Pure in heart honey




最初の印象は生意気な一年。
先輩を先輩とも思わぬ態度。
小馬鹿にしたように見上げられる視線。
こいつだけは好感を持てない。
そう思っていた。



「十分間の休憩!」
手塚の声に一同はラケットを下ろし、コートの端へと歩いていく。
荒井は水飲み場に向かい、先客の姿に足を止めた。
「オイ、越前」
声に先客の少年は顔を上げる。その表情は苦々しく顰められていたが、決してそれが自分の出現の所為ではないと荒井は知っていた。
「そんなに不味いのか?乾先輩特製野菜汁」
タオルで未だ口元を押さえているリョーマ。それをからかうように言うと、彼はむっとして眉をひそめる。
「アレは劇薬の域っすね。荒井先輩も飲んでみれば?」
「いーや、結構」
ひょいっと肩を竦め、荒井は蛇口をひねる。日差しに温められた管の中の水はすでに湯と化しており、しばらく出しつづけるとよく冷えた水がその蛇口から溢れ出した。
荒井はそれを口にし、体の渇きを満たす。
「……何だよ」
先ほどからじっと視線を送ってくるリョーマに顔を上げ、きゅっと蛇口を閉めた。
「他の一年が「荒井先輩は怖い」って言ってたんすよね」
「ああ?」
「変なの」
ぽすんと荒井に抱きつき、慌てる荒井を見上げる。
「こんなに可愛いのに」
可愛いのはてめえだ!!
荒井はそう叫びたい衝動を抑え、「馬鹿だろ、テメエ」と吐き捨てる。
腰に廻された無駄のない細腕。
じっと見上げてくる曇りの無いアーモンド型の眼。
その小生意気な視線に見え隠れする幼さ。
「あ、あんま見んじゃねえよ」
視線を逸らし、苛立った様に言うと「ほら、照れた」と笑う。
「そーゆートコも好き」
「ばっ…!」
リョーマの言葉に荒井の顔は一瞬にして赤くなる。
自他共に認めるように、荒井は気が短い。更に言うなら理性にも自信が無い。
現在、襲いたい指数急上昇中。
そんな荒井の心境を知ってか知らずかリョーマは「でもさ、」と言葉を続ける。
「オレ、荒井先輩が怖がられててヨカッタって思った。だって、荒井先輩が人気者だったらオレ、毎日嫉妬してなきゃいけないじゃん」
少し拗ねたようにそっぽを向くその目元は仄かに朱を帯び、愛しさを掻き立てた。
荒井はリョーマの腰を引き寄せ、唇を合わせた。
「ん……」
二度、三度と角度を変えて貪ると、やがてリョーマの膝がカタカタと震え出した。
「…可愛いのはテメエの方だろが」
「…ぁ……」
崩れ落ちそうになるリョーマの体を支え、その額にも軽く口付けてやる。
「……っ……」
びくっと腕の中の体は震え、熱の篭った眼差しで荒井を睨み上げてきた。
「荒井先輩の馬鹿」
つんっと唇を尖らせ荒井から体を離すと、蛇口を捻って顔の火照りを冷ますためにぱしゃぱしゃと顔を洗う。
「お、時間だぜ」
そうこうしている内に集合のホイッスルが鳴ってしまい、二人は慌ててコートへ向かった。


「荒井先輩」
手塚の指示に従い、他の二年と共にCコートへ向かう荒井の腕を取って引き止めると、リョーマは振り返った荒井の頬に口付けた。
「なんっ…!?」
唇の柔らかい感触の残る頬を押さえ、真っ赤になって口をぱくぱくさせている荒井と、目撃してしまった光景を現実として受け入れられず石化する部員達。
荒井の反応に満足したらしく、リョーマはにっと笑う。
「オレから主導権奪おうなんて思わない方が良いッスよ」
リョーマは小さく笑いながら、悠々とAコートへと向かった。






(以下次号/嘘)
* ―*◇*―*
かなりの別人っぷりとへぼさに後悔の嵐。アンタら誰。
最近忙しくてネタだけ書いてずーっとほっぽってあったのでなんか話筋が微妙に変わってる感じが…。何か書き忘れてる気がします。(爆)
この荒井リョと共に林&池田×リョーマや金田リョもネタだけ書いてほっぽってあるのでそれもさっさと仕上げなければ…と思いつつ亜久津リョとか伴リョ(え?)とかも書きたいなぁ…などとほざいております。マイナー道を究めるために頑張ります。(笑)
究極のマイナーリョ受って何でしょうね〜?泉&布川×リョーマも良い線行ってると思いますが登場コマ数3コマの伏見リョとか。顔すらろくに出てませんね。ハイ失格。(爆)
佐々部リョとかどうでしょうか。しかも佐々部父の方。(爆)カチロー父とか。いい加減にしましょう高槻。でも佐々部リョに少なからずもときめいた高槻はもう駄目です。
(2001/10/04/高槻桂)

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