退屈な毎日、色褪せた風景。
そんな中、アイツは現れた。
そして、世界が動き始めた。



空の名前2



それは、中学三年の夏も終わりに近づいた頃だった。
いつものように気が向いたときだけ学校に行って、街をぶらついて、下らないヤツラを捩じ伏せて。
そんな時、アイツは現れた。
絡んできた数人を路地裏でボコって顔を上げたらそこにアイツは立っていた。
何見てんだ、とガン飛ばしても彼は臆する事無く、へらりと笑った。
綺麗だね、と。
何言ってんだコイツ。胸倉を掴みあげてみても、彼は全く動じず、ただ穏やかな笑みを唇に刷いていた。
妙な奴には関わらない方がいい。
さっさと突き飛ばしてその場を立ち去ろうとすると、奴はのこのことついてきた。
そしてあれこれと話しかけてきたが全て無視していると、今度はお茶しないかと誘ってきた。本当に何なんだこいつは。
俺、乾貞治。青学テニス部の三年。君が負けた越前リョーマの先輩。
その言葉に足が止まる。目の前の男は相変わらず口元はにこにこしている。(目は眼鏡のレンズが余程分厚いのか、光を反射して向こう側が見えない)
で?と返せば、個人的に君に興味があるから話がしたい、と返された。
さっき見かけたんだけど、駅前のカフェ、一足速く新作モンブラン出てたよ。
にこり。
駅前のカフェと言えば美味いが高くてなかなか手が出せない場所だ。亜久津が黙っていると、勿論、俺が誘ったんだから奢るよ、と乾が笑った。
食ったら帰るからな。
どうせ暇を持て余していたので、そう言って誘いに応じた。
これが、亜久津と乾のファーストコンタクトだった。


正直な話、乾との会話は楽しかった。
打てば響く、とはこういう事を言うのだろうか、こちらの問いかけに乾は淀みなく明瞭な答えを提示した。
今までにないタイプの人間だった。
彼は最後に一枚の紙切れを差し出した。
そこには彼の携帯電話の番号とアドレスが明記されていた。
暇で仕方ない時にでも連絡してよ。相手になるから。
彼はそう笑って店を出て行く亜久津を見送った。亜久津の番号を教えろとは聞いてこなかった。
亜久津がその紙切れの番号に掛けたのは、それから一週間と経たぬ頃だった。
ポケットに入れっぱなしでくしゃくしゃになった紙切れの番号をダイヤルすると、数コールで彼は出た。
今から出て来いよ、と誘えば彼は迷い無く是と答えた。
二人でどうでもいいような事を話しながら街をぶらついたり、乾が見つけてくる隠れ名店的な店でお茶をしたり、一緒に食事に出かけたりした。
不思議と乾とは気があった。
ぱっと見、正反対の場所にいるような奴なのに、いつの間にか乾が亜久津の傍らにいるのは当たり前の光景となっていた。
乾とは、たまにテニスをする事もあった。
ストリートテニス場で打ち合いながらも、お互いに本気を出すことは無かった。
乾曰く、自分では亜久津の本気には勝てないからと笑っていたが、それでも十分、本気ではないにしても亜久津の動きについてきていた。パワーベストを着込んだままで。
けれど乾のボールは的確で、必ず宣言したとおりの場所に打ってきた。
ただの打ち合いであるそれに、いつしか亜久津は楽しさを覚えていた。
越前リョーマと打ち合ったときのようなスリルも興奮も無い。本気を出すことも無いただのラリー。
ちょっとしたゲームをするような、ボールを通じて会話を楽しむような感覚。
随分久しぶりに、テニスを楽しいと思った。
けれどこれは恐らく乾が相手だからこそなのだろう事も分かっていた。
だからまたテニスの世界に戻ろうとは思わなかった。
ただこうして、たまに乾と打ち合うくらいで丁度いい。
今の自分にとって、テニスとはそれくらいで丁度よかった。

