04.図書室ではお静かに
(叶、織田/おおきく振りかぶって)



四時間目の古典は図書館で行われた。
授業自体は最初の十分程度で、残りの時間は全て調べものの時間となったのだ。
「叶、課題もう終わったん?」
「んー…」
織田に気のない声を返しながら、叶は机の下で携帯電話を弄っていた。
それをひょいと覗き込んだ織田は「あれ」と声を上げた。
「ケータイ変えたんか」
「んー」
「前のヤツ気に入っとったやん、ブラックのゴツイカメラ付いたヤツ」
「んー」
何を言っても生返事を返す叶に、織田はひょいと肩を竦めた。
「何をそんなガンバっとん」
「んー」


『夕べは遅くまでつき合わせてゴメンな。
今日、遅刻しなかったか?
お前、結構ねぼすけだからちょっと心配。
今、何してる?って授業中か。
こっちは現国。ちょーねみー。
レンレンと一緒にねたーい。
つかマジで週末そっち行っていい?
だってもうムリ、ぜってームリ。
レンレン不足でオレたおれそー。
ぎゅーってしたい。
ぎゅーってしてぐりぐりしたいー。』


「………」
思わず窓の外へと視線を向けてしまう織田。
あーサッカーやっとるわーお、点入ったわー…って何ですかコレは。
行を増すごとにおかしくなっていってるんですが。
つか、レンレンって何。誰。
「……三橋廉?」
「あ?」
すると今まで生返事しかしなかった叶がぎゅんっと音がしそうなくらい素早く織田を見上げた。
「廉がなに?」
その目は真剣そのものだ。
「……や、何でもないデス…」
思わず両手を顔の横まで上げてしまう。
(コレぞまさにお手上げ状態や)
そう思って即座にあかん、すべった、と肩を落とした。

 

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