あいうえお題

さっさと帰ろうそうしよう
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

明日はオフなので後藤の家に泊まる事になった。
そんな時、大抵は達海が後藤を待たせるのが常々なのだが。
今日は珍しく後藤の方が仕事が立て込んでしまったらしくて達海は監督室で待ちぼうけだ。
と言っても試合のDVDを再生し始めれば時間なんてあっという間で。
前半戦が終わるより早く後藤は達海の元へとやってきた。
「もういいのかよ」
「ああ、待たせたな」
いいよ、と電源を落とせば、良かったのか?と後藤が小首を傾げた。
「うん。一度見たヤツだから大体分かってる」
それより、ねえ。キスを強請れば落ちてくる唇。
後藤の口内はコーヒーの味がした。
だから素直に苦い、と言えば、悪い、と苦笑される。
「なあ、後藤」
「何だ、達海」
「さっさと飯食ってしようぜ」
すぱんとしたもの言いに、後藤は一瞬目を丸くした後そうだな、と微笑った。
そうしてコーヒー味のキスをもう一度交わした。



***
コーヒー苦手です。甘いカフェオレは好き。





シュガー・キャンディ
(三雲×達海/ジャイアントキリング)

何となく、達海の元へ行く時は飴を買って行くのが「お決まり」になっている。
最初は毎回「飴買ってきて」メールが来ていたのだが、ある日を境にそのメールが来なくなった。
それでも買って行ったら喜ばれたので、それ以来言われなくても買って行くのが三雲の中での決まりだ。
棒付き飴を一本。ドクター・ペッパーを一缶。そして自分の烏龍茶を一本。
それが最近のパターンだ。
何となく、無条件にこの人は甘いものが好きなのだと決め付けていたけれど。
実際の所、どうなのだろう。
飴はよく舐めているけれど、例えば、そう、チョコレートを食べている所は余り見ない気がする。
なので聞いてみた。甘いものが好きなんですか、と。
すると、大抵は好きだよ、と応えが返ってきた。
飴はね、口の中寂しいときに丁度いいから好きなの。
そう言って飴玉を舐る姿に、思わず。
今、寂しいんですか。
そう聞いていた。
すると達海はきょとんとしたあと、あの人の悪い笑みを浮かべ、てらてらと光る飴玉にちゅっと音を立てて口付けた。
そうだね、寂しいかも。
ちろりと舌先で飴玉を舐めるその仕草にくらりとしながら、三雲は思わずその棒を奪いとって濡れた唇に喰らい付いていた。



***
ミクタツが熱すぎる自分。





スウィート・スウィート
(持田×達海/ジャイアントキリング)

持田はアルミ箔を剥くのが苦手だ。
あの薄くてカサカサしたものを丁寧に剥くという事が出来ず、いつも破っている。
だからそれに包まれた小さなチョコレートなどを見ると一気に食べる気が失せる。
たとえ目の前で好きな人がどれだけ美味しそうに食べていたとしても。
面倒臭さが一気に表に出て手を伸ばす気が失せてしまう。
「お前食べないの」
「剥くのがめんどくさい」
すると達海は「お前は何でもそれだなあ」と笑ってまた一つチョコレートを剥いた。
そして、
「ほら」
現れたそれを達海の細い指が摘み、こちらに向けて差し出している。
「うまいよ」
「……」
のそっと身を起こしてその指ごとチョコレートを含む。
舌先でチョコレートを絡めとり、ちゅぷ、と指から唇を離せばにーっと笑う達海と目があった。
「うまいだろ」
「うん」
かしっと奥歯で小さな塊を噛み砕きながら持田は頷く。
達海さん、もう一個。
この後、持田が満足するまでそれは続けられた。



***
チョコレート大好きです。が、すぐ肌が荒れるので以下略。





背負うものの重さ
(佐倉&後藤/ジャイアントキリング)

※前中後その後です。


クラブハウスで教えてもらった産院へ向かうと、見覚えのある長身の男を見つけた。
「ああ、山形の」
目の前の相手が誰だか理解した途端、佐倉は慌てて頭を下げていた。
「佐倉です。この度はおめでとうございますっ」
飲み物を買いに来たのだろう、男の手にはお茶のペットボトルが握られている。
「GMの後藤です。ありがとうございます。すみません、わざわざ来ていただいて」
恐縮そうに微笑む後藤に佐倉はいえ、こちらこそと米搗きバッタのように何度も頭を下げた。
「何も考えず飛び出してきてしまいまして……」
「構いませんよ。どうせ暇してましたから」
ははっと後藤が笑う。
通常、今の時期はまだ身内だけで済ませたいだろうに勢いだけで飛び出してきてしまった佐倉を後藤らは暖かく迎え入れてくれた。
「子供、是非見ていってください」
「ありがとうございます」
後藤に案内された先で、佐倉はガラス越しに達海の子供を見た。
時折むにむにとしているだけの小さな命。ベッドの名札には「たつみみゆき」となっていた。
「あ、あの、後藤姓じゃないんですか?」
すると後藤はそうなんです、と苦笑する。
「俺と達海は正式には男同士ですから、今の法律では入籍は出来ないんです。だから必然的に母親である達海の姓になってしまうんですよ」
「そう、ですか。少し、寂しいですね」
そうかもしれません。けれど、と後藤は笑う。
「この子が俺たちの子であることに変わりは無いのですから、構いません」
穏やかな微笑みに、ああ、やはりこの人こそ達海さんに相応しい人だと佐倉は思う。
この人ならば、きっと達海を誰より幸せにしてくれる。
自分は、負けるべくして負けたのだ。そう思えば、少しは気が楽になるというものだ。
そして佐倉は達海の病室も訪れたが、残念ながら達海は爆睡中だった。
後藤が軽く揺さぶったが、うーと唸っただけで起きる気配の無い達海に佐倉はいいです、と笑った。
「また会えるでしょうし、今は休ませて上げてください」
「すみません」
苦笑する後藤に佐倉は頭を下げて部屋を出た。
「また芝でお会いできる日を楽しみにしています。そうお伝え下さい」



***
「こうしちゃいられない!」続編。





そんな日が来るって知ってたよ
(成田×達海/ジャイアントキリング)

※「だって独りは寂しい」関連。


「何か俺、ETUの監督やる事になっちゃった」
真夜中にアルコールの息を吐きながら帰って来た達海のその一言に、成田はやはりな、と溜息を吐いた。
「アリーとカイトは?」
「寝てる。何時だと思ってるんだ」
んー?と首を傾げながら時計を睨む姿は子供っぽくて可愛いが、だからと甘やかす気は無い。
「お休みのキスしてくる」
子供部屋へと忍び込もうとするその襟首を捕まえ、シャワールームへと方向転換させる。
「まずはそのアルコール臭を落として来い」
ふえーいと気の抜けた声を出してシャワールームへと消えた達海を見送って成田は二度目の溜息を吐く。
こうなる事はあの男が迎えに来た時からわかっていた。
いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていた。それが予想より早かっただけだ。
さて。成田は達海の着替えを用意しながら思う。
明日からは引越しの準備で忙しいぞ。海斗と亜梨亜の転校手続きも要る。
どうせ達海は先にさっさと日本へ戻ってしまうだろうから手配は全て成田の仕事だ。
「達海、着替え置いておくからな」
んーと間延びした応えを耳に、成田は今無性に達海にキスしたい、そう思った。



***
本編第一話らへん。

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