その両の腕から羽ばたいて行く者は





シンタローとヒーローは翼を羽ばたかせながら空を駆け抜けていた。
暫く行くと、シンタローが「見つけた」と小さく声を上げる。
二人の視線の先には彼らから逃げる、へしゃげたトカゲのような魔物の姿があった。
「パーパ、ヒーローに任せろ!」
ヒーローは空中でくるりと一回転し、軽い音を立てて幼子から青年へと急成長する。
「聖王剣!」
左手を突き出すと掌が輝いてそこから一振りの大剣の柄が現われる。ヒーローは右の掌でその柄をしっかりと握ると一気に自分の中からその超神器を引き抜く。
「最後まで油断するなよ」
シンタローの言葉にヒーローは小さく頷くと一気に魔物との距離を血縮める。
その速さは幼児の姿の時とは比べ物にならない程早い。
「ハァッ!」
魔物が魔力球を発する前にヒーローの剣が魔物を斬り裂く。魔物は耳障りな音を立てながらあっという間に崩れて消えてしまった。
「パーパ、見てたか〜?」
竜の翼と聖王剣を体内に収め、くるりと振り返るとヒーローはぶんぶんと手を振る。するとシンタローは息子の隣りに降り立ちその頭を撫でてやる。
「パーパ……」
途端、ヒーローは寂しそうな顔をした。
「パーパ、俺がこの姿の時はキスしてくれないんだな」
冥王界との戦争前まではヒーローが敵を倒したりする度、「よくやったな」と笑顔と共に頬にキスをくれた。だが、冥王界との戦争以来、ヒーローが天帝の姿の時は微笑と共に頭を撫でるだけであった。
「あ〜……大人同士は余りそういう事はしないんだぞ?」
シンタローがしどろもどろに説明すると、ヒーローは寂しげな表情を消さぬまま顔を寄せ、言葉を発しようとしたシンタローの唇に己の唇を重ねる。
「ヒーロー?」
ふれたその唇はすぐに離れ、そのままシンタローを包み込むように抱きしめた。本来の幼い体ではしがみ付く事しか出来なかったが、今はそんなもどかしさは無い。
この、両の腕で父を抱きしめられる。
「パーパ…パーパが好きだ。一番好きなんだ…」
ヒーローの言葉にシンタローは暫し沈黙した後、自分を抱きしめる息子に言い聞かせるように言葉を発する。
「ヒーロー…お前にはミイちゃんがいるだろう」
「ミイより、タイガーよりパーパが大好きなんだ」
シンタローはヒーローの背に腕を回して軽くその背を叩き、抱きしめる。まるで、駄々っ子をあやす様に。
「ヒーロー、パーパもお前が大好きだ。だけど、俺達は親子なんだ。それを忘れてはいけない」
「パーパ…!」
己を抱きしめる力が増し、シンタローは軽く目を伏せる。ヒーローはシンタローの首筋に埋めていた顔を上げ、もう一度口付けようとする。
「ヒーロー、やめるんだ」
ふいと顔を背けると足払いをかけられ、倒れた身体にヒーローが跨り抑え込む。ヒーローはシンタローの頬に両手を添えると背けれない様に固定し、もう一度口付けた。
「ヒ……っ……」
これもすぐ離れると、彼はシンタローの首筋や鎖骨にも口付け始める。
「っ…ヒーロー…!やめなさい…っ…」
「パーパ……」
ヒーローは逃げないで、と小さく呟くと胸の突起にも口付けた。
「…っ……」
押し退けようと腕を突っ張らせるが、今の姿のヒーローに力で勝てるわけが無い。その抵抗を物ともせずヒーローは片方を指で摘まみ、もう片方を舌で舐りそれを玩ぶ。
「ヒ、ィロ……」
やめるんだと、どこか甘い色を含んだ声と共に呟かれる。その艶めいた声にヒーローは身体がなっていくのを覚える。
「アッ……」
固くなった突起に軽く歯を立てられ、シンタローの体がびくりと震える。
突起を弄っていた手がゆっくりと下肢へと伸び、彼の唯一纏っている蓑の下で熱を持ち始めているそれに手を添える。
「…く……ぁ……」
手を動かすとシンタローの唇からは熱を孕んだ声が漏れる。
初めて見る父のその媚態に全身が昂揚するのが分かる。
やがて弄り続けたそこからにじみ出てきた体液に濡れたその指をそっと後部に滑らせると、シンタローの体はびくりと体が揺れる。中指を押し込むとシンタローの内部はヒーローを拒むように収縮し、押し戻そうとする。それでも内部へと埋めていき、微かに盛り上がっているそこを指の腹で擦ってみる。
「あっ……っ……」
シンタローは羞恥から顔を背け、声を出さない様に唇を噛み締める。だが、そこがシンタローの感じる所なのだと知るともっと自分の知らないシンタローを見たくて更に強く擦る。
「ゃ、あっ…っつ……」
その強い刺激に一際強く跳ねると、シンタローは己の腹上に熱を放った。
「…っふ……」
荒い呼吸をしながらシンタローはじっと見詰める息子の視線から逃れるように顔を背ける。
「…っ……」
指が体内から抜かれ、体を押さえつけていたもう一方の手が脚へと回る。大きな手がシンタローの脚を持ち上げ、高く抱え上げる。
自分を押さえていた腕が退けられた今、脚を捕われているくらいなら逃げ出すのは可能だろう。だが、それは力ずくで、の事であり、自分がこの愛しい息子に手を挙げられるわけが無いのを知っていた。
ひたりと解されたそこにヒーローの熱が押し当てられる。
駄目だと分かっていても、最早抵抗する力は涌かなかった。
「くぅっ……」
強い圧迫感に内臓がせり上がるような感じがする。
「っ…パーパ…力、抜いて……」
「あ、くっ…!」
ヒーローは強引に根本までそれをシンタローの中へと沈めていく。
「パーパ…パーパ……」
ヒーローはうわごとの様に父の名を呼び、腰を前後させる。その自身に絡み付いてくるような粘膜の熱さと頭がぼうっとしてきそうなほどの歓喜に震えた。
いつからだったか、父は自分だけの物だと、他の誰であろうと触らせたくないと思うようになっていた。ずっと、想い続けた父を、今、自分は犯している。
その背徳さと歓喜に心を震わせながらヒーローはシンタローの最奥を貪った。
「…あっ……く…」
疲れる度にそこから痛みと快感が湧き起こる。そしてその度地面と背中が擦れ合ってジャリジャリと小さな音と共に痛みを連れてくる。だが、それすら気にならない程に、彼は空をただ見上げていた。
葉達の重なり合う間から覗くその青空。驚くほど落ち着いている思考はただその空の蒼さに見入っていた。
「ヒー、ロー……んっ…」
言い様の無い感情と、ヒーローの与えてくる快感と苦痛に心も身体も支配される。
ふと、視界がぶれたかと思うと突き上げられた拍子に目尻から一筋、暖かい水が流れ落ちる感触がした。
だが、シンタローを貪る事に夢中になっていたヒーローは、それに気付く事はなかった。



