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 授業も終わり、そろそろ部活が始まる時間帯。
 青春学園の校門前に二人の男が立っていた。
「青春学園…何度聞いても恥かしい名前だぜ。なあ、樺地」
 泣き黒子がチャームポイントの男は、背後に控えたのっそりとした男にそう声を掛ける。
「ウス」
 何を考えてるのかサッパリの無表情で、樺地と呼ばれた男は短く同意する。
「聞くより実際に見た方が確実だろ。なあ、樺地」
「ウス」
 泣き黒子の男…跡部景吾はにやりと笑うと、悠々と敵陣へと乗り込んでいった。



「レギュラーは十分間の休憩!!」
 手塚の号令にレギュラー陣は練習を止め、ぞろぞろと思い思いの場所へ移動していく。
「あっち〜……」
「……」
 ぱたぱたと手扇子で扇ぐ桃城の隣りでリョーマはボトルから水分を補給する。
 先程飲まされた、乾特製汁の味がまだ口内に残っているような感じがしてならない。

「あれ、休憩中かよ」

 背後から上がった声に二人は振り返る。
「てめえは…跡部と樺地!」
「よぉ」
 フェンス越しに現れた二人に桃城が指を差して声を上げた。
 桃城の声に他のメンバーたちが視線を寄越す。そして跡部、樺地の姿を認めると、どこか空気が張り詰めたような張りを持った。
「で?偵察にでも来たわけ?」
 リョーマがボトルをベンチに戻し、気だるげに帽子を脱ぐ。
「まあな。お前だろ?一年レギュラーってのは」
「さぁね。自分で調べれば?」
 まだ機嫌が悪いらしく、リョーマは尊大に言い放つ。
「成る程。確かに…」
 跡部が何か言おうとした時、その背後で何処か陰気な音楽が流れた。

