雰囲気的な10の御題:静

06.風のにおい
(持田×達海/ジャイアントキリング)

持田は東京の風が好きではない。
どこか埃っぽくて目に優しくない感じが嫌いだ。
だからいつか現役を退いたら田舎に引っ込むのも良いと思っている。
ただ、都会の利便性に慣れてしまっている自分が耐えられるかという問題もあるが。
田舎で尚且つ不便じゃない所なんてないかなあなんて。
矛盾した思いを抱きつつこの東京で生きている。
そんな持田は唯一空気が清浄化される場所を知っている。
達海猛の傍らだ。
別に彼が空気を綺麗にしてるとかそんなわけは無い。
持田だってそんな事は分かっているのだ。
けれど彼の傍にいるだけでこの空気の悪さを感じなくなる。
彼の周りだけ不純物が無いような気にすらなってくるのだ。
これが恋は盲目ってヤツか、と持田は苦笑する。
まさか自分がこんな思いを抱くなんて思いもよらなかった。
さすがは達海さんだ。
いつか二人で畑を耕して暮らしませんか?なんて。
半ば本気で言ってみたら、彼は「俺の脚じゃ無理だから株で儲けてよ」なんて返してきた。
持田は遠慮なく爆笑した。
達海さん、マジウケる。
あーやっぱこの人と生きていきたい。



***
二人とも足が不安だから農業は辛いと思う。(爆)





07.歩道橋
(深作×達海/ジャイアントキリング)

深作と達海は同じポジションを争う立場でありながら仲は良かった。
そう、良かったのだ。達海の才能が殊更に開花するまでは。
けれど今ではお互いの間には深い溝が出来てしまっていた。
それは深作が一方的に作ったものだったが、達海にはそれを飛び越えるだけの力量が無かった。
しかし、その日は偶々コンビニで出会って、寮に二人で並んで帰る流れになった。
こんな風に深作と歩くのは久々だった。
最初こそぎこちなかったものの、次第に他愛も無い会話を交わせるようになった。
「なあ、達海」
歩道橋の真ん中を過ぎた辺りで深作は徐に立ち止まって達海を見た。
「うん?」
「悪かったな、なんか」
「何が」
「なんていうか、お前の所為じゃねえのにお前に当たってた。だから、ごめんな」
ぎゅっと胸を締め付けられるようだった。
震えそうに鳴る声を抑えながら「ばーか」と達海は笑う。
「そんなの気にしてないよ」
だが達海は知っている。
深作が仲間に吐き捨てた達海への不満。その叫びを。
けれどこうして謝ってくれている深作の思いもきっと本物だ。
どちらも深作の本当の偽らざる気持ちなのだろう。
だからこそ、辛い。
「お前とまたこうして話せてよかったよ」
そう笑う深作に達海は叫びだしたい気持ちを抑えて笑う。
「何だよフカさん。柄にもないこと言ってんじゃん」
「何だとぅ?」
「あはは、ごめんごめん」
謝らなければならないのはこちらの方なのに。
大好きだったよ、フカさん。
だけど、ごめん。
俺、イングランドへ行くよ。
憎んで良いから。早く俺の事なんて忘れて。
「フカさんのそういう所、好きだよ」



***
フカタツに萌える!!…って需要あるのかコレ。(爆)





08.街路樹の下
(羽田×達海/ジャイアントキリング)

「ねえ羽田、これって桜?」
歩きながら街路樹を眺めていた達海が問う。
「桜だ。春にはこの通り一帯が桜色に染まる」
羽田の答えに達海はふうんと呟いて羽田を見た。
「春になったら一緒に花見しよう」
な?と小首を傾げる姿を可愛いと思ってしまうのは惚れた弱味か。
羽田は仕方ないと溜め息を一つ吐いた。
「春になるたび付き合ってやるよ」



***
たまにはツンゼロなデレ期羽田を達海にプレゼント(笑)





09.遠い朝焼け
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

達海は明け方に目を覚ます。
恐らく空が朝焼けに染まっている頃、徐に目を覚ます。
目を覚ました達海が何を思っているかは後藤には分からない。
彼はいつも身を起こし、暫くの間じっとしている。
何か考え込んでいるのかもしれないし、ただぼうっとしているだけかもしれない。
または、もしかしたら後藤の寝顔を見てたりするのかもしれない。
未だに寝た振りを決め込んでいる後藤にはそれらの真実は分からなかった。
けれどその五分とも十分とも取れる沈黙は後藤にとって苦痛ではなかった。
何故なら、それが終わればまた達海は後藤の腕の中に戻ってくるからだ。
だから後藤はただその時を待つ。
しかし、今朝は様子が違っていた。
もそりと動く達海は明らかにベッドの外へ出ようとしていた。
咄嗟に手が達海の腕を捕らえていた。
顔を上げると、驚いた表情の達海と眼が合う。
「何処へ行くんだ、達海」
途端、達海は何故か泣きそうな表情で微笑った。



***
静04の後藤視点。何も知らされていなかった場合を書いてみた。





10.自鳴琴(オルゴール)
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

オルゴールが鳴っている。
どこかで聞いたことがあるようなその旋律は、しかしはっきりとは思い出せない。
ずっと聞いていたくなるようなそれは、やがて音を止めた。
ああ、螺子を巻いてやらなければ。
そう思って手を伸ばしたらぺちりと叩かれた。
予想外の反撃に目をぱちりと開くと、そこには胡乱げな顔をした達海がいた。
「さっきから何してんの、ゴトー」
「…オルゴールが」
「はあ?」
ぼんやりとした思考がクリアになってく。
そうか、アレは夢か。
そう思ってふとあれ?と小首を傾げる。
「…お前今、歌ってたか?」
オルゴールの音は、今思えば達海の声のように聞こえたのだ。
すると達海はぱちくりと大きく瞬きをして、何だよ、とそっぽを向いた。
「熟睡してると思ったのに」



***
螺子を探してタッツの身体をごそごそ探っていたかと思われる。

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