05.呼び出し
(叶、織田、畠/おおきく振りかぶって)



昼休み。きっと西浦だってそのはずだ。
なのに廉からの返事のメールがない。
それ自体は叶にとって予測範囲内だった。
廉のことだからどう返事をしていいか迷っているか、または家でじっくり考えようとか考えているのだろう。
そう思いながら返事を考えてわたわたする廉の姿を想像し、叶はにやにやと手の中の携帯電話を見つめた。
前の携帯電話ほどではないが、少々角ばったボディ。
カラーはブラック&オレンジ。
廉から携帯ナンバーを聞くと同時にちゃっかり機種もチェックを入れていた叶はその日の内にケータイショップへ駆け込んで廉と同じ機種に変えてしまったのだ。
廉と同じケータイ。
しかもカラーがブラック&オレンジ。
自分の好きなブラック。そして廉をイメージさせるオレンジ。
何かもうサイコーじゃん?
何かもう繋がってるってカンジ?
「イヒヒヒヒ」
「?!」
昼食も摂らず、携帯電話を見つめてニヤニヤしていたかと思えば、突然笑い出した叶に畠がびくぅっと震えて織田を見た。
「や、オレに助けも止められても困るんやケド」
二人の見ている前で叶は携帯を操作し、そして耳元へと持って行った。
誰かに電話するらしい。
しばしの沈黙。
……ぱぁっと明るくなる叶の表情。繋がったらしい。
「あ、オレオレ、今大丈夫か?…ん。今何してる?って昼飯中だよな、ゴメンゴメン。つか今日遅刻しなかったか?あ、やっぱりしたんだ。ゴメンな。ん、オレも悪いんだってば。それにホントはもっと話してたかったんだぜ?ん、わかった」
しばしの沈黙。
「…三橋か」
「多分…」
畠と織田がひそひそと言葉を交わす。
高等部からの織田はともかく、畠には痛いほど良く分かった。
そうだよな、叶がこんなになるのは三橋絡みしかないよな、つか有り得ないよな。
「ん、気にすんなよ。メンバーで飯食ってんの?…廉?」
何かあったらしく、叶が慌てて立ち上がる。
「あのヤロ…!」
先ほどまでのふやけ顔は何処へやら。リダイヤルする様はまさに鬼気迫る、と言ったところか。
……。
………。
…………。
「……んのタレ目がァ!」
ぶちぃっと音がしそうな勢いで通話オフボタンを押して叶は携帯電話を握り締めた。
「マウンドで女房ヅラするだけならまだしも!オレと廉の愛の語らいを邪魔するとは何事だ!!」
うわぁ…。
本気で憤慨している叶に畠と織田は正直、引いた。
「だいたいオレと廉は将来を誓い合った仲なんだぞ!タレ目はお呼びじゃねえっつーの!!」
あわわわわ…っていうかきっとそれ、小さい子によくあるアレだって…本気にすんなって…。
もう、どうしよう…。
途方に暮れるって…こういうことだったんだなぁ…。

 

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