そんな付き合いが一年ほど過ぎた頃、乾は話したい事がある、と亜久津の部屋を訪れた。
彼にしては珍しく、何処か思いつめたような面持ちで亜久津の前に座った。
この頃の乾は、亜久津と会う時だけはコンタクトをしていた。あの不透過眼鏡が気に食わない、と言った亜久津に、じゃあ亜久津と会う時だけはコンタクトにするよ、とあっさりと受け入れた結果だ。
あの分厚い眼鏡を取ると意外にも整った顔立ちをしている乾は、その形のよい眉をよせ、眉間に皺を刻んでいた。
そして彼が語ったのは、亜久津には想像もつかない事だった。
彼は自分が男とも女とも言えない体だと告げた。
本当はコレが地声なんだ、と発した声音は、いつも聞いていた低音より高めのテノールで。
両性具有。その言葉を聞いたことはあった。しかしそれは物語の中だけのものだと思っていただけに、偏には信じることは出来なかった。
しかし、彼の見せた保険証は女を示していたし、何なら脱いでもいいとまで言われては信じるしかなかった。
何より、思いつめたようなその瞳の色が真実なのだと告げていた。
今まで誰にも打ち明けられずに来たのだろう、常に滔々と流れるように亜久津の問いに答えてきた彼が、たどたどしく一つ一つ言葉を選びながら説明する姿は健気ですらあり、好感を覚えた。
一通り説明を終えて、それでも亜久津の傍にいても良いだろうかと問うて来る姿はいつもの余裕を湛えた彼の姿からは想像もつかないほど弱気で、亜久津は苦笑してその額を指先で弾いてやった。
バーカ、てめえはてめえだろうが。
乾はひゅっと息を詰め、やがて嬉しそうに微笑んだ。
泣きそうなその笑顔が、今でも瞼の裏に焼き付いている。

それからの乾は、亜久津の前では己を隠すことはしなくなった。
声も地声で話したし、体型を隠すためのパワーベストも外し、体のラインが出る服も着るようになった。
ただ、やはり男として生きてきただけあって女性用下着に関しては抵抗が有るようで、胸は相変わらずさらしで対応しているようだった。
こうしてみると骨格は女性よりだというのが分かる。何も知らない人が亜久津と一緒にいる時の乾を見ればボーイッシュなモデル体型の女性だと見る人もいることだろう。
亜久津はどこかそれに対して優越感のようなものを抱いている自分に気付いた。
男としても女としても魅力的な存在を手にしている優越感。
しかしそれは決して己を引き立てる付属品としてのそれではなく、乾貞治という個人が自分の傍にいてくれるという事に対してのもので、そこに至って漸く亜久津は乾をかなりのレベルで気に入っている事に気づいた。

