君がいない夏





天下無敵号の一室でセルジュはベッドの上でごろごろとしていた。

何も、やる気がしなかった。

仲間達は突如海上に現れた星の塔への行きかたを探っているのだが、自分は先のフェイト戦での怪我がまだ癒えないと言って参加しようとはしなかった。
(…ウソじゃ、ない…)
確かに怪我は治っている。
だが、それは表面上の事で……
(……自分の身体を殺し、その死体を見るのは、辛い)
元来、何であれ命を奪う事を嫌っていたセルジュは実際の所、かなり精神的に参っていたのだ。
「……っく……」
悲鳴を上げる心を包み込むようにぎゅっと身体を丸めて小さくなっていると、少し乱暴な音を立ててドアがノックされた。
「!」
セルジュが慌てて飛び起きると、返事も待たずにその扉は開かれる。
「小僧、入るぞ」
「どうしたの?カーシュ」
カーシュはセルジュの言葉に片眉をぴくりと動かすと、セルジュの座るベッドサイドに座った。
「カーシ…んっ?!」
突然口付けられ、セルジュは目を丸くしてどアップになったカーシュの顔を見詰める。
「…ふ……カーシュ…?」
カーシュはそのまま無言で今度はセルジュの頬に唇を落とし、そのまま首筋まで唇を滑らしていく。
「ねえ…カーシュ?どうしたの?」
もう一度同じ質問をすると、カーシュは首筋から顔を上げ、じっとセルジュの瞳を覗き込んで来る。
「?」
セルジュは訳が分からないといった様子で首を傾げると、カーシュは少し、ふて腐れた様な顔をする。
「お前、大丈夫か?」
「は?」
セルジュは更に訳が分からなくなり顔を顰める。だが、カーシュはトン、と右の拳でセルジュの胸を小突く。
「ここ。痛えんだろ」
心が、悲鳴、上げてんだろ。
「……なんで……」
どきりとしてカーシュを見ると、カーシュは苦笑した。
「……知ってるからさ」
「え?」
「………身近な存在の死が、どれだけ心に影響を与えるのかを」
カーシュは自嘲気味に笑う。
ダリオの事を言っているのか。
「お前の場合は言っちまえば特種だが、「近い存在」に代わりはねえだろ」
「………」
俯くセルジュを抱きしめ、カーシュはその背をポンと優しく叩いてやる。
まるで、泣いた子をあやす様に。
「泣けばいいじゃねえか」
「……どうして?」

だって、彼は敵だっだじゃないか。

敵を倒した事、それを喜びこそすれ、
何で哀しまなくてはならないのか。
ましてや、涙など。

どうして流せるのか。

倒す為にみんなで頑張ってきたのに。

「ヤツを許せる奴はそうそういねえ。だけどよ、ヤツの為に涙を流すお前に憤りを感じる奴なんかいねえさ」
泣く事は罪ではないと抱きしめるカーシュの背にセルジュはゆっくり腕を回していく。
「本当に…?」
「ああ、本当だ」
優しく髪を撫でられ、セルジュは今まで抑え込んでいた感情が溢れ出すのを止める事は出来なかった。
「う、ぅうっ……」
カーシュは自分の胸に顔を埋め、声を殺して泣くセルジュの背をそっと撫でてやる。
「っふ…う…ぅ……」

彼は、敵だった。
それでも、近しい存在だと思わずにはいられなかった。
同じ肉体だからか。
想いが、伝わってきて。
彼が、どれだけこの世界を愛していたか。
彼が、どれだけこの世界を憎んでいたか。
想いが、伝わってきて。

彼は、敵だった。

「ごめんなさい…」

君の屍を踏み台に。
君の愛したこの世界を。
君の憎んだこの世界を。

きっと守るから。

この痛みを踏み台に。


必ず。






(了)
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わっけわかんねえ〜!書いた俺自身が言ってどうするよってカンジですがマジ、わけわかんねえ!何?これ。カーセル?Dセルセル?は?何?話の内容もあちゃらぱーですし。(何だあちゃらぱーって…)これもあれですな。フロッピーを整頓してたら出てきたんで書き上げたというか…やっぱ日にち置くと駄目だね。当時何を書きたかったかよく覚えて無いから話がわけわからん。しかも短いし。あらあら。
(2000/10/14/高槻桂)

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