06.持ち物検査
(畠/おおきく振りかぶって)



今日は持ち物検査だ。
とは言っても予め聞かされているはずもなく、たった今、教師がそう告げた。
ざわめく教室内。
持ち物検査とは、今更説明するまでも無いが鞄の中身を全て己の机の上にブチまけ、教師に見てもらうわけだ。
で、校則違反な物があれば没収、と。
まあフツーの持ち物検査だ。
ちなみにオレは問題ナシ。
偶々、ってのもあるんだが。
「よーし、次、叶!」
お、次は叶か。
……って、なんでアルバム持ち歩いてんだアイツ。
アルバムっつってもそんな大きなヤツじゃなくて、A5サイズの小さなものだ。
が、普通は持ち歩かない。女子でならいるかもしれんが。
つか、まさか。
「叶、何でお前三橋の写真持ち歩いてんの?」
教師の呆れた声にオレは一瞬意識が遠のいた。
やっぱりそう来たか。
「つーか、何でこんなたくさんあるんだよ」
うちの担任はオレらと一緒に高等部に持ち上がった教師だから三橋のことも知っている。
アイツは理事長の孫ってことでも有名だったしな。
ということで、叶と三橋が仲良かったことも知っている。
「えー、だってセンセーだって奥さんと娘さんの写真パスケースに入れてんじゃん」
「俺は一枚しか入れてないぞ」
「だってどれか一枚だけなんてムリだってセンセ。これが小学生三年の…」
「あーハイハイわかったわかった、叶もパスな」
「イエー!」
あー…なんか、叶がだんだん壊れてく…三橋、頼むから、謝るから戻ってきてくれ…。

 

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