高校が冬休みに入ると、乾は亜久津の部屋に入り浸るようになった。
亜久津は高校には行かず既に就職していたから、乾には合鍵を渡して好きにさせていた。
そして乾が入り浸っている間は乾が食事を作る。これはいつの間にか出来た暗黙の了解だった。
洗い物をしている乾の後姿を眺めながら、最近の自分は随分落ち着いてきたと亜久津は思う。社会に出たからということもあるだろうが、乾と出会ってからは喧嘩の回数も減ったし、何より常に自らを支配していた倦怠感にも似た苛立ちがすっかり身を潜めている。
不意に、自分は乾の事が好きなのだろうかと思う。
気に入ってはいる。合鍵を渡して好きにさせるくらいは気に入っている。
だがそれが恋愛か友愛かどうかと言われると、乾が男とも女とも言えない性別だということも踏まえて微妙なところだと亜久津は思う。
洗い物を終え、こちらに戻ってきた乾を手招きすると彼はすんなりと亜久津の前に座った。
何?と小首を傾げる乾の胸倉を掴んで引き寄せる。
重なる唇、驚きから半開きになったその隙間から舌を差し入れ、軽く絡めてみる。
ぴくりと震える体。深追いはせずに離れると、乾は目をまん丸にして亜久津を見ていた。
ぱちくりと何度か瞬きをした後、どうしたの、突然、と聞いてきたので何となくしたくなった、とだけ答えておいた。
嫌悪感は無かった。
寧ろ、もっと深くまで貪りたいと思った。
これはやはり、そういうことなのだろうか、と考え込んでいると、立ち直ったらしい乾が突拍子もない事を言い出した。
亜久津、俺とセックスしてみない?
今度は亜久津が目を丸くする番だった。
乾は至って真剣にセックスしよう、と繰り返した。
突然キスした自分も自分だが、何を突然、と思っていると、乾は聞かれても無いのに胸の内をぶちまけ始めた。
曰く、このどっちつかずの体でセックスが可能なのかどうかが気になるらしい。
更には一度やることやってみれば自分がどっちになりたいのか分かるかもしれない、と。
乾はあくまで好奇心からだと言い張っていたが、その深い色合いの瞳は不安に揺れており、自分の体に対する劣等感が見え隠れしていた。
亜久津は暫く考え込んだが、自分としても乾への感情を見極めるいいチャンスではないだろうかと思い、それを了承した。
すると乾は徐に服を脱ぎだし、さらしを外して下着も全て脱ぎ捨てて一糸纏わぬ姿で亜久津に手を広げた。
こんな体でも、抱ける?
白々しい灯りの下、乾の白い肌は一層白く映えた。
さらしで潰され続けていたわりには綺麗な形を保っている小さな乳房。
ほっそりとした、けれど決して女性のような括れはないその腰のライン。
そして薄い茂みの下の、男としても女としても未発達な性器。
亜久津はその腕を引き寄せ、床に組み敷いた。
抱いてやるよ。
そう囁くと、乾は僅かに安堵したように微笑った。

さらしの跡をなぞる様に指を滑らせると擽ったそうな笑い声が微かに響いた。そのまま小さな乳房を掌で包み込み、指先でこれまた小さな先端を弄るとぴくりとその体が震え、体が強張るのが分かった。指の腹で何度も捏ね繰り回し、もう片方を舌先で舐るとそれに耐えるように乾は肩を竦ませた。
ぴんと形を顕わにしたそこを舐りながら手を下肢に滑らせていく。薄い茂みを掻き分けて辿りついたそこには子供のようなそれが微かに勃ち上がりかけていた。
ちゃんと勃つんだな、と呟くと乾が精巣と繋がってないから射精はできないけどどうのこうのと説明し始めたのでその唇に口付けて塞いだ。
