Study&Sweetheart



聖ルドルフのテニスコートではいつものようにボールを打つ音が響いていた。
「おや?」
話し途中、観月が声を上げた。赤澤もそれにつられて彼の視線を追い、軽く目を見開く。
「越前リョーマ?!」
フェンスの外からコートを見詰めているのは紛れもなく青学のルーキー、越前リョーマだった。
「よぉ、敵情視察か?」
フェンスに近寄り、赤澤が声を掛けるがリョーマは視線の一点に定めたまま口を開こうとしない。
「?」
二人がリョーマの視線を追う様にそちらへ目をやると、そこには裕太と金田のラリーを続ける姿があった。
「裕太か金田に用があるのか?」
「別に……」
先程のように無視されることはなかったが、それでも心此所に在らずと言った様子だ。
すると、視線に気付いたのか金田がこちらへと顔を向けた。
「リョーマ君!?」
金田は驚いた声を上げると、律義にも相手をしていた裕太に断りを入れてから駆け寄って来る。
「今日、部活は?」
「明日からテストだから無しになった。国語、教えて欲しいんだけど」
「うん、良いよ」
「ちょっと待った」
今まで事の成り行きを見守っていた観月が割って入る。
「越前君、何故金田なんです?青学にも教えてくれる人はいるでしょう。第一、ルドルフでなら僕に聞くべきじゃないのですか?」
さらりと自分の方が金田より格が上なのだと言う観月に、リョーマは面倒臭そうな視線で見やった。
「オレが金田さんが良いって言ってるんだから放っといてよ」
「だから何で金田なんだよ」
赤澤までもが割って入り、リョーマは大きな溜息を吐く。
「オレが金田さんを好きなの。金田さんと一緒にいたくてわざわざルドルフまで来てるんだから邪魔しないでよね」
だから放っときやがれというオーラを振りまくリョーマに、観月と赤澤は信じられない思いで金田を振り返る。
だが、彼は照れたように苦笑し、それが事実だと物語っていた。
「いつからなんです?」
「え、その…大会が終わってすぐ…」
観月の底知れぬ笑顔で問い詰められ、金田は引き攣った笑いでそう答える。
「わざわざ越前君の方から尋ねて来てくれて…その…」
次第に照れくさそうに、それでいて幸せそうに頭を掻きはじめた金田に観月の不快度はさらに高まった。
「越前君!」
観月はリョーマに向き直るとがしゃんと二人を阻むフェンスをつかむ。
「金田のどこが良いんです?!容姿なら裕太所か赤澤なんかでも勝っているでしょう!」
「オイ」
「第一、総合面では僕が一番勝っているじゃないですか!」
なんか呼ばわりされた赤澤が声を上げるが所詮「なんか」扱いなので発言は無視され、観月は重ねて己が優れていると高らかに宣言する。
「あのね、観月さん」
だが、リョーマは何度か目の大きなため息をつくと観月をじっと見上げた。
「例えば世界一カッコも頭良くて優しい人がオレを好きだって言ってきても、オレには意味が無いの。誰が何と言おうとオレが好きになったのは金田さんなんだから」
そんなことも分からないなんて、まだまだだね。
リョーマはそう小さく笑った。
「そんなことより、もう部活、終わりでしょ?」
そう言ってリョーマはくるりとフェンスに背を向ける。そして肩越しに振り返り、金田と目が合うとふと視線を和らげ、幼く笑った。
「部屋で待ってるから。早く来ないと怒るよ」
「あ、う、うん」
赤面して何度も頷く金田のその反応に満足したのか、リョーマはくすくすと笑みを零しながら寮へと立ち去った。

そして残された金田と言えば。
「…んっふふふふふ……金田、僕に勝てるまで越前君の元へは行かせませんよ……」
「えっ、ちょっ……」
抵抗虚しく問答無用でコート内へ引っ張られていってしまう金田。
「金田さん!今の内に…!」
結局、哀れんだ裕太が観月を抑えてくれている隙に逃げ出した金田。
「あっ!待ちなさい!」
「不二、ごめん!」
金田は裕太への礼もそこそこに、部屋で待っているリョーマの元へと猛ダッシュする羽目と相成った。


さて、王子様のご機嫌は如何でしょう?




(END?)
* ―*◇*―*
あー、何だか金田が途中から分からなくなってきました。(笑)
コミックスが今手元に無いので余計偽者って感じですが平にお許しを!!(爆)
しかも最後の方、七割方寝ながらキー打ってました。最近、寝不足の所為か考え込むと眠くなるので大変です。(笑)
さ、次は伴リョか亜久津リョか橘リョだvv(多っ!)
(2001/10/20/高槻桂)

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