MAGICAL DREAMERS





天下無敵号の食堂はいつも以上の盛り上がりを見せていた。
いつも入り浸っている面々に加え、女子供、果てには人外の者も居る。
漸く星の塔への行き方が見つかり、その塔へ乗り込む為に連日の疲れを癒そうと言うわけで今日は特に何も行動を起こさなかった。そんな中、いつの間にそんな話になったのか、日が暮れる頃には既にどんちゃん騒ぎだったのだ。

「セルジュ〜、何か軽い食べ物貰ってきて〜」
既に出来上っているレナにセルジュは小さな溜息を吐きながら席を立った。
「はいはい。でも余り飲んじゃ駄目だからね?僕ら未成年なんだから…」
「だ〜いじょうぶよ!これくらいお母さんに付き合って良く飲んでるんだから」
そう言ってケラケラと笑うレナを見て、セルジュはここにラディウスが居ない事に感謝しながらもう一つ溜息を吐いた。

「うわぁ?!」
セルジュがカウンターへと行くと、ぐいっと誰かに肩を抱かれた。
「おう、セー公、飲んでるか?」
肩を抱いてきた人物はこの天下無敵号船長のファルガだった。ファルガは開いた方の手に持っているバーボンを煽ると、肩に回した腕でセルジュの頭をわしわしと撫でて豪快に笑う。
「う、うん、飲んでるよ…ジュースだけど」
セルジュがそう答えるとファルガは何が可笑しいのか更に笑う。
「ちぃっとばか酒飲んだって構やしねえだろうが」
ファルガはカウンター内へ行くと、「おら、飲め」とボトルを引っ張り出して来る。
「え?!いいよ〜、余りお酒強くないんだよ、僕」
「だ〜いじょうぶだって、この酒はここで一番弱いヤツだからよ。ま、いっぺん飲んでみな」
どんっとグラスを置かれ、それに酒が注がれる。
「これ、なんの酒?綺麗……」
淡い蒼緑をしたその液体をセルジュは目を丸くして見つめる。
「マブーレだけで採れる果実の酒だ。ま、飲んでみな」
言われるままにそっとグラスを取り、口をつける。
「…あ……美味しい」
口当たりの良い果実の甘みとさらりとした喉越しに、セルジュはもう少しだけ、と口に含む。
「だろ?ゼルベスが唯一飲めたヤツだからな」
「あ……」
セルジュははっとしてファルガを見ると、ファルガは何でもない様に笑って、くっと顎でグラスを指す。
飲めと言っているのだろう。
「あ、うん」
セルジュはこくりとグラスの中の液体を飲み下す。
ふんわりとしたアルコールの感触が不思議な気分にさせた。
「……セー公、今夜来るか?」
「えっ……」
にやっと笑うファルガにセルジュは顔を赤くして俯く。
「ん?どうした、もう酔ったか?」
わざとらしく言うファルガを上目遣いに睨むが、効果を得られない様である。
寧ろ逆効果である事にセルジュは気付いていない。
「んな目ぇしてるとここで襲うぞ」
耳元に顔を寄せたかと思うと、ぼそりとそう囁かれる。
「〜〜〜〜〜!」
セルジュが更に顔を赤くして俯くと、背後からぐいっと何者かに抱き寄せられた。
「小僧に手ぇだすんじゃねえ!!」
「はえ?!」
頭上で騒ぐ人物は、その紅の眼を吊り上げてファルガを睨んでいる。
「か、カーシュ?」
「てめぇ全く油断も隙もあったもんじゃねえ!!おら、行くぞ!」
「え、い、行くって、え?」
ぐいぐいと引っ張られ、セルジュは取り敢えずグラスをカウンターに戻すとカーシュとファルガの顔を見比べる。
「え?え?え?」
ファルガはそんな二人を見てくつくつと笑う。
「セー公、後でな」
「え?あ、う、うん」
咄嗟に返事をしてしまうと、それがまたカーシュの勘に触わったらしい。
「オッサンは黙ってろ!」
セルジュは訳の分からないままカーシュに引っ張られていった。





海が船の明かりを受けてきらめいていた。
ファルガはそれを自室で眺めながら葉巻を咥える。

ギシリ

月の光だけが降り注ぐ中、僅かに身を捩ると椅子がいやに大きく鳴る。
「……静かになったな」
先程までの騒ぎは何処へやら。
静まり返った船内には波の音が微かに響いている。
皆が各々の部屋へ戻っていってからまだ僅かな時間しか経っていないというのに。

