「あなたにとっては迷惑な気持ちかもしれませんが」
(シャア×アムロ/Gダム)
君にとっては迷惑かもしれないが。
男はそう前置いて告げた。
「君が好きだ」
そしてこうも言った。
「君を愛してる」
その時の男の顔は至って真面目だったので、手にしていたファイルでそのツラを叩いてやった。
「痛いではないかアムロ」
「痛いように叩いたんだよ。何言ってるんだあなたは」
「私は本気だよ」
「そうじゃない」
「アムロ、」
言い募ろうとする男を言葉で止める。
「あなたが僕を愛してるなんて、今更じゃないか」
吃驚したような目をして。可笑しいじゃないか。
「アムロ」
やっと気付いたの。
「漸く口にしたね。もう、引き返せないよ」
***
たまにはアムロの方が先に気づいてる話をと思ったのだが今の私には無理でした。がくり。
「勝手に自己完結してんじゃねぇよ」
(ブライト、アムロ/Gパラレル)
「で、何でお前が当たり前のように居座っているんだ」
会社帰りのブライトを待っていたのは妻と子供たちの暖かな出迎えと、元同僚の間延びした声だった。
「いや、ちょっと、その」
「ひとまずお食事にしませんか」
言いよどむアムロに、妻は夕飯をテーブルに並べながらころころと笑う。どうやら事情は既に聞いているらしかった。
「シャアが、俺とブライトがあやしいって」
食後暫くして、子供たちを部屋に追いやるとアムロはぽつりと物騒な事を言い出した。
「はあ?」
間の抜けた声を上げると、妻は可笑しそうに声を上げて笑った。
「最近アムロがうちに通ってたでしょう?それをシャアさんが勘違いなさったのよ」
確かにここ数日、アムロはこの家を訪れていた。
しかしそれは勿論シャアの考えとは全く違い、寧ろブライトではなく妻の方に用があったのだが。
アムロは妻に料理を習いに来ていたのだ。
今まで全く料理などしてこなかったアムロは、シャアと暮らしてからも当然作ることは無く、シャアの手料理に甘えていた。
しかしアムロなりに思うところがあったのか、数日前にブライト経由で妻に料理教室を頼んできたのだった。
「シャアにはその事は言ったのか」
「…言ってない」
「言えば話は早いだろうが」
しかしアムロは子供のように唇を尖らせて。
「……恥ずかしいじゃんか」
とのたまった。
なので。
「え、ちょ、ブライト?!」
アムロの首根っこを掴み、玄関からぺいっと外へ放り出す。ついでに靴と上着も放り捨てて、地面にぺたんと座り込んだままぽかんと見上げているアムロを冷たく見下ろした。
「とっとと帰れ。シャアには俺から電話しておいてやる」
今回だけだぞ。付け加えてばたんと玄関扉を閉める。ついでに鍵もかける。
え、ちょっと、ブライト、待ってよ、ねえ!
