あいうえお題
ただの愛の確認作業です (村越×達海/ジャイアントキリング) ※前中後村越編その後です。 「お前さ、離婚したいと思ったことある?」 母親の突然の一言にテレビを見ていた双子もココアを入れていた幸乃も雑誌を捲っていた猛人も一斉に顔を見合わせた。 父親は余りの事に硬直している。 「……いきなり何を言うんだ」 まさか離婚したいのか、とやっとの事で搾り出した声は硬い。 「いーや、これこれ」 爆弾発言を落とした達海は暢気な声で読んでいた新聞の記事を指した。 そこには「増加する熟年離婚」の文字が躍っている。 「流行ってるんだってさ。俺がお前と別れたらどうすっかなー」 どうするも何も後藤が諸手を挙げて待っているに決まっている。 まったく、一生キープしておくってどういうことさ。猛人は内心で母親に突っ込みを入れた。 「俺は絶対に離婚はしないからな。判子は死んだって押さんぞ」 きっぱりと言い切る夫に、達海は何で?と小首を傾げる。 「できるはず無いだろう……俺には、アンタを手放すなんてできない」 「だからなんで?」 続く追求に一瞬村越は言葉を詰まらせたが、酷く言いにくそうに、けれどはっきりと告げた。 「あんたを、愛しているからだ」 達海はきょんと目を丸くした後、そうなの?と反対側にまた首を傾げる。 「ああ、アンタは俺のものだ。どこにもやらない」 言い切る村越に、すると達海はそっか、と微笑んで優しい眼差しで夫である男を見つめた。 「お父さん、カッコイイ!愛してるだって!」 「俺のものだーだって!」 繁と健が興奮気味に騒ぐ。 こそーりとリビングから長男の部屋へと移動した子供たちは輪になって残してきた両親の事を思う。 「でもさー、普通子供たちがいるから、とか言わないかな。ちょっと複雑なんだけど私」 幸乃の最もな意見に猛人は苦笑した。 「でもお母さん相手にそれを言ってもね」 「お母さんは離婚しても行く所あるもんねー」 某GMの笑顔が四人の脳裏に浮かび、だよねーと頷く。 「まあ、お父さんで遊んでるだけだってのはわかるんだけどね」 猛人の言葉に三人が頷く。 「でも、ケンカしてるよりいいよね」 「そうだよね!」 繁と健の言葉に今度は猛人と幸乃がうんうんと頷く。 喧嘩して母親が飛び出して行った後の父親の姿は何度見ても涙を誘う。 二人が仲良くしてくれるのなら多少スリリングな会話も大歓迎だ。 「今頃お父さんとお母さんちゅーしてるのかな」 「僕もお母さんにちゅーしてもらいたい」 「こーら、邪魔しに行っちゃダメ」 様子を見に行こうとする二人の襟首を引っつかんで引き止める幸乃を眺めながら、猛人はホント人騒がせなんだから、と苦笑した。 そんな所も大好きだけどね。 *** 現状が一妻多夫制みたいなもんだよね。(笑)ネタ提供ありがとうございました!! 巷で言う痴話げんかです (村越×達海/ジャイアントキリング) ※前中後村越編その後です。 「もう、知んない!」 達海が村越と喧嘩して飛び出すときの決まり文句が出た。 途端、それまで遠巻きに様子を窺っていた猛人が弟妹に目線で指示を出す。 足音荒く玄関に向かう達海に両側から双子が飛びつき、幸乃が達海の靴を隠す。 「うわっ、お前ら何なの」 おんぶお化けよろしく双子に抱きつかれて身動きができなくなった達海が喚いた。 「行っちゃダメ!!」 「行っちゃダメなの!」 ぶら下がる双子の重みに負けて座り込んだ達海の前に猛人が仁王立ちする。 「お母さん、ケンカしてそのまま出ていくのはイエローカードだよ」 「俺はコンビニにドクペ買いに行くだけなの」 「ドクペなら買い置きしてるよ」 「アイスも切れてるし……」 「お母さんの好きなアイスは常に三種類キープしてます」 尽く出て行く理由を潰していく長男に達海はむーっと唇を尖らせた。 「お母さん」 ずいっと顔を寄せて猛人は言う。 「こんな時間に後藤おじさんのとこ行ったらダメ。泊まる気でしょ」 「いいじゃん。後藤は慣れてるぜ」 「余計にダメ!泊まりはレッドカードね」 達海が周りを見回すと、全員が険しい顔で達海を睨んでいる。 「何だよみんなして」 「問答無用です。お父さん」 猛人が身を起こすとぱっと双子が離れて重石がなくなった。 が、その代わりに背後からひょいと強い力で立たされ、それが村越の手によるものだと知覚するより早く達海の身体はその村越の肩に担ぎ上げられていた。 「うわ、ちょ、茂幸、降ろせ!」 「断る」 父親が母親を寝室に連れて行く姿を見送った四人は顔を見合わせてぐっと親指を立てた。 