コン、コン…

躊躇いがちに叩かれる扉にファルガは視線を転ずる。
「おう、開いてるぜ」
扉に向かってそう声を掛けると、ノックと同じく躊躇いがちにその扉が開かれる。
「ファルガ……あの……」
おどおどとして入って来たのは思った通りの人物だった。
「セー公か」
部屋の中へ入って扉を閉めるセルジュに「鍵、掛けろよ」と声を掛ける。
「あ、うん……ぁ?」
セルジュは言われた通りカタリと錠をかけ、そこで漸く何故鍵を掛けるのかに気付いて小さな声を上げる。
そのつもりで来たのだろうに。
ファルガはくつくつと喉を鳴らして低く笑う。
「……笑わないでよね」
セルジュがつんと唇を尖らせて拗ねたような素振りをする。ファルガはその仕種にも笑みを禁じ得ない。
ファルガは椅子の肘置きに葉巻を押し付けて揉み消す。
ヤニの焦げるいやな匂いが鼻を突いた。
てこてことやってきたセルジュにポンと自分の腿を叩いて「ここに座れ」という意思表示をする。
セルジュは躊躇ったものの、もう一度ポンと腿を叩くとおずおずとファルガの上に跨って座る。
ファルガは潰れた葉巻をテーブルの上に放ると、セルジュのベルトを外して床に捨てる。
かちゃん、とベルトの金具が音を立てる頃にはファルガの手はセルジュの服の合わせの中に滑り込んでその肌を露わにしていく。
きゅっとその胸の突起を摘まむとぴくりと身体が跳ねた。指の腹でそれを押し潰せば押し殺した声が微かに漏れる。
声を出さぬ様にと下唇を噛んだセルジュは、ファルガの指が角度を変えてそれを擦る度恥ずかしそうに俯いていく。
「声、出してもいいんだぜ?」
ファルガの言葉に首を左右に振るセルジュ。ファルガは月の光に反射して一層白く見えるその肌に顔を寄せると、ぷっつりと赤くなったその突起に舌を這わせる。
「あっ……」
びくんと体が揺れ、甲高い声がとうとう漏れる。自分のその声に赤くなったセルジュにファルガはにやりと笑うと、ちゅっと音を立てて吸う。
「はっ……く…」
舌を絡めて歯を立てればその唇から漏れる息は感覚を狭め、吐き出される息と共に掠れた声が混じる。
「ぁ……はっ……駄目だ、よ…っ…窓…締め……ん…」
開け放たれたそこからは波の音と月の光が降り注いでいる。
「俺は別にかまやしねえんだかなあ?」
腹に唇を滑らすと、セルジュはくすぐったいのか、少し笑った。
「でも…月が、見てる……」
「見せ付けてやれ」
ファルガは手をセルジュの脚の付け根に滑らすと、既に勃ち上がりかけているそれをやんわりと握り込んだ。
「あっ……ん、ん……」
指を絡め、何度も扱き上げるとすぐにそれは固さを増し、ピンクの先端からはぷつりぷつりと透明の液体を滲み出させる。
「ぁ…っふ……」
手が上下するのに合わせてセルジュの腰が動き、ファルガはにっと笑う。
「大分覚えてきたじゃねえか。ん?」
セルジュは顔を耳まで赤くするとぷるぷると首を左右に振る。
「や…そういう事、言わないでよ…」
くつくつと笑いながら手の動きを早めるとセルジュはぐっと身を捩る。
「あっはあ…も…でちゃ……」
「まだだ」
ファルガは意地悪く笑うとセルジュの性器の根本をぎゅっと掴み、射精させない様にする。
「?!やっ…いやだ…っ…」
どうして、と眼で訴えてくるセルジュにファルガは笑う。
「お前、カーシュを、どう思う?」
「カー、シュ?」
突然の質問に、快楽に溺れかけていたセルジュの思考がハッキリしてくる。
「どうって…仲間だよ?」
「ほ〜う?」
あっさりと返ってきた答えにファルガは苦笑する。
望みのない青年への哀れみと、この少年を手に入れられた幸運な自分へ。
「どうしたの?突然……」
「いや?別に?」
ファルガは彼の性器を締め付けていた指を緩めると、きゅうっとそれを擦り上げる。
「ひゃあっ…」
突然再開された行為にセルジュはびくりと跳ね、そのまま達してしまう。
勢いよく放出された精液はファルガの手と胸元を濡らした。
「っは…あ……ごめ……」
もはや先程の不可解な質問の事はどうでも良くなったらしい。
「腰、浮かせな」
セルジュは息も整わぬままそれに従うと、ファルガの膝から腰を浮かせて突き出す。
ファルガはセルジュの精液に塗れた指を後部へ押し当て、ぐっと差し入れる。
「は……あぅ……」
セルジュがゆっくりと息を吐き、ファルガの指は精液という潤滑剤を得てずぶずぶと入り込んでいく。
「あ、あ………」
くにっと埋められた指が動き、セルジュはファルガの肩に手を置いて自分の体を支えた。
指は奥へ奥へと進んで行くと、ある一点を探し出す。
「や…ぁ、もっと、奥……」
言われた通りファルガはずぐっと指を更に押し込んで指を掻き回すとセルジュがびくんと跳ね、嬌声が上がる。
「あっ、そ、そこっ…んっ……」
指をもう一本増やしてみると、その肉はまるで待ち焦がれていたようにファルガの指に絡み付く。
「あっ、あっ、も…ファルガ、の…挿れて、よ…」
ぐっぐっと指を抜き差しし、肉襞を擦るとセルジュがそう強請ってくる。
ファルガは指を手荒に引き抜いて自分のズボンのジッパーを下げる。
「セー公…解るな?」
セルジュはこくんと頷くとファルガの膝から降りてその現れた太くててらてらとしたそれに手を添え、舌をおずおずと絡める。
「ん……む……」
口に入るか入らないかという程の質量をしたそれを何とか咥え込むと、口内だけでなく、肺の中までその青臭さが広がり、息苦しくなる。
それでもセルジュは血管の浮き出ているそれに舌を絡め、吸い上げる。
ぷちゅっと唾液と先走りの液が混ざる音がやけに大きく聞えてセルジュは耳を塞ぎたくなる。
「ふ…んん………」
裏筋を下から上へと舐め上げ、もう一度咥え込むと、ポンと頭を叩かれる。
セルジュはファルガの性器から口を離すとふらりと立ち上った。
「どうする?ベッドへ行くか?」
「……ここでいいよ」
セルジュは足元に重なった自分の服を脱ぎ捨て、くるりと身体を反転させるとファルガがその腰を掴む。
ファルガに背を向けたセルジュはその手に引かれるまま腰をファルガの上へと落としていく。
「…ぁっ……」
くちっと後部とファルガの性器が辺り、セルジュは全身に電流が走ったようにぞくりとするのが解った。
「息、詰めるなよ」
ぐっと押し入って来た質量に、指で慣らしたそこはひくひくと喜びに蠢いてそれを迎え入れる。
「んっ…」
先端を埋めた所で一旦止めると、セルジュが深く息を吐いた。ファルガはその息を吐いた瞬間、セルジュの腰を引いて一気に奥まで突き入れる。
「あああっ!!」
セルジュの背が弓形に撓り、足の先がピンと突っ張る。
「っあっぅ……っく……ファルガのバカぁ…」
セルジュは涙声でそう言うときゅうっとファルガの性器を締め付ける。それに一瞬達しそうになってしまったファルガはいつもの様に低く笑うとその撓った背筋に口付けを落とす。
「ん………動いて、いいよね?」
そう言うとセルジュは返事も聞かずに腰を動かし始めた。ファルガはその腰にてを当てるとぐっと腰を叩き付けるようにそこへ押し当ててやる。
「ひっ、あ、あ、は、あんっ……」
髪を振り乱しながらセルジュはファルガを貪る様に腰を振る。その粘膜はファルガの性器を逃さぬように絡み付き、溶かしてしまうのではないかと思うほど熱かった。
「んっ、あっ…あぁっ」
腰を下ろす度にぐちゅっと粘膜の絡み合う音が響き、その音さえもセルジュをその行為へと溺れさせていく。
「あ、は、ぁっあぁっ…!」
びくんと一層激しく跳ねると、セルジュは二度目の絶頂を迎える。するとファルガも二、三度強く打ちつけるとセルジュの体内に熱を放った。
「んっ……」
体内に勢いよく注ぎ込まれるその感覚にセルジュはぶるりと震える。
脱力した身体を何とか支えて息を整えていると、くいっとファルガに引き寄せられてその胸に倒れ込む。
「ファ、ルガ?」
繋がったまま身体を動かした為にまたぞくりとして、それが恥ずかしくなったセルジュは腰に回っているファルガの手に自分の手を添える。
「どうするんだ?部屋へ戻るか?」
耳元で囁かれて身を竦めると、またくつくつと喉の奥で笑っているのが聞えてセルジュはからかわれている様な気がして唇を尖らせた。
「…ここで寝る…ぁっ」
腰に回されていたファルガの手がセルジュの中心に再び指を滑らしたのだ。
「もう一回するか?」
笑いの混じった声がそう囁き、セルジュは「エロジジイ」とその手をぴしゃりと叩いた。



