あいうえお題
快楽の後の一人の時間 (後藤×達海/ジャイアントキリング) こんな深夜に風呂に入る羽目になったのは、後藤のせいだと達海は確信していた。 本当ならもっと早い時間に湯に浸かって、今日一日の疲れを癒してさっさと後藤の匂いのするベッドで後藤に抱きかかえられて眠るはずだったのに。 後藤が余計な(というと反論されるだろうが)仕事を持ち帰った所為で二人の時間が始まるのが遅くなった。 それでも求められれば嬉しいもので、仕事が終わった後藤に流されるがままソファの上に押し倒されたのが二時間前。 後藤が調子こいて年も考えず二回もやりやがった所為でこんな真夜中に風呂に入る羽目になった。 俺、疲れて眠いのに。 けれどいつも以上にべたついた身体のまま眠る気にはなれなくて、後藤がシーツを換えている間にこうして風呂に入っている。 後藤のバカ。 そう悪態をつくと、浴室の壁にその声は思った以上に反響してちょっとぎょっとする。 すると悪態が聞こえたかのように後藤が洗面所に入ってきて驚いた。 「達海、着替え置いておくぞ」 ガラス越しに聞こえる声にうん、と頷いて。 去ろうとする気配に思わず後藤、と声をかけていた。 「何だ?」 え、あ、うん。特に意味は無かったんだけど。 後藤、の続きが発せられないのが気になったのか、後藤が扉を薄く開けて顔を覗かせた。 「どうかしたのか?」 「ん、いや……一緒に入らねえの」 達海の咄嗟の提案に後藤は微かに目を丸くして、狭いだろ、と笑った。 「狭いけどさ。大丈夫だろ」 「でもお前、のぼせないか?」 「……」 それもそうだ。 黙っていると後藤はいいよ、とくすくすと笑った。 「気持ちだけ貰っておく」 ぱたりと閉められるガラス戸。遠ざかっていく気配。 「……何の気持ちだよ」 独り取り残された達海は湯船の中で膝を抱えた。 *** おかしい、予定してたのと全く違う話になった。(爆) きっとそれも計算のうち (??&達海/ジャイアントキリング) ※前中後その後です。 美幸はホットココアが好きだ。 夏だろうが冬だろうが関係無しにホットで飲む。 ココアの粉を少量のお湯で溶かし、そこに温めたミルクを注ぐ。 そうしてスプーンで掻き混ぜてできたココアを啜るのが好きなのだ。 だから美幸の家には当然ココアがストックしてあったし、よく行く村越の家にも置いてある。 だからと言って。 「これ、どうしたの」 母が買ってきた色んなメーカーのココアの粉に美幸は目を丸くした。 「ん。プレゼント」 「や、プレゼントって言われても。買ってきたの?」 しかし見る限り美幸がよく行く店では見たことが無いようなメーカーのものもある。 「こないだの雑誌のインタビューでお前がココアにはまってるって零したら送ってきた」 何がどうなってそんな話題になった。 母が出ている雑誌の全てをチェックしているわけではない美幸には計りかねた。(生海なら即答してくれるだろうが) ともかく。 どうやらこれは母のファンからの「娘さんにどうぞ」的な贈り物らしいかった。 「どうするの、こんなに」 「飲めばいいじゃん」 「何年分なのよ」 「いーじゃん。お前粉のまま食べるのも好きだろ」 そういう問題じゃなくて、と言いかけて美幸は諦めた。 もうその雑誌が発売されている以上どうしようもないし、貰ったものはありがたく頂くしかない。 「もう。お母さんも消費に手伝ってよね」 「任せろ」 美幸の溜息など物ともせず、甘党の母はにっこりと笑ったのだった。 *** ココアが好きです。 苦しみすらもまた愛し (三雲×達海/ジャイアントキリング) 「ああ、雪だ」 夜空を見上げていた達海が不意にそう零した。 三雲がつられて上を見ると、確かに光を反射して舞い降りてくる白いそれが眼に映った。 積もったりはしないだろうが、それでも明日のコンディションに影響が出るのは困る。 雨も嫌だが、雪も嫌だ。三雲は足元を見る。 達海の影が三雲の足に掛かっている。 こんな風に、自分はこの人の中に入り込めているのだろうか。 いつも飄々としていて、つかみどころが無くて、三雲を翻弄する。 そんなこの人の傍にいることを選んだのは三雲自身だ。 けれど時折、それが正しかったのかどうか不安になる。 自分の気持ちに嘘は無い。この人が好きだ。それは確かだ。 けれど。 目の前の人のように人の感情を察する事を得意としない三雲にとって、達海という存在は不思議であり、不気味な存在であった。 