「捕獲成功!」 「やったね!」 「さ、僕らはお風呂に入ってさっさと寝るよ」 「「「はーい」」」 しげ、たけ、先に入っておいで。双子を先に風呂場に送り出して猛人はやれやれと肩の力を抜いた。 パッカと不思議な体験をしてから、猛人は少しだけ後藤離れが出来てきたように思えていた。 だって向こうの世界の父の姿はかなりショックだったのだ。 やはり実の父の悲しそうな顔は見たくない。 後藤は達海を拒めない。拒まない。 ならばこちらで阻止しなければならない。 それが父の為であり、母のためでもあるのだ。 そういえば、とふと猛人は思う。 あの告白騒動以来、後藤とは会っていない。 今頃何をしているだろうか。 少しだけ、会いたいな。なんて。猛人は小さく笑う。 後藤に会ったら言いたい事があるのだ。 そのままでいいよ。 そのまま、お母さんを好きでいていいよ。 そう言ってあげたい。 だって、と猛人は大きく深呼吸をして優しい人を思う。 だって僕は、そんな後藤おじさんを好きになったんだから。 *** イラッとするくらい後藤は達海一筋。それが後藤クオリティ。(爆)ネタ提供ありがとうございました。 付き合ってるだろ俺ら (後藤×達海/ジャイアントキリング) 「後藤ってさ、今の彼女と付き合ってどれくらいだっけ」 寮の後藤の部屋で二人仲良く並んで座り、一冊の雑誌を読んでいた時に不意に達海がそう言った。 ページを捲っていた後藤の手が一瞬止まる。 ぺらり。 「……半年、かな」 たしかそれぐらいだったはずだ。すると達海はふうん、と聞いておいて気の無い返事で応えとした。 「それがどうかしたのか」 「いんや、お前って酷い男だなーって思って」 「何でだよ」 「だってお前、俺の事好きデショ。なのに女と付き合うって彼女カワイソー。そんで俺もカワイソー」 余りの言われように後藤は何でそうなるんだよ、と雑誌そっちのけで達海を見た。 けれど達海は雑誌の記事を読みながら、だってそうじゃん、と言ってのける。 「お前、俺の事好きだろ」 「違う」 「またまたぁ。認めちまえよ」 「違うって言ってるだろ」 「じゃあ何で?」 そこで初めて達海が視線を上げて後藤を見た。 真っ直ぐな視線に射抜かれてどきりとする。 「なんで俺、こんなにも後藤が気になるの?」 「え?」 「俺がこんなに後藤が気になんのは、後藤が俺の事好きだからだろ?」 どんな理論理屈だ、と思ったが言葉は出てこなかった。 ただ酷く、喉が渇いたと思った。 「なあ、好きって言えよ」 そうして後藤は、半年付き合った彼女と別れる事になった。 *** 2月7日は若ゴトタツの日だと気付いて慌てて書いた。けれど今日うpするわけでもない。またそのパターンか。 掌の愛撫だけでも (後藤×達海/ジャイアントキリング) 「俺、不能だから」 だから後藤と寝たくない。 いつもどおりの声音で、何でもない事の様に告げた達海に、後藤は目を見開いて驚いた。 しかし驚きを通り越してしまえば、後藤にとって後は何でもないことだった。 「でも、俺と触れ合いたいって思ってくれてるんだろ?」 「……うん」 そこで漸く少しだけ申し訳なさを滲ませた達海に、やはり先ほどのポーカーフェイスは張ったりかと苦笑する。 「いいさ、別に」 「何が」 「お前が不能だからって触れ合えないわけじゃない。触れ合う方法はたくさんある」 服を着たままだって一向に構わない。 達海が少しでも気持ちいいと思ってもらえるならそれでいい。安らいでもらえるならそれでいい。 身体を繋げる快楽だけが、全てじゃない。 だから、達海。 「キスしよう、たくさん」 そうしてたくさん抱き合おう。 「後藤はそれでいいの」 「いいさ。お前が満足してくれる事が俺の一番の悦びだからな」 そう言い切る後藤に、達海は変なの、とそっぽを向いた。 「後藤ってば、変なの」 その頬がかすかに朱に染まっていたのを、後藤は見逃さなかった。 *** 突然不能タッツが書きたくなった。(真顔) ときめきという名の (後藤×達海/ジャイアントキリング) ふわりと首元に巻かれたそれに達海は驚いたように後藤を見上げた。 「寒いんだろ」 「寒いけど……」 それは今まで後藤の首に巻かれていた濃緑のマフラーだった。 微かに残っていた後藤の温もりが達海の首元を温める。 それがどこか気恥ずかしくて達海は後藤を睨んだ。 「別に、いらねえのに」 けれど後藤はそうか、とだけ微笑ってマフラーの位置を整えた。 *** 短!(言いたいことはそれだけか) |