舌を絡めながら指で勃ち上がり始めたそれを扱くと、小さいながらも自己を主張するように硬さを増していく。乾の喉が甘く鳴いた。
親指の腹でそこを扱きながら中指を更にその奥へと差し入れるとまた乾の体がびくりと震えた。固く閉ざされたそこを解きほぐす様に指の腹で揉むようにして愛撫すると、次第にそこは綻び始め、ぬめった蜜を滲ませた。
唇を開放してやり、首筋に顔を埋めながら指先は滲み出したその蜜を塗りこむように動かしていくと漸く指先がその奥へと迎え入れられた。
甲高い声が上がる。今まで抱いてきたどの女よりも狭いそこは熱く、亜久津の指を拒絶していた。それでも根気良く解していくと、漸く指が一本、根元まで飲み込まれていった。中で曲げてみると、それは快感よりも痛みの方が強かったらしく、身を捩ってそれから逃れようとする乾の顔に何度も口付けて落ち着かせた。ゆっくりと浅く抜き差ししながら窺うと、次第に甘い声が漏れ始め、亜久津は慎重にもう一本指を増やしてみた。
最初こそ痛がっていた乾も、慎重なそれに次第に体の強張りを解いていった。
かなり時間がかかったが、それでも何とか三本まで入るようになり、柔らかく解れたそこから指を引き抜くと既に猛っている自身をそこに押し当てた。
乾はコンドームの使用を拒否した。ゴム臭が嫌なのと、何より自分に子供が出来ることは無いのだからと自嘲気味に微笑った。
あ、もしかして亜久津性病持ち?と笑う乾に、余裕じゃねえかこのやろう、とその額を指先で小突いた。
そして先端を蜜の溢れるそこに押し付け、にゅるりと滑らせて刺激すると乾の喉が甘く鳴き、そこからは更なる密が溢れ出して来る。それを纏わり付かせ、亜久津は漸くそこへの進入を始めた。
その痛みに乾の体が強張り、ぎゅっと腕にしがみ付く力が強くなる。半ば強引に先端部分を押し入れると、引き攣ったような悲鳴が上がった。
大丈夫か、と問えば大丈夫、と応えが返ってくる。生理的な涙を浮かべ、弱々しい声でそれでも乾は大丈夫だから、と微笑った。
狭いそこにゆっくりと押し入っていくと、半ばまで挿れた時になって乾が痛みに反射的に身を捩った。未発達なそこはここまでが限度なのだろう、ふるふると乾は無理だと言うように首を左右に振った。
抜くか?と問えばそれもまた首を横に振る。なら、と緩やかに腰を引き、ゆっくりと抜き差しをしてみる。大丈夫、の言葉に少しずつそれを速めていくと次第に甘い声が戻ってくる。
その甘く切ない声で何度もあくつ、と呼ばれるだけで高揚する自分がいる。
こんな、中途半端にしか欲をその肉に沈められないのに興奮している自分がいる。
最奥まで抉ってやりたい。この欲を根元まで埋め込んでやりたい。思いのままに突き上げてやりたい。
本能が告げる欲求と乾を気遣う理性のジレンマが余計に亜久津を猛らせていく。
沸きあがる絶頂感に身を委ね、一瞬息を詰めて精を吐き出すと、狭いそこは受け止め切れなかったのかこぽりと卑猥な音を立てて亜久津の吐き出した精液を溢れさせた。
ずるりと引き抜くと、精液の白に混じって朱が伝い落ちる。
くてりと脱力している乾を呼ぶと、彼は腕を伸ばして亜久津を抱き寄せた。
潰れるぞ、と言うと俺だって半分は男だから大丈夫、と応えが返って来た。
そのまま暫くの間抱き合っていたが、さすがに寒さに耐え切れなくなって二人で風呂に入った。

