雰囲気的な10の御題:優

06.冬のひなた
(黒田×達海/ジャイアントキリング)

用具室を改造して作られた達海の部屋は狭い。
狭い上にDVDが散乱していて雑然としている。
だというのに冬になってストーブを入れたものだから、最早足の踏み場も無い状態だ。
それでもこの部屋を出て行こうとしないのは彼なりに何かしらのポリシーがあるのだと。
そう黒田は思うことにした。
でなければやってられない。
この男と付き合うなどという事は。
黒田自身、何故そんな事になったのか未だに良くわからない。
杉江には「お前それ遊ばれてんじゃないの」と言われた。
確かにそうかもしれない。
けれど。
「クロ、寒いからぎゅってして」
「ストーブあるだろ!」
「足りないからぎゅってして」
「〜〜〜!」
この人にこんな目で見上げられて、逆らえる者がいるのだろうか。
この世に神がいるのなら聞いてみたい。
「くーろー」
何故俺が選ばれてしまったのですか。



***
クロタツなのかタツクロなのか。





07.てのひら
(杉江×達海/ジャイアントキリング)

「杉江、手、広げてみろよ」
言われるがままに手を広げて差し出すと、達海の掌が乗せられた。
「あ、やっぱお前の方がでかいわ」
「そりゃそうスよ。俺の方がガタイデカイんスから」
ていうか、と杉江は達海の手を握りこむ。
「アンタの手は細すぎるんですよ」
碌なモン食ってないでしょう、と咎めるように言えばあの独特の笑い方で返される。
「ドクペとタマゴサンドの組み合わせは至高だぜ」
「アンタの味覚が破壊されてることは知ってます」
「ひっど!」

「っていうかお前ら!」

割って入った声に杉江と達海は振り返る。
そこには顔を真っ赤にした黒田が立っていた。
「ここ何処だと思ってんだ!!」
「え、ピッチ?」
「分かってんなら控えろよそういうことはよ!!」
「休憩中なんだからいいじゃん。あ、もしかして嫉妬?俺に?スギに?両方?」
「嫉妬なんざするか!」
「お前も混ざるか?」
「お前もかスギ!!」
ていうか手を放せお前らー!!
黒田の叫びが響く中、達海はけらけらと笑っていた。
その手は柔らかく繋がれたままだった。



***
スギクロタッツの3Pが読みたい。(真顔)





08.いとしい人の夢
(深作×達海/ジャイアントキリング)

夢を見た。
あの歩道橋の上で、達海が笑っている夢を見た。
何でお前笑ってるんだよ。
何で笑っていられるんだよ。
そう怒鳴るように問いかければ、達海は少しだけ困ったように、けれど笑っていた。
何であんな言い方して出て行かなきゃ無からなかったんだ。
あんな、態と憎まれるような物言いをして。
俺達のためだとでも言いたいのか。
ふざけんな。
俺達のためだと思うなら何で残ってくれなかった。
ごめんねフカさん。達海は微笑う。
俺、フカさんの事本当に好きだったよ。
でも俺、行くね。
達海が背を向ける。
待てよ、達海、俺は、俺は!
けれど達海の姿はあっという間に見えなくなってしまった。
俺は一人、歩道橋の上で立ち竦むしかない。
バカ達海。
俺だって、お前の事が好きだったよ。



***
優04その後みたいな。深作がどんどん偽者になっていく。あ、最初からか。←





09.雨を見上げて
(羽田×達海/ジャイアントキリング)

コンビニからの帰り道、達海はふとそらを見上げた。
頬に水滴を感じた気がしたのだが、どうやらそれは気のせいではなかったようだ。
出かけに後藤が「雨が降るらしいから早く帰って来い」なんて言っていたのを今更になって思い出す。
そんな事を考えながら空を見上げていると、あっという間に雨が降り出した。
「あー」
「あーじゃねえよ」
不意にかけられた声に振り返ると、そこには傘を差した羽田が立っていた。
「何アホヅラして空見てんだ」
「アホヅラって…酷い」
「事実だろうが。ほら」
入れよ、と傘を差し出されて達海は目を丸くする。
「入れてくれるの」
「アンタが風邪引くと周りが困る」
「羽田は?羽田は困る?」
ぐっと言葉を詰まらせる羽田に、達海は「ねえ」と追い討ちをかける。
「〜〜〜困るに決まってんだろ!」
すると達海は満足したように笑った。
「んじゃ、気をつける」



***
相合傘で帰ってゴトさんに驚かれれば良い。





10.「歌って。」
(後藤×達海/ジャイアントキリング)

腹が減った、と言う達海のために後藤はキッチンに立っていた。
後藤は長い間一人暮らしをしているだけあって、それなりに料理は出来た。
思わず鼻歌なんて歌ってみたりして上機嫌で料理を盛り付けていると、妙な顔をした達海が立っていた。
「達海、出来たぞ」
簡単な炒め物と白いご飯をよそいながらそう言うと、達海はうん、と頷いて椅子に座った。
やっぱり妙な顔をしたままだった。
「どうした?嫌いなものでもあったか?」
達海の好き嫌いは粗方把握しているつもりだったが。
そう思いながら問うと、大丈夫、と頷いて達海はもしゃもしゃと食べ始めた。
それから暫くして。
後藤が洗い物を終えてリビングに戻ると、ソファに座った達海がこちらを振り返った。
「ね、後藤。さっきの歌、もっぺん歌って」
「歌?」
「料理作りながら歌ってたじゃん」
そういえば、と思いながら達海の隣に座る。
「良いけど、下手だぞ」
「んーん。後藤の声、好きだからいい」
だから、ねえ。
「歌って」



***
ゴトさんが歌なんて歌ったらアタイ腰砕けて死ぬかもしれない。(爆)

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