雰囲気的な10の御題:名
01.確かなもの (椿×達海/ジャイアントキリング) 好きです、と告白した椿に対して、達海の応えはあっさりしたものだった。 「俺、そういう目に見えないもんって苦手」 俺ピーマン苦手。 そんな乗りで返されて椿は対応に困っているようだった。まあそれもそうか。 まさかそんな返答が返ってくるとは、と表情が語っている。 「ええと、その、」 「見える形で表して欲しいなあ」 「み、見える形、ですか?」 そ、と彼は笑って自らの唇を突いた。 「ちゅーしてくれるとか、さ」 そうしたら信じてやるよ。 *** うちのバキタツはちゅっちゅするのが好きらしいです…(爆) 02.振り向く瞬間 (後藤×達海/ジャイアントキリング) 達海は後藤が振り向く瞬間が好きだ。 と言っても振り返っていれば何でも良いというわけではない。 例えば難しい資料と睨めっこしていて。 そんな後藤に声をかけた瞬間、ぱっとそれが霧散して彼はこちらを見る。 そしてあの柔らかな笑みで言うのだ。「どうした、達海」と。 達海はそれがとても好きだ。 だからそっと近付いて声をかける。 「なあ、ゴトー」 「ん?どうした、達海」 「今日ゴトーんち、行って良い?」 *** うちのゴトタツはタッツの方がゴトさんに惚れてるっぽいですね。 03.君を知ってる (羽田×達海/ジャイアントキリング) その日、羽田が達海を見つけたのは偶然だった。 コンビニから出てきた達海を見つけてしまった羽田は、面倒だと思った。 今のところETUは好調なので文句のつけようが無いのだ。 こういう時は関わらないに限る。 そもそも向こうはこちらの事など知りもしないだろう。 だが。 「あれー羽田じゃん」 予想に反して声をかけられてしまい、立ち止まった。 「今日は一人なんだ?」 「どうして俺を知っている」 問えば彼は事も無げに笑った。 「だってお前の声、すげえ響いてんだもん」 お前の声、好きだな。 屈託無く笑うその姿に昔の達海の笑顔がダブる。 あの頃からコイツは何も変わっちゃいねえ。 それが嬉しいような、悔しいような。 やっぱり関わるんじゃなかった。 「ちっ」 舌打ちして踵を返すと、背後から間の抜けた声が追いかけてくる。 「また明日なー」 うるせえ、と内心で毒づいて足を速める。 あのバカのせいで夕飯買いそびれた。 チクショウ。 *** まだツン全開時の羽田さん。 04.星を数えて (後藤×達海/ジャイアントキリング) 夜の河川敷を二人でぶらぶらと歩いていると、達海が夜空を指して言った。 「あ、北斗七星」 指の先には確かに北斗七星が輝いている。 「よく分かったな」 星なんて全く興味がなさそうなのに。 そう続けると、憮然としたように達海が言った。 「そりゃそれくらい知ってるよ」 そう言ったきり達海は黙り込んでしまう。 その沈黙に、後藤はもしかしてと思う。 「……」 「…たつ」「なあ、後藤」 後藤の言葉を遮って達海がこちらを振り返った。 「俺に星を教えてくれたのはお前だって、覚えてる?」 月明かりに照らされる少しだけ拗ねたような表情に、後藤は微笑った。 「…覚えてるよ」 「じゃあ、いい」 「そうか」 *** ぼんやりぶらぶら歩いてみるのもいいかもね。 05.声が聴こえる (持田×達海/ジャイアントキリング) 初めて逢った時、あなたはブラウン管の中に居た。 カメラに向けて手を振るあなたを見て、その笑顔を間近で見たいと思った。 だからもっともっと上手くなって、あなたに逢いに行こうと思った。 けれどあなたはそこから消えた。 あなたの最後の試合、今でも覚えています。 最期を悟ったあなたの、達観したような表情が今でも忘れられません。 ああ、あなたは死んでしまったのだ。 そう思うと体の真ん中に空洞が出来たようでした。 それからの十年は、ただフットボールに費やしました。 あなたと同じ場所に立てば、あなたを感じられると思ったのです。 「モッチー起きてよ」 むにっと頬を抓られる感触に持田ははっと目を覚ました。 目の前にはさっきまで追い求めていた人のドアップ。 「DVD見終わったから遊びに行こ」 「………達海さん」 「うん?」 「やっぱりちょっとは老けたよね、昔と比べてさ」 持田の上からどきながら何だそりゃ、と達海は笑う。 「一体何の夢見てたんだよ」 「達海さんが好きだーっていう夢見てました」 達海はまた、何だそりゃ、と笑った。 ああ、あなたが生きていてくれて、よかった。 *** 何だこりゃ。(オチ) |