人でなしの恋五題





好きになってもいいですか
(アラシヤマ×シンタロー/南国少年パプワくん)


昼飯の調達に出かけていると、背後に見知った気配がしてシンタローは振り返った。
「シンタローはん」
珍しくアラシヤマがシリアスな顔をして立っていたので問答無用で眼魔砲をぶっ放すのは止めておく。
「何だよ、俺は忙しいんだけどな」
「聞きたい事があったんどす」
「何をだ」
「なんでわてと寝たんどす」
「……昔の事だ。忘れろって言ったろ」
忘れられまへん。アラシヤマは首を横に振る。
「忘れられるわけがあらしません。あの時から、ずっと言いそびれてた事があるんどす」
「……何だよ」
アラシヤマははにかむように笑って言った。
「好きになっても、ええどすか?」
「……!」
シンタローはぐっと言葉に詰まった。
これがいつものアラシヤマだったら眼魔砲で吹っ飛ばすのに、そんな風に笑われたら出来ないじゃないか。
シンタローは思いあぐねた結果、好きにしろ、と言って背を向けた。
「はい、シンタローはん」
幸せそうなアラシヤマの声に、シンタローは絆されるものか、と誓いながら森の中を歩いて行った。

 

***
京都弁わかんね。

 


正しい愛し方がわからない
(アラシ×シンタロー/自由人HERO)


正しい愛し方なんて知らない。わからない。壊すことしか知らない。
ただ、愛しいという感情はわかる。
ただ一人が愛しくて、愛しくて。だからこそ壊したい。
だから殺した。手に入れたと思った。
なのに、どうして。どうして生きている。
「アラッチ」
彼だけのあだ名を呼ばれ、顔を上げる。
「なんで生き返ってんだよ、シンちゃん」
せっかく、せっかくこの手で殺したのに。
やっと、俺のものになったのに。
「ヒーローが、呼んでくれたから」
いつもそうだ。いつもヒーロー、ヒーロー、ヒーロー。
俺は一番にはなれない。
奪った筈なのに、いつの間にかすり抜けている。
「それに、お前も呼んでくれただろ」
「……呼んでねえよ」
恋しくて、恋しくて。自分は壊す方法しか知らないけれど。
「アラッチ、ありがとう」
やはりお前は、そうやって笑ってる方が良い。

 

***
本編その後。

 


あんまり困らせないで
(ランスロー→カーシュ/クロノクロス)


※花咲く〜IF設定。


それは、まだランスローが騎士になる前の話。
「カーシュ様、カーシュ様ってば」
ずかずかと先を行く上司に縋るような声を出してランスローはその背を追いかける。
「すみませんって。もうしませんから!」
事の発端は、ランスローがカーシュに無理やり口付けを迫ったことによる。
未遂に終わったのだが、カーシュは機嫌を損ねてしまい、現在に至っている。
「カーシュ様!」
「……」
漸くカーシュの足が止まり、じろりとランスローを振り返った。
「本当に、もうしないか?」
「はい、すみませんでした」
素直に謝ると、カーシュは仕方ないと言う様に溜息を吐いて前を向いた。
「……あまり困らせるな」
今度はゆったりと歩き出したカーシュに、彼の怒りが解けた事を知ったランスローはありがとうございます、とその背に頭を下げた。
しかしランスローは懲りてなかった。
数日後、同じ事をしてカーシュに怒られるランスローの姿を何人もの騎士たちが目撃する事になる。


***
押せ押せモードのランスロー。

 

僕に愛をくれた君に捧ぐ
(ヤマネコ×カーシュ/クロノクロス)


※花咲く〜IF設定。


「でも良いのか?俺と生きるって事は、多分、死ねないぜ」
自らの内に取り込んだ凍てついた炎はカーシュを永遠に生かし続けるだろう。
そしてその力で蘇ったヤマネコもまた、カーシュが望む限り生き続けるだろう。
それはきっと、楽しい事ではない。辛い時もあるだろう。それでもこの手を取ってくれると言うのか。
するとヤマネコはふと微笑するとカーシュの手を取ってその手の甲に口付けた。
「私に愛という感情をくれたお前にこの身を捧げよう」
カーシュは一瞬にして顔を赤らめると、恥ずかしいんだよ、とそっぽを向いた。

 

***
今までで一番短いかもしれない。あれ?

 

今日も、明日も、明後日も
(野上×アリス/有栖川有栖)


野上とのメールのやり取りは、毎日続いた。
といっても大抵は大した内容もなく、単なる日常の報告だけだった。
今日は何ページ進みました。脱稿しました。そんな内容のメールをアリスは毎日送った。
野上からの返事は素っ気無いものが多かったが、それでもアリスは嬉しかった。
だからとあまり頻繁にメールをしても迷惑がられるだけだろうかと思ったアリスは、メールは一日の終わりに一回だけ、と自分で決めていた。
そんなある日、朝早く野上からメールが入っていた。
恐らく出勤前に送ったのだろう、昼近くに目を覚ましたアリスは慌ててそのメールを開いた。
その内容は、野上のマンションへの誘いのメールだった。
眠気が一気に吹っ飛んだ。慌てて、けれど慎重に返信メールを打つ。
何度も読み返して快諾のメールを送り、アリスは身支度を整えるために洗面台に向かった。
いつ返事が来ても良いように、携帯電話は近くに置いておく。
でもきっと今は現場を走り回っているころだと思うから、返事が来るのは夜だろうか。
それでもアリスは携帯電話を放置しておくことができず、トイレと風呂の時以外は常に肌身離さず持っていた。
すると予想通りに夜遅く野上からメールが来た。
それを読み、返事を送ってアリスは携帯電話をそっと握りしめる。
来週の野上の非番の日に、野上のマンションを訪問することになった。
と言っても多忙な野上の事だ、休み返上になる事もあると知っているだけに過度の期待はしないようにしておく。
それでも浮き足立つ気持ちを抑えきれず、アリスは上機嫌で冷蔵庫からビールを取り出した。

 

***
とうとうおうちに行くらしいですよ。



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