雰囲気的な10の御題:海

01.深く青く
(椿×達海/ジャイアントキリング)

海の底へ落ちていくようだ。椿は思う。
深い深い青の底へ落ちていく。
達海猛という人間を知れば知るほどそう思う。
あの人はとても広い心で椿を受け入れてくれる。
彼の海を泳がせてくれる。
けれどそこで自分は息も出来ずただもがくだけで。
時折彼自身に助けられて漸くそこに存在している。
まずは息ができるようになりたかった。
そうすれば少しは彼の中を見回すことができるだろう。
この海はきっと何よりも美しいはずだから。



***
椿で雰囲気文は難しい。





02.空に溶ける
(村越×達海/ジャイアントキリング)

最近、達海はベランダでよく物事を考えている。
風が気持ちいいのだと笑っていた。
だが、村越はそんな達海の姿が好きではない。
じっと空を見上げる姿はまるで、飛び立つ直前の鳥のようで。
村越は好きになれない。
「村越?」
飛び立とうとする鳥を捕らえるように抱き寄せると、達海は少し驚いた声をあげた。
マンションの高い位置とは言え、村越が仮にも外でこんな行動に出るとは思ってもみなかったのだろう。
「達海さん…」
見えない羽根を毟るようにその細い背をかき抱けば、どうした、村越、と柔らかな声がする。
まるでお前にこの翼は千切れないと言われているようで、村越は抱く腕に一層の力を込めた。



***
コシタツは村越が報われない感じが萌える。(爆)





03.足跡を残して
(羽田×達海/ジャイアントキリング)

達海猛は傲慢な人間だと羽田は思う。
こんなに人の心を踏み荒らしておいて平然としている。
羽田の心臓は達海の足跡で一杯だ。
新雪に足跡をつけるように彼は面白おかしく踏み入ってくる。
それは許しがたい暴挙だ。
許しがたい暴挙の筈だった。
それなのに。
「羽田、キスしていい?」
艶やかに笑う姿に逆らえない。
こちらばかり踏み荒らされるのは卑怯だとばかりに押し倒しても達海の笑みは消えない。
「…何考えてやがる」
「何だと思う?」
問いかけても、返ってくる応えは煙に巻くようなものばかりで。
達海の丁度心臓の辺りを撫でると、ふるりとその身体が震える。
「…届いているか?」
そのまっさらな心臓に、この手は届いているのか?
「…届いているさ」
見上げてくる瞳はどこまでも深く。
俺の心臓には、お前の手形がくっきり付いているよと達海は笑う。
それならば良い。
俺が踏み荒らされただけ、お前の心臓に俺の手跡が付いているのなら。
それならば、イーブンだ。



***
「足跡」って意外と難しいお題だと思いました…。





04.風は知っている
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

俺は小さな小さな風になっていた。
風になった俺はそよそよと辺りを漂いながら移動する。
俺に意志はあって無いようなものだった。
ただ流れに身を任せて空を眺めていた。
そんな時、後藤を見つけた。
俺は初めて明確な意思を持った。
後藤、何してるんだろ。
クラブハウスに入ろうとした後藤の後を追いかける。
後藤が辿り付いたのは、達海の部屋の前だった。
「達海、入るぞ」
けれどそこに俺はいない。
「達海?いないのか…」
落胆したような声音。
思い切って俺はその口の中に飛び込んでみた。
すると後藤の中はとても暖かくて、居心地が良かった。
ずっとここに居たいな、と思った。
けれどとくんとくんと鳴る後藤の心臓の音が、まるで達海、達海と呼んでいるようで。
後藤と一つになるのはとても嬉しいことだけれど。
ああ、けれどやっぱり人間がいい。
そんな夢を見た。



***
後藤さんの達海を呼ぶ声が好きです。





05.祈りの歌
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

目が覚めたら達海が消えていませんように。
後藤は達海が傍らで眠りに就くたびそう祈って自分も眠りに就く。
達海猛という存在は、後藤にとって何よりも比重の大きな存在であった。
けれど、彼自身は羽根の様に軽い生き方をしていた。
風の吹くまま気の向くままにふらふらと人と人の間をすり抜けていく。
その姿に魅せられた人間がどれだけいるかを考えもせずに。
そうして後藤の元へ戻ってきては寄り添うようにして眠りに就く。
彼から直接的な愛の言葉を聴いたことは無い。
後藤が幾らそれを囁こうと、彼は興味なさげに頷くだけで。
だからいつも後藤は不安だった。
いつか彼がここへ帰ってくることは無くなるのではないか。
いつか目が覚めたら彼はもう隣にはいないのではないか。
そう不安になる。
だから後藤は今夜も祈らずにはいられない。
「ごとう、寒ぃよ…」
擦り寄ってくる身体を抱き寄せて祈る。
どうかこの腕の中の温もりがいつまでも在り続けますように。



***
感情を美味く表に出せないタッツとそれを誤解してぐるぐるしてるゴトさん。

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