい。達海」
顔を寄せるとふいっと反らされる。達海、と懇願するように名を呼ぶと、彼にしては珍しくおどおどとした視線で松本と向き直った。
「お前が好きだ。深作の事が好きならそれでいい。今だけで良いんだ」
「……」
もう一度顔を寄せると、今度は達海は逃げなかった。
触れ合う唇。柔らかな感触を松本は二度、三度と味わうと名残惜しげに唇を離した。
「……困らせてごめんな、達海」
達海はふるふると首を振って俺のほうこそごめん、と俯いた。
扉の外で立ち去る者が居たことなど、二人は気付く由も無かった。



***
メロドラマテンプレwwww「本当は」の続きのような。





飢えた星の輝きよ
(三雲&堀×達海/ジャイアントキリング)

練習を終え、ロッカーに戻ってきた堀はまず携帯電話の着信をチェックした。
メールが一通。達海からだ。
内容は簡潔。『今日、おいで』ただそれだけ。
たったそれだけのメールに喜色を隠せず、急いで返信を打つ。
こちらもたった一言、行きます、とただそれだけ。
送信完了を見守ってから携帯電話をバッグの中に戻す。
タオルを片手に顔を上げると、こちらを見ている三雲と目があった。
そうだ、堀にメールが来ているという事は、今日は三雲は。
何の感情も無さげな三雲の眼の奥では微かな嫉妬が揺らいでいて。
と、ふと三雲が何かに気付いて視線を落とした。
ロッカーの中で、三雲の携帯電話が鳴っている。
三雲が視線を逸らしたのにほっとしてシャワールームへと消えようとする。
しかし、擦れ違い様に「堀さん」と呼ばれてぎくりと足を止めた。
そこには途惑いを滲ませた三雲が携帯電話のディスプレイをこちらにそっと向けてきた。
『三雲もおいで』
思わず二人は顔を見合わせる。
今まで二人同時に呼ばれることなど無かったというのに。
それほどまでに、あの人は飢えているというのか。
「……」
「……」
三雲が携帯電話をロッカーに戻すと、二人は無言でシャワールームへと向かった。



***
「手付かずの恋心」の続きみたいな。





えっとですね、そうなんです
(有里&達海/ジャイアントキリング)

※前中後その後です。


「達海さんって生理とかあるの?」
有里の問いに達海はうーんと首を傾げた。
「あるっちゃあるし、ないっちゃない」
「どっちなのよ」
すると達海はまた反対側にうーんと首を傾げた。
「まずさ、身体が女になるだろ。そうすると排卵が始まるわけよ」
「ふむふむ」
「で、受精しなけりゃその内に生理がくるはずなんだが、俺の場合その前に男に戻っちまうだろ」
「あ、そっか。じゃあ無いんじゃん」
「でもホルモンバランス崩れてずっと女のままで居たりすると生理も来るわけよ」
あーそっかと有里が頷きながらコーヒーを啜る。
「いーなー達海さん、生理無いようなもんじゃん」
「あのな、転換って結構キツイんだぜ?」
「そんな事言ったら生理痛だってキツイのよ?」
「一緒にすんなっつーの」
達海はいつもの炭酸飲料を啜りながら肩を竦めた。



***
これって生理ネタになるの?なりますか、そうですか。(爆)





俺は悪くないんだからお前が悪い
(深作←達海←松本/ジャイアントキリング)

松本が達海を好きだったなんて、知らなかった。
松本はいつも俺に絡んでくる達海を見てげらげらバカみたいに笑ってたから。
だからそんな風に思ってたなんて、全然気付かなかった。
どうしよう、どうすれば。
だって達海は俺の事が好きで、達海は、俺の事が、好きで……。
ちょっと待て。
何で俺が悩まなきゃならないんだ?
俺は達海の想いに応えるつもりは無いんだからそのままでいいじゃないか。
ていうか、達海も諦めて松本とくっつけばいいんだ。
そうすれば俺は達海から解放されて清々する。
そうだ、そうなればいい。
……だけど。
この胸の内の在る蟠りは何だ。
この胸の内に在る優越感は何だ。
松本と達海がくっつくのが気に入らない?
松本が好きな達海が俺を好きだと知って優越感を感じている?
そんなバカな。
俺は達海の事なんてなんとも思っちゃいない。いないんだ。
チクショウ、何で俺がこんなこと。
全部達海が悪い。そうだ、達海が悪いんだ。
俺は何も悪くない。何も見なかった、知らなかった。
そうだ、それでいい。そうすればまた、明日から日常が戻ってくる。
俺は悪くない。悪いのはお前らだ。
俺は悪くない。そのはずなんだ。



***
「いっそ言わなければ良かったのか」続編。うちの深作は基本的に都合の悪い事が起きると見なかったふりをする傾向がある。

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