雰囲気的な10の御題:海

06.傍にいる代わり
(成田×達海/ジャイアントキリング)

いいよ、と達海は笑った。
「成さんが俺を欲しいって言うならあげる」
その代わり、と達海は笑う。
「成さんもココを頂戴よ」
ココ、と達海の五つの指先が成田の心臓の上に当てられる。
「そうしたら、ずっと傍にいてあげる」
めり、と指が食い込む音がした。



***
どこからが夢で、どこまでが妄想なのか。





07.潮騒を追って
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

季節はずれの浜辺で後藤は達海の背中を見つめていた。
達海は何も言わず海の音に耳を傾けている。
本当は、話さなくてはならないことがたくさんあるはずなのだけれど。
それらは一向に言葉にならず、波の音に攫われていく。
達海。
声にならない呼びかけが聴こえたように達海が後藤を振り返った。
薄い唇がふるりと震え、やがて決心したように開かれた。

「俺、イングランドへ行くよ」

ああ、世界が終わる。



***
そして無機質な世界が始まる。





08.岬の先
(持田×達海/ジャイアントキリング)

岬の先で待ってるよ。
達海さんはそう言って姿を消した。
探した。家中を探した。
けれど達海さんは何処にもいなくて。
家の外へ出ると一瞬にして砂浜に出た。
柔らかい砂に足を取られながら海を見渡す。
青いばかりで何も分からなくて、とにかく岬へ走った。
岬の一番先端に辿り付いても達海さんの手がかりは無かった。
けれど達海さんは岬の先で待っていると言った。
ならばこの先に達海さんはいるはずだ。
だったら話は早い。
俺は迷わずそこから飛び降りた。
海に激突する瞬間、水面からにょきりと二本の腕が生えて俺を海の中へと引きずり込んだ。
痛みは無い。冷たさも無い。
ただ、心地よかった。
目の前に達海さんの顔があった。
達海さんは笑っていた。
そして俺は知る。
ああ、この海はあなただ。
俺はあなたと一つになれるんですね。
あなたもそれを望んでいるんですね。
あああ、ああ。
それはなんていう幸福。



***
誰か私にまともなモチタツの書き方を教えてください。(爆)





09.終わったあとの
(持田×達海/ジャイアントキリング)

今日俺は死にました。今日は俺の命日です。
だから祝ってよ達海さん。
そう言ったら達海さんは妙な顔をして手にしていた缶を差し出した。
ドクター・ペッパーのロゴが入ったそれは達海さんの好物だ。
お祝い、と渡されてそれを受け取ると、よく冷えていた。
どうやら人の冷蔵庫を勝手に使っていたらしい。まあいいけど。
そして達海さんはもう一缶取り出すと、しゅこっと音を立ててプルタブを引いた。
「持田君の引退祝いということで、かんぱーい」
かこんと音を立てて合わせられた缶。
ぐびぐび喉を鳴らして飲む達海さんにつられてプルタブを引く。
思い切ってぐいっと飲んでみたら余りの味に思わず噎せた。
「げほっ、ちょ、ナニコレ…!」
「えーうまいのにー」
こんなのが好きなんて、やっぱり達海さんは変わってる。
変わってるよ、達海さんは。
選手生命が終わった俺を、それでも好きだって言う達海さん。
だから好きなのかな、俺もこの人を。
ただ、この飲み物だけは好きになれないけれど。



***
お祝いと称した葬儀。





10.「おかえりなさい。」
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

十年ぶりに日本に降り立った達海はきょろきょろと辺りを見回していた。
日本人だらけだ、と笑う姿に、達海の不在の期間の長さを感じさせられる。
そして達海は傍らを歩いていた後藤が辛うじて聴こえる声で小さく呟いた。
ただいま、と。
堪えきれなくなって後藤は達海の手を取っていた。
達海は驚いたようだったが、前を行く有里が気付いていないことを確かめると握り返してきた。
「おかえり、達海」
達海と負けず劣らずの小さな声で呟くと、それでも聴こえたらしく達海は小さく頷いた。
有里が振り向くまでの数秒間、二人の手はきつく繋がれていた。



***
知り合いの前じゃなければ人目を憚らない二人。

戻る