それからも、乾と亜久津の関係は特に変わりは無かった。
暇があれば一緒に出かけて、休みがあれば乾が亜久津の部屋に転がり込んできて。
変わったのは、時折思い出したようにキスをしたり、乾の気が向いた時にだけセックスをしたりするくらいだ。
その頃になると、亜久津ももう自分が乾をどう思っているか自覚していた。
けれど特に言うつもりはなかった。
言っても言わなくても、多分この関係は変わることは無いだろう。
そう思っていた。

しかし、乾が高校を卒業した頃からおかしくなった。
乾が会いに来なくなった。
ホルモンバランスによる体調の波がある事はもういつもの事で、体調が悪いから、を理由に会いに来ない乾とのメールや電話だけのやりとりも一ヶ月程度なら特に気にならなかった。
しかし二ヶ月も経つとなると妙だと思い始めた。しんどくて家から出たくないなら俺がそっちに行く、と言ってものらりくらりとかわされた。
こうなったら問答無用で押しかけてやろうかと思ったが、翌々考えてみれば亜久津は乾の住所を知らない。いつも出かけるか亜久津の部屋で過すかばかりだったので聞いたことが無かったのだ。
三ヶ月目、とうとう亜久津はキレた。乾が通っているはずの大学に行ってみればそんな生徒は居ないと言われ、ならばと青学高等部に押しかけ、乾の居場所を教えろと脅したが誰も知らず、知っているのは部長と副部長だけだ、と答えるばかり。ならばとその二人に詰め寄っても頑として口を割らなかった。
その辺の生徒を使って聞き出そうとしても徒労に終わり、仕方ないのでこれまたその辺の生徒を脅して資料室にある去年の卒業アルバムから乾の住所を調べて来させた。
紙切れに書かれた住所の先にあるマンションにたどり着くとまず郵便受けを確認した。最上階には確かに「乾」の文字がある。漸く見つけた。
インターホンを鳴らすと、暫くして乾の声が聞こえた。俺だ、と言うとなんで分かったの?!と驚いた声がしたがとにかく開けろ、と苛立ちながら言う。
すると数秒の沈黙の後、わかった、という応えがあってドアが開かれた。
ホールを抜け、エレベーターで最上階まで上がる。
一番奥の扉の前に立ち、再度インターホンを鳴らすとこそりと窺うように少しだけ扉が開かれた。
無理やり開こうとするとガシャンという音がして扉が止まった。ご丁寧にチェーンが掛けられている。
どういうつもりだ、と問えば何が、ととぼけられる。
すっ呆けんのもいい加減にしろよ、と低く告げると、乾は深い溜息を一つ吐いてチェーン外すからちょっと手、放して、と告げた。
そしてチェーンが外され、大きく開かれた扉の向こうに立っていた乾の姿に亜久津は一瞬我が目を疑った。
ちらっと明後日の方を見てもう一度乾を上から下まで見る。
「…なんで腹出てんだ」
「…ぼてりました」
「……」
「……」
「……」
「……」
「…おまっ、デキねえっつったじゃねえか!」
「ああそうだよデキないって医者にも太鼓判押されてたさ!でもデキちゃったんだから仕方ないだろ!」
「逆ギレしてんじゃねえよ!つーか何で言わねえんだよ!俺のガキだろ!?」
「そうだよ!まさかデキてるなんて思いもしなくてぼてってくるまで気付かなかったよ!だから堕ろせなかったんだよ!」
「堕ろすってなんだよ!」
「だって俺ら別に恋人とかじゃないじゃん!」
その声に亜久津の怒りが一気に霧散した。
そして理解した。これは自分のミスだと。
亜久津は舌打ちすると乾と向き直り、告げた。
「俺はお前が好きだ。だから俺のモンになれ」
すると乾はまじまじと亜久津を見て言った。
「俺、両性具有なんですけど」
「そうだな」
「今まで男として生きてきたから女らしさとかないんだけど」
「ああ」
「ぼてってるんですけど」
「俺のガキだろ。問題ねえよ」
いいから、と亜久津は手を差し伸べる。
「全部纏めて面倒見てやるから俺と来い」
乾はその手を見下ろし、亜久津の顔を見つめ、もう一度その手を見下ろした。
そしてその手に己の手を重ねた。
「……うん」
「よし、じゃあ行くぞ」
繋いだ手をぐいっと引いてエレベーターへと向かおうとする亜久津を乾はちょっと待って、と引き止めた。
「何処行くの」
「あ?んなもん役所に決まってんだろ。籍いれんだよ籍」
嫌なのかよ、と聞けばそうじゃなくて、と乾は続ける。
「役所、もう閉まってると思うよ、時間的に」
「……」
ちっと舌打ちする亜久津に、乾はくすくすと笑う。
「おい、乾、」
「え…」
乾は自分が笑いながら泣いている事に気づいた。
ぽろぽろと勝手に溢れ出すそれは止まる事を知らず流れ続ける。
「あれ、おかしいな、あは…」
指の背で涙を拭いながら乾は笑う。
「俺、自分で思ってたより亜久津の事、愛しちゃってたみたいだ」
凄く、嬉しい。
そう涙を流しながら微笑む乾を亜久津は片腕で抱き寄せた。
こつりと額と額を合わせる。
「今、何ヶ月だ」
「…七ヶ月。性別も分かってるんだけど、知りたい?」
「おう」
「あのね…」

そして数日後、乾貞治は亜久津貞治となった。








***
書いてる間、ずっと「我に帰ったらお終いだ」と念じながら書いてました。(爆)
さーて次は優紀ちゃんが出張りますよー三十路半ばにしておばあちゃんですよー。(笑)
後は亜久津の職業ですが、土方と某所での非常勤。これ大穴だと思うんですが、反感くらいそうなので取りあえず伏せておきます。(爆)




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