「もうどっか行っちゃえ!」 (歩夢/はじめの一歩) 「あ、そうだ、ねえ、お母さん、『ぜんそく』ってどんな病気なの?」 居間で弟の滋郎と一緒になって母親に絵本を読んでもらっている時、不意に歩夢が言った。 父親がちらりと視線を寄越したが、すぐに読んでいた雑誌に戻される。関わる気は無いらしい。 「なーに?それ」 滋郎も初めて聞く言葉だからか、絵本を読むのを中断されても怒った様子も無く同じように聞いてきた。 「喘息っていうのはねえ…」 一歩は己の知識の及ぶ範囲内で簡単に説明して見せた。 すると、歩夢は「そうなんだ」と唇を尖らせた。 「喘息がどうしたの?」 「あのね、お友だちがね、ぜんそくだからってお薬を持ってきてたの。セキが出たらしゅこしゅこって喉にやるやつ。でもあゆ、ぜんそくがどんな病気か知らなかったの。だからその子に聞いたらね、何だと思う?って聞くから思ったまま言ったら大笑いされちゃったの。それで教えてっていってるのに教えてくれないの」 「あゆちゃんは何だと思ったの?」 「笑わない?」 「うん、笑わないから言ってごらん」 「全速力で走るとセキが出る病気」 ぶっと噴出す音に三人の視線が向かう。 視線の先では顔を雑誌で隠した父親。 「…お父さん、笑った」 歩夢がじと目で言うと、父親は「いや」と平静の声を返して立ち上がる。 しかし依然としてその表情は雑誌でガードされていて見えない。 まるで何か用事を思い出したかのように部屋を出て行こうとする父親の背に、歩夢の批難の声が投げかけられた。 「お父さん笑ったでしょ!ていうか笑ってるでしょ?!もう!お父さんのばかぁ!!」 *** 実話。小さい頃からアホでスミマセン。(爆) |