 ♪チャッチャ〜ララ、チャッチャ〜ララ〜、チャチャチャ〜チャチャ、チャッチャ〜ァラ…

「あ?出ろ、樺地」
「ウス」
 樺地が鞄から携帯電話を取り出し、通話ボタンを押して跡部に手渡す。
(何故ガン◎ーラ?!)
 桃城たちから数メートルは慣れた所に座っていた大石は、聞えて来た意外な着メロに、所謂「ボーン」状態になったが所詮は昔の歌。周りの者はそれを知る事無いため特に反応はない。
「……ええ、はい…じゃ」
 跡部はぷつっと電話を切ると、そのストラップに指を引っかけてくるくると回し出した。
「悪ぃ悪ぃ。ま、とにかく偵察させてもらうから」
 するとひゅんひゅんと人差し指で回していた携帯電話がすっぽ抜け、かしゃんと音を立てて地に落ちる。
「あ、またやっちまった。拾え、樺地」
「ウス」
 だが跡部はそれに視線をくべただけで、背後に付き従えた樺地に拾わせる。
「けっ、下僕かよ」
 桃城はそう皮肉ってからかうが、隣に座っていたリョーマが立ち上がったので視線をそちらへ移した。
「越前?」
 リョーマはその猫のような目を驚いた様に見開き、じっと二人を、いや、樺地を見詰めていた。
「知り合いか?樺地」
 そこで始めて跡部は樺地を振り返ったが、樺地は無言で跡部に視線を返す。
 その視線で、知り合いでは無いという色を読み取った跡部はリョーマにも問い質そうと視線を戻す。
「お?」
 だが、当のリョーマはその場に居らず、すたすたとフェンスの扉を開けて跡部たちのすぐ傍までやって来る。
 何をする気だとリョーマの行動を見守っていると、樺地の手から先程の携帯電話を引っ手繰り、ぺいっと足元に放り投げる。
「は?」
「拾わないわけ?」
 リョーマの突拍子もない行動に跡部や桃城だけでなく、遠巻きに傍観を決め込んでいた他のメンバーたちも目を丸くする。
 跡部はリョーマを見返しながら、喧嘩を売ってるんだろうか、つーかお前が落したんだからお前が拾えよ。などと思いながらも、リョーマの瞳には何故か期待に満ち満ちていたので仕方なく樺地に声を掛ける。ていうか、そういう自分も樺地に拾わせるんかい。
「拾え、樺地」
「ウス」
 樺地は足元の携帯電話を拾い、今度は奪われない様に鞄の中にしまった。
「お前、何がし…」
 跡部の言葉は最後まで語られる事無く消えていった。
『越前?!』
 一同から悲鳴(?)が上がる。
 なんと、リョーマが樺地に抱き着いたのだ。
「可愛い…」
 しかも問題発言のオマケ付き。
 可愛いって誰が?!自分が?!それなら許すが(をい)まさかそのぬぼーっと突っ立ってる樺地じゃねえだろうな?!
 きっと一同の心境はそんな感じだろう。
「ちょ、オイ大丈夫か越前?!」
 逸早くフェンスを越え、駆け付けた桃城がリョーマの肩を掴む。だが、リョーマは引き剥がされたくないらしく、樺地にぎゅぅっとしがみ付いて上目遣いに桃城を睨み上げた。
「ヤダ」
 その仕種の可愛いのなんのって。「ヤダ」ですよ?カタカナでですよ?
「ぅわ……」
 モロ真正面からそれを受けた桃城なんて、今にも鼻血を出して倒れそうじゃありませんか。
「……」
 当の樺地といえば全くの無表情だが、実は内心ではかなり動揺していた。そしてへばりついたリョーマをどうしようもなく跡部を見る。すると跡部は漸く我に返り、取り敢えず引き剥がす事にする。
「ひ、引き剥がせ、樺地」
「ウス…」
「あ…」
 リョーマが樺地の力に適うわけも無く引き離される。
「ほら、何やってんだ越前!」
 桃城ははっと我に返り、引き剥がされたリョーマを受け取った。
「桃先輩、離して下さい」
 途端不機嫌となったリョーマがむっすーとして桃城を振り返る。
「人の恋路を邪魔すると馬に蹴られますよ」
 リョーマの信じられない発言と共に、コートの一角からブリザードが到来した。
「あわわわ…ふ、不二、落ち着いて…!!!」
 御開眼なされた不二様の隣では、ノーラケットの河村が慌てふためいている。
「あああ!ほら越前!不二先輩が大変だから行ってやれよ、な?な?」
 桃城が慌ててリョーマを向かわせようとするが、当のリョーマはつーんと顔を背けてそれに反抗してしまう。
「桃先輩が行けばいいじゃない」
「い、いや、それだけは勘弁…」
 そして自体は悪化し、桃城があたふたしてる内に跡部が口を開いてしまった。
「何か、寒くねえか?樺地」
「ウス」
「!!」
 二人のやり取りにリョーマの目が嬉々と輝き、それに気付いた桃城が更に慌てた。
「バカ!お前らは何も喋んな!!」
「樺地可愛い過ぎる!」
 桃城の想像通りに二次災害が起こってしまい、手を振り払ったリョーマが再び樺地に抱き着いた。
「全員グラウンド30周!!」
 と、そこに手塚の怒りの声が響く。
 この事態を無理矢理切断してくれて本当にありがとうございます!と桃城は手塚に心から感謝した。
「そういう事だから行くぞ!越前!」
「……」
 リョーマは再び機嫌を損ね、樺地から離れると彼の鞄から再び携帯電話を取り出した。また投げる気だろうかと様子を窺っていると、ボタンを押してどこかにかけ始めた。そしてすぐ切ると、画面を樺地に見せる。
「これ、オレの携帯電話の番号。消したら氷帝で「跡部景吾に襲われた」って言いふらすからね」
「オイ」
 横から跡部が声を上げるがリョーマはキレイサッパリ無視して樺地を見上げる。
「越前!」
 いつまでも離れようとしないリョーマに手塚の怒声が響く。
「煩いなあ…」
 リョーマは舌打ちすると、ぐいっと樺地の顔を引き寄せてその頬に唇を落した。
「「あーーーー!!!」」
 走っていた桃城と菊丸の絶叫がハモった。そしてその後ろを走っていた不二からはどす黒いオーラが放たれる。
「オマケ」
 隣りで固まっている跡部の頬にも軽く口付け、くすくすと笑いながら騒がしいグラウンドへと向かった。


「……なあ、樺地……」
「ウス」
「アイツの番号、メモリーに入れて置け……」
「ウス」






(無理矢理終わらせ)
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リョーマ、樺地に惚れる編。(笑)やっぱ跡部&樺地×リョーマだ…。何故…。
そして話が終わらないので強引に終わらせました。なので終わり方が妙です。そして他キャラの扱いが雑。発言させておいてその後の反応を書かなかったりと…。申し訳ない…面倒だったんだ…!(最悪や)
今回のタイトルですが、2ってつけるのも話の時間的におかしいな〜っと思ったので、0(ゼロ)としてみました。んでなんで/が入ってるかってえと、/が無いと0(ゼロ)とO(オー)の区別がつかないので入れてみました。
ガン◎ーラネタは単にこれを書いている時頭の中で流れてたので使っただけです。ていうか大石、なんでガン◎ーラ知ってんのよ…(笑)あの歌結構好きなんですがねえ…。
このリョーマは跡部に付き従う樺地が可愛くて可愛くて可愛くて(以下略)しかたないんですよ。でも自分で従えようとは思わなくて、あくまで跡部に付き従って「いけ樺地」「ウス」が大好き。(笑)なのでセットで居ないと怒ります。(爆)
何で樺地は呼び捨てなのかってぇと、大型犬みたいなのでつい呼び捨て。(笑)
(2001/08/28/高槻桂)

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