雰囲気的な10の御題:優
01.目を閉じれば (椿×達海/ジャイアントキリング) 目を閉じれば唇に少しかさついた感触が当たった。 ちゅっと可愛らしい音を立てるそれは次第に可愛らしくないものへと変わっていく。 ぬるりと唇を割って入ってくる舌は熱く、それが達海を興奮させる。 「…ん…ふ…」 未だぎこちなさを残したそれを絡めとり、軽く吸う。 やがて離れていく唇を惜しみながら濡れた唇を舌でなぞった。 「監督って、甘い味がします」 とろんとした目で椿はそう言う。 恐らく先ほどまで飲んでいたドクター・ペッパーの味だろう。 「あー俺のカラダ、砂糖で出来てるから」 しかし巫山戯てそう言うと、椿は「だからなんですね」と納得してしまった。 「もっと食べても良いですか?」 椿の欲に潤んだ瞳で迫られて達海はにっと笑う。 「どうぞ召し上がれ」 *** 椿は噛み癖があると思う。 02.空のあお (深作×達海/ジャイアントキリング) 二人の間に横たわっている溝が、自分が勝手に作っているものだと深作は自覚していた。 そして、常に達海がどうにかしてこちら側へ来ようとしている事も知っていた。 けれどプロとしての矜持や妬みが邪魔をして上手く接することが出来ずにいた。 ガキみたいだ、と深作自身自覚していた。 あーあと内心で溜息をつきながら寮を出る。 コンビニで立ち読みでもしてこようと思ったのだ。 だが、外に出て深作は思わず立ち止まってしまっていた。 空が、余りにもあおかったから。 雲ひとつ無い青空は、何処か達海を思い起こさせた。 途端、深作の中で何かが氷解していくのを感じた。 アイツはこんな俺でも受け入れようとしてくれている。 フカさん、と声が聞こえるようだった。 今なら素直に謝れる気がした。 そうだ、謝ろう。 謝って、もう一度。 もう一度、あの笑顔をこの手に。 *** 静07のちょっと前くらい。深作の年齢が気になります。 03.見えないいたみを (成田×達海/ジャイアントキリング) 「…痛むのか」 「今はそれほどでもないよ」 「……」 「大丈夫、まだ走れるよ」 「…敵の心配などするか」 「えー。一時期は一緒に戦った仲間なのにぃー。成さんひどぉい」 「それとこれとは話が別だ。あと気持ち悪い喋り方するな」 「…じゃあ、敵である俺とこうしてるのも、話が別?」 「…別だ」 「そう。別なんだ。じゃあ良いよね」 「何がだ」 「今日は目一杯成さんに甘えちゃっても」 「…今日だけだ」 「じゃあ成さんドクペ飲みたい」 「そういう甘えは却下だ」 「えー。じゃあ飲ませて?」 「……」 「成さん今何考えたの?ね、ね」 「うるさい」 「成さんのえっちー」 *** 暗いんだか明るいんだかわけわからん話に。 04.記憶の中 (深作×達海/ジャイアントキリング) 深作が覚えている達海は、良く笑う人間だった。 へらへらとしている、とも言えるそれを深作は好きだった。 達海の笑顔の全てが真実ではないと知っていたから。 彼の笑顔の裏に隠された真摯な眼差しを、深作は知っている。 誰よりもサッカーを、チームを愛している心を知っている。 だから達海のイングランド移籍の話は俄かには信じられなかった。 けれどどれだけ頭が否定しても達海が去ることは覆らなくて。 ほんの数日前、達海と自分の間に横たわっていた溝が埋まったと思ったばかりだったのに。 ぶっきらぼうに謝った深作に、彼は笑っていたのに。 フカさんのそういう所、好きだよ、と。 彼は笑っていたのに。 その笑顔の下に決意を秘めていたというのだろうか。 俺の事は忘れてくれと達海は言った。 忘れろだと?冗談を言うな。 忘れられるわけが無いだろう。 歩道橋の上で儚げに笑ったお前の笑顔を。 俺はきっと、一生忘れることは無い。 *** 静07その後みたいな。 05.抱きしめるように (持田×達海/ジャイアントキリング) 達海さんが俺を呼ぶ声が好きだ。 モッチー、と優しく呼ぶあの声が好きだ。 だけど達海さんがその声音で呼ぶのは俺だけじゃない。 椿君を初めとするETUの面子。 あの人のあの声が自分以外を呼ぶなんてそれだけで笑えてくる。 余りにももどかしくて、思わず本音が出た。 「達海さん、監督辞めて俺の専属コーチになってよ」 そうしたらぽかりと頭を叩かれた。痛くないけど。 「バカお前。俺が椿たちを可愛がるのは俺が監督であいつらが選手だからだ」 個人的に仲良くしてる選手なんてお前くらいなもんだ、と肩を竦める達海さん。 それ、信じて良い?信じて良いの? すると達海さんは「バカだなあモッチーは」とあの俺の好きな声音で言った。 「本当にバカ。頭悪い」 扱き下ろされているのに、まるで優しく抱きしめられているようなその声音に俺は満足する。 「はい、俺バカなんで何度でも言ってください」 「はいはい、モッチーが大好きだよ」 それだけで満たされる俺は、やっぱりバカなんだろう。 *** たまには弱気な持田でも。(いつもは薄気味悪いのばかりなので)← |