外からそんな声が聞こえたが無視して妻の差し出した携帯電話を手に取った。
***
アムロをぺいっと放り出すブライトが書きたかった。
「あー…愛されてるって感じ」
(シャア×アムロ/Gパラレル)
ブライトに家を放り出された。
仕方ないので一緒に放り出された靴を履き、上着を羽織って道路へ出た。
ああ、なんか惨めだ。
どうしようか。
このままあのマンションに帰るのも何となく気が引ける。
のたりのたりと夜道を歩いていると、すぐそこの路肩に見慣れた車が止まった。
助手席のドアが開いて、乗りなさいって命令口調。
自然とむすっとした表情になってしまうのも仕方ないことだ。
それでも素直に助手席に乗り込むと、車は静かに走り出した。
沈黙。
「……ブライトから聞いた」
「…うん」
「何故早くそう言ってくれなかったのだね」
それに、料理なら私が教えてあげたのに。
「………」
「アムロ」
「………あなたの驚く顔が見たかった」
あと、その後に、喜んでくれたらって。
「…アムロ…」
車が見慣れたマンションの駐車場へと滑り込む。
車が停止すると同時に腕が伸びてきて抱きしめられた。
「すまなかった。私の早とちりだ」
「…うん」
そして、その腕がシャツ一枚のみに包まれていることに気付く。
上着を着ることすら忘れて。
「シャアが、悪い」
でも。
「俺も、ごめん」
冷たい腕が、愛しかった。
***
「勝手に自己完結してんじゃねえよ」の続き。
「…もしかしてものすごく怒ってたり…する?」
(ブライト、アムロ/SRW)
実年齢と全くそぐわない童顔をにこにこと満面の笑みに模らせ、彼は言った。
「ブライト、俺、NTとしての能力をもっと活用することにしたんだ」
「はあ?」
突然何を言い出すんだこの男は。今更言うまでも無く活用しまくってるではないか。
「そうじゃないよ。MSに乗ってる時とかそういうんじゃなくて、普段の生活で」
見てて。そう視線を走らせた先には、アストナージと何やら話し込んでいるクワトロ・バジーナ大尉。
「ぐわっ?!」
が、突然雷に打たれたようにびくりとして倒れた。
「クワトロ大尉ー?!」
アストナージが慌ててしゃがみ込むが倒れ伏したそれはぴくりともしない。
完全に気絶しているようだ。
「あたたたたー?!」
しかし偶々近くを通りがかったジュドーまでも頭を抱えて座り込んでしまった。
「あ、ジュドー巻き込んじゃった。まだまだ練習しなきゃ」
にこにこにこ。
「ア、アムロ…もしかしてお前、怒ってる、のか?」
怒りとは対極の満面の笑み。
しかしこの無意味なほどに満面の笑みは。
オールドタイプである自分にも分かるほどその笑顔の背負っているプレッシャーは。
「え?何か言った?ブライト?」
「あーいや、仕事に支障を来さない程度にな」
視線を逸らしてそういうのがやっとだった。
***
アムロ、毒電波習得。
「ひとめぼれだったんですよ」
(カミーユ/Z)
ひかりが、まいおりてきた。
その人は、淡い光に縁取られていて、真皓いつばさでゆっくりと降りてきた。
僕の掌にそっと降り立った彼の身体からぱっと光が散る。
そして真っ直ぐに僕を見て、
「ありがとう」
そう微笑んだ。
***
かの有名なZシャアムシーンでカミーユ。
カミーユの目こそ修正が必yゲフン。
「何かあったらすぐに呼べ!いいな?」
(カミーユ、アムロ/SRW)
今日も今日とて赤い人がウザイ。
「アムロ、君を愛している」
「俺は愛してません」
「つれないな。まあそんな所も愛しいのだが」
肩を抱くな腰を引き寄せるな。
「これから整備がありますので」
「それは奇遇だ。私もあちらに用があるのだよ」
「先ほどカーゴブロックから出てきましたよね?」
「見ていたのかい?君の熱い視線に気付けなかったなんて私もまだまだだな」
「熱くありません全く熱くありません。偶々、偶然、視界に入っただけです」
身体を密着させるな顔を近づけるな顔を近づけるなっつーの!