結局その後も幾度となく行為を重ねる羽目となり、眠りに就いたのは日の光が射し込むようになってからであった。

「………」
目を覚ましたセルジュはむくりと起き上がると辺りを見回す。
ざわめきを取り戻しつつある船内の音に暫し耳を傾け、隣りで眠るファルガを見下ろす。
ちゃんとそこに居たファルガの姿に安心し、セルジュは再びシーツに顔を埋めた。
何やら船内が騒がしいような気もしたが、眠気には勝てずにセルジュは目を閉じた。

数十秒後、船長室には二つの寝息が微かに響いていた。
そして、ある部屋の一室ではちょっとした騒ぎが起きていた。
朝、セルジュの姿が無いのに気付いたカーシュがアクスを携えて船長室に乗り込もうとしているのを何人かで抑え込んでいたのである。
が、既に夢の世界の住人となったセルジュには預かり知らぬ事だった。







(END)
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…カーシュとファルガって口調似てるよね……書いてみて気付いたっす。いや〜まだスランプ抜けきってないっぽいな〜。なんか文章がおかしい所結構あるしな〜…ま、どっちにしろ高槻の文才なんてこの程度なんだけど(爆)ええっと、庵様、かなり遅くなってしまって本当にスミマセン(>_<)1800HIT、ありがとうございました!
(2000/07/25/高槻桂)

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