「……この事は、全て忘れるんだ」
「パーパ……?」
情事が終り、余所余所しい空気が流れる中、シンタローはふらりと立ち上った。すると内股をヒーローの放った精液が伝い落ち、微かに眉を寄せる。
「湖へ行ってくるから、ヒーローは家に戻ってなさい」
「パーパ……」
声はいつもと変わらぬ声であるのに、湖へとおぼつかない足取りで向かうその父の背中は強い拒絶に満ちていた。
「…パーパ……」
ヒーローは困惑し、その場に立ち竦む。
確かに、強引に思いを遂げたのは早まったと思う。
だが、途中から抵抗を無くした父。
それは自分と同じ想いだったのだと勝手に解釈をしていた。
「パーパ」
もう、足音すら聞えないその父が去っていった場所を見付め、ヒーローは消え入りそうな声で何度も父を呼ぶ。
「パーパ…」
想いは、完全にすれ違ってしまったのだ。
「パーパ……ごめんなさい……」








(了…続く?)
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アンタ等ギャグ人間じゃろがあああ!!!と思いながらも書いてしまった物。ヒーローが別人だとかシンタローが別人だとか聖王剣がなんで手から出てくるとかその他諸々の苦情等一切受け付けません!俺が一番言いたいから!(爆)しかもなんか続いたよ。プロットの三分の二くらいかな、これは。ホントは何とかグッドエンドになってたのよ。でも一旦ここで切る。で、纏まったらまた書く。
さて次はアラッチだ(爆)
(2000/11/03/高槻桂)

 

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