雰囲気的な10の御題:名

06.誓いに代えて
(羽田×達海/ジャイアントキリング)

誓うよ、と彼は笑った。
俺はあのチームを強くしてみせる。
だからもう少しだけ、我慢してくれ。
その無邪気な笑顔に絆されたというわけではない。
筈なのだが。
「羽田ーコンビニ行こうコンビニ」
その達海は現在羽田の背中にタックルをかけてお願い中だ。
「もう一枚見るんじゃねえのかよ」
ぺいっとそれを引き剥がしながら取り出したDVDをケースに仕舞う。
こうも無条件に懐かれるとどうして良いのか分からなくなってくる。
「見るけどドクペ無くなっちゃったから買いに行く。あとアイス」
いつかこの男は糖尿病になると思う。確実に。
「なー羽田ーコンビニー」
羽田の沈黙をどう取ったのか、達海は一層お願いモードを強くする。
その鬱陶しさに羽田が屈するのはいつものパターンだ。
「あーったく!さっさと行くぞゴラ」
「やったー」
さっさと達海の部屋を出ると背後からぺたぺたと着いてくる気配がする。
あの時の約束は未だ果たされていない。
けれど、彼の言ったとおりにもう少しだけ我慢してみる事にする。
「ねえ、ダッツ奢ってよ」
「自分で買え」
この関係が、少しだけ居心地の良いものだと知ってしまったのだから。



***
ちょっぴりデレ期な自分に慣れてきた羽田さん。






07.名もない花を
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

昔、達海が花をくれたことがあった。
と言っても川縁に咲いていた、名も知らぬ花だ。
小さな五枚の花弁が存在を主張していて、愛らしかった。
達海からしてみればちょっとした御巫山戯だったのだろう。
けれど俺は受け取ったそれを捨てず、胸ポケットに挿した。
達海はちょっとだけ目を丸くして、そしてちょっとだけ、照れていた。
そのまま他愛も無い事を話して、その日は別れた。
最後まで胸ポケットに刺さったままだった花の行方など、達海は次の日には忘れているようだった。
けれど、達海。
デスクの引き出しを開ける。
書類や筆記用具の仕舞われたそこに、一枚の栞。
十年経った今でも、俺は忘れられないんだ。
達海。
お前はこの栞を見て、何て言うだろうか?



***
後藤はタッツがくれたもんなら何だっておもひでボックス収納さ!





08.見つけ出して
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

「達海。やっぱりここに居たか」
コンビニで立ち読みしてたら後藤に捕まった。
「珍しく早く起きたと思ったらこんな所で何してんだ。早く行くぞ」
ああ、丁度良いところだったのに…。
でも文句言おうものなら雷が落ちそうな雰囲気だったので大人しく従うことにする。
「なあゴトー」
「何だ」
「何でここだってわかったの」
俺誰にも言わずに出てきたのに。
正確には誰にも出会わずに出てきたのに。
「わかるさ」
何故か後藤は自信満々だ。
え、何、愛の力とか言っちゃうわけ?
だったら恥ずかしいけど嬉しいカモ。
「今日はジャンプの発売日だからな」
………。
「フラグの折れた音がした」
「は?」
ばっきり逝ったよばっきりと。
「達海?」
意味が分からないという顔をする後藤を早足で追い抜く。
「ゴトーのばーか」
何で俺、こいつが好きなんだっけ。



***
私の理想のゴトタツはゴト→→←タツなのですが、実際書いてみるとゴト→←←タツになってしまいます。何故だ。





09.歩んできた道
(村越×達海/ジャイアントキリング)

あなたが去ってからは、耐える日々だった。
あなたが去った事実に耐え、周りからの重圧に耐え、我武者羅に戦った。
それで良いのだと自分に言い聞かせ、信じ込ませてきた。
だが、あなたは再び俺の前に現れた。
漸くあなたの不在に胸が痛まなくなった、その矢先の出来事だった。
あなたを恨んだ。
あなたを憎んだ。
どうして忘れさせてくれないのかと。
あなたという光を知らなければこんなにも苦しむことは無かったのに。
けれど、あなたという光があったこそ今の自分があるのだ。
あなたを排除しようとする思いと、あなたを求める想い。
歪な二律背反は今も悲鳴のような軋みをあげている。
何度問いかけてもあなたは答えをくれはしない。
ならば走り続けるしかないのか。
あなたがそうしたように、最期まで走りきればきっと。
あなたの見た世界が見えてくる。


***
コシタツは愛憎表裏一体を地で行けば良い。






10.名前を呼んで
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

「後藤、まだ?」
「悪い、あと少し」
「……」
「……」
「…ゴトー」
「達海、あと十分で良いから黙っててくれ」
「……」
「……」
「……」
「……」
「はい、十分経った!お仕事終わり!」
「…って五分も経ってないじゃないか」
「だってゴトー、俺腹減った」
「…仕方ないな、達海は」
「仕事終わる?」
「誰かさんがさせてくれないからな」
「わー後藤の奢りで飯だー」
「こら、何で俺の奢りになってんだよ」
「えーダメ?こーせいくん」
「…ぐ…駄目ったら駄目」
「けーち」
「ケチで結構」
「ケチな男はモテないよ」
「俺はお前がいればそれで良いから構わないよ」
「…今すっごい事言った自覚ある?こーせいくん」
「……忘れてくれ」



***
後藤の名前が好きです。

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