「修正ーーー!!!」
どばきぃっと派手な音を立てて密着していた赤い人が横に吹っ飛んだ。
変わりに視界一杯にカミーユのアップ。
「大丈夫ですかアムロさん!!」
「あ、うん、大丈夫だけど…」
ちらりと倒れたクワトロを見ると、微かに痙攣していて気持ち悪い。
まあいいか。
「嫌な予感がしたんで探してたんですよ」
「そうか、ありがとう、カミーユ」
「いえ!何かあったらいつでも呼んで下さいね!」
「ありがとう。そうだ、これからνの整備に行くんだけどZの方は大丈夫かい?」
「はい、あ、でも一箇所見て欲しい所が…」
二人は仲良く並んでカーゴブロックへと向かう。
屍と貸したクワトロは、そのまま数時間の間、放置される事となった。
***
アムロ祭「9月2日の花」の続き。
「…もういい。もう終わりにしよう」
(シャア×アムロ/Gパラレル)
「…もういいだろう?アムロ…」
男は疲れたように溜息を吐く。
「もう、終わりにしようではないか…」
しかし彼は頑として首を縦に振らない。
「いやだっ…まだ、終わりになんてしたくない…!」
「アムロ、お願いだ。これ以上私を困らせないでくれ…哀しくなる」
「僕だって悲しいさ!こんな形で終われるもんか!!」
しかし男にも譲れない一線があった。
「これ以上なにを望むというのだアムロ…もう、十分だろう?」
「嫌だ!」
彼は身を裂かれんばかりの悲痛な声で訴えた。
「まだバスルームをハロ仕様にしていない!!」
駄々を捏ねる子供のようなそれに男は再度溜息を吐いた。
「私は喋るバスルームは嫌だよ…」
「じゃあせめてシャワーヘッドを…」
「アムロ、お願いだからこれ以上ハロ仕様の家具を増やすのはやめてくれ…」
***
ハロマニア・アムロ再び。
「オレがいなくて、さみしかった?」
(シャア×アムロ/Gパラレル)
朝、目が覚めると一人だった。
眠るまでは確かにこの腕の中に暖かな温もりがあったはずなのだが。
床に脱ぎ散らかしたままの衣類を拾い上げ、手早く身支度を調える。
(散らかった衣類も一人分しかなかった)
寝室を出てリビングへと向かう。しかしそこに人の気配はない。
キッチン。気配はある。けれど姿が見えない。
くつくつと声はせずとも笑う気配がして漸く気配の出所に気付いた。
「アムロ」
テーブルの下でにまにまと膝を抱えていた青年の姿に男は呆れたような安堵したような声で彼を呼んだ。
「何時からそこに居たのだ?」
すると彼は可笑しそうに膝を抱えて身体を前後に揺らした。
「今々だよ。あなたが起きてきた気配がしたから」
そしてのそりとテーブルの下から這い出てくる。
椅子を器用に避けて出てくるその様はまるで猫のようでしなやかだった。
「目が覚めたら君が居なかった」
「寂しかった?」
伸ばしてくる腕を引き寄せ、勿論、とその手の甲にキスを落とした。
***
復帰第一弾がコレか自分。(爆)
「あいつを泣かせるような事は絶対しない」
(ブライト、シャア/G)
「約束してくれるか。あいつを泣かせる様なことはしないと」
「ベッドの上は除外されるのなら」
「おい」
「冗談だ。…ああ、約束する。アムロを泣かせる様なことは絶対にしない」
「万一の際は問答無用で返してもらうからな」
「努力しよう」
くっと男が喉で笑い、手にしていたグラスを差し出した。
もう一人の男も唇に笑みを刷き、グラスを差し出す。
グラスの合わさる甲高い音が室内に響いた。
***
嫁入り前夜の嫁の父親と婿。
何も言うな。逃げます。
「…誓うか?」
(シャア×アムロ/CCA?)
その瞬間、モニターの向こうとこちら、双方に沈黙が落ちた。
「あなたがアクシズを落とすのをやめるって誓うなら、ネオ・ジオンに行ってもいいよ」
νと一緒にね。
「…ばっ!!」
まず立ち直ったのは傍らで固まっていたブライトだった。
「ばっ、おまっ、なっ!」
否、立ち直ったとは言いがたく、ただ意味不明の叫び声をあげているだけだ。
回線の向こう側では仮にもネオ・ジオン総帥であるはずの男が無様に口を中途半端に開けてアムロを凝視していた。
やがてぱくり、と一度金魚のように口を開閉すると、漸く彼の名を紡ぎ出した。
『……アムロ…本気かね』
「冗談の方が良かった?」
からかい混じりに返せば、速攻で「いやそんな事はないとも勿論」と返される。
そして暫し逡巡した後、男は頼りなげに問う。
『…誓うか?』
誓いを要求したのはこちらなのに。
彼はそう思いながら笑って答えた。
「誓うよ」
だから、さあ。
「あなたも僕に誓いなよ、シャア」
***
こうして地球にアクシズは落ちませんでしためでたしめでたし。(視線逸らし)
戻る