好きではあるのだけれど、不気味だ。 「ねえ、三雲」 呼ばれてはっとする。顔を上げると何の感情も移してない達海の眼とぶつかった。 「俺は三雲の事、好きだよ」 こんな時、ぞっとする。 三雲が達海を好きだという事も、けれどその達海を畏怖している事も全て見透かされているようで。 「そう、ですか」 「嬉しい?」 「はい」 その気持ちに間違いは無いと言い聞かせるように頷くと、達海はそう、とまた空を見上げた。 「ちゃんと、好きだよ」 少しだけ寂しそうに呟く姿に、壁を作っているのは自分の方だったのだ、と三雲は漸く気付いた。 *** クソ寒い中立ちすくむ二人が書きたかった。 結局辿り着くのはそこなのです (成田×達海/ジャイアントキリング) 「成さんてさ、えっちうまいよね」 どこで教わったの?と小首を傾げる達海に、成田は思わず含んでいた烏龍茶を噴き出す所だった。 ごきゅりと音を立ててそれを飲み下し、何を、とだけ何とか声にすると達海はだってさあと腕を組んだ。 「俺、男と寝るの成さんが初めてだったのにちゃんとイケたし」 あ、もしかして成さん実はそっちの人なの? 「恐ろしい事を言うな!」 「だって成さん男抱くの初めてだなんて信じらんないってアレは」 お互い男相手は初めてで、手探りに身体を繋げたのはつい一時間ほど前。 もういいから、という達海にきついのはお前だぞ、と窘めながらそこを解し、繋がったときの感覚は未だ新しい。 女とは違う締め付け加減に持っていかれそうになりながらもゆっくりと腰を動かし、傷つけないようにと配慮した。 最終的にはそんなのもふっ飛んで欲のままに突き上げてしまったが、その気遣いを「男専門だった」と勘違いされてはやりきれない。 成田が文句をつけようと口を開いたそこに達海の唇が重なる。 ぱくりと唇を食まれ、ちゅぽんと離される。 「分かってるよ、成さん」 「……何がだ」 「成さんが俺の事愛しちゃってるって事でしょ?」 認めるのも悔しかったので、成田は視線を逸らすと嫌そうに一つ、溜息をついた。 *** じゃれあいが書きたかっただけですはい。(爆) これからも見ていてね? (佐倉×女達海/ジャイアントキリング) ※「これからもよろしくね?」続編です。 達海の衝撃的な秘密を知ってしまった佐倉は、いても立ってもいられずETUのクラブハウスを訪れた。 今日もグラウンドにはサポーターが見学に集まっており、佐倉もまたそこに混じって達海の姿を探した。 そして一人別メニューらしい達海の姿を見つけて、走る達海の姿を見ているうちに先日の事は夢だったのではないかと思えてきた。 あの達海が先天性転換型両性具有だったなんて。 あの達海が自分にまたね、と笑ってくれたなんて。 何かの間違いでは無いだろうか。そう思いながら眺めていると、やがて練習は終了し、選手達がクラブハウスへと向かう。 ファンサービスをしていく何人かの選手の背後を達海がしれっとして通り過ぎようとする。 「あれ」 しかし彼は佐倉の姿に気付くときょとんとし、そして笑った。 「佐倉サンじゃん」 ぴしりと固まってしまった佐倉とは尻目に、砕けた態度で近付いてきた。 「こないだはどーも」 「い、いえ」 「達海、知り合いか?」 傍らに立つ後藤が達海を見下ろす。うん、こないだの人、との達海の説明に後藤はああ、と頷いた。 「達海がご迷惑をおかけしました」 「い、いえ、そんなこと!」 まるで保護者の口ぶりに、佐倉はただ手を顔の前でぶんぶんと振るしかない。 「佐倉さん、今日午後は暇なの」 「え?あ、はい」 今日は一日オフで、だからこそここまで来れたのだ。 ふうん、と達海は頷き、そしてにやりと笑って佐倉の襟首へと手を伸ばした。 「わっ!」 ぐいっと襟首を引っ張られ、バランスを崩したところに達海が佐倉の耳元で何かを囁いた。 「え」 「またね、佐倉サン」 「達海」 諌める声に達海はへいへいと気の無い返事を返しながらクラブハウスへと向かう。 「すみません」 後藤も呆然としている佐倉にぺこりとお辞儀をして達海の後を追いかけた。 佐倉はぽかんとしながら先ほど囁かれた言葉を反芻する。 『三時に雷門』 え。えっ。 佐倉は暫くの間、その場を動く事が出来なかった。 *** うっかり続きを書いてしまいましたがこれ以上は特に考えてません。(笑顔) |