ガイアスとターネット達との旅行から帰ってきた翌日、アルヴィンは紙袋を提げてジュードの部屋を訪れた。
「これ、うちの新製品のフルーツジュース。飲んでみろよ」
「ありがとう。僕もアルヴィンに渡す物があるんだ」
はいお土産、と渡された小さな菓子袋に、いや俺も二十年もリーゼ・マクシアに住んでたし、と言いつつもそれを早速開ける。
色とりどりの小さな砂糖菓子が詰まったそれに、やっぱエレンピオスとは違うよな、とそれを抓みながら言う。
「エレンピオスのお菓子って結構、何ていうか……豪快なのが多いものね」
アルヴィンから受け取ったジュースの瓶を開けて口をつけると、それをじっと見ていたアルヴィンがそうそう、と頷く。
「こういう繊細で伝統的なのってあんま無いからなあ」
ぽりぽりとそれを齧りながら、あーあとアルヴィンはじとっとジュードを見る。
「俺が必死で働いてる時におたくらは旅行ですか。羨ましい事で」
「ぼ、僕だって知らなかったんだから仕方ないじゃない」
「その割には随分と楽しそうだったけど?」
「え?」
ほら、とアルヴィンが自分のGHSを開いて一枚の画像を見せる。
そこにはシャン・ドゥでの事だろう、ターネット達と屋台を指差して笑っているジュードの姿が映っていた。
「い、いつの間に!」
「あの王様、画像の写し方と送り方をやっと覚えたんだな」
「教えたの僕なんだけどね……」
教えなきゃよかった、と呟くジュードの肩を抱き、で?とアルヴィンはにやにやとしながら問う。
「ターネットでどれよ」
「えっ」
「食っちゃったんだろ?報告来てんだぜ?」
「……アルヴィンとガイアスって絶対仲良いよね」
「そんな事無いって。ただの情報共有。で、どれ?」
「……隣にいる赤髪の子」
ぼそりと言うと、アルヴィンはへえとGHSを閉じてテーブルの上に置く。
「同年代の子食っちゃってどうだったよ。やっぱ若さの違いってあんの?」
「そ、そんなのどうでも良いでしょ?」
ジュードが頬に朱を上らせながら顔を背けると、どうでも良くないぜ?とその顔をぐいっと自分の方に向けて口付けてきた。
「んっ……」
それを受け入れ、入り込んで来た舌に己の舌を絡めると擦り合わせる。
ぞくんとした痺れにも似た快感が背筋を走り、するのかな、と思っているとあっという間に体が熱くなってくる。
あれ、と思う。キスだけでこんなに高まっていくなんて。
体が熱い。下肢がじんじんと疼きだす。何これ。
「は、あ……」
「体、熱くなってきたみたいだな」
「なに、これ……なんで……」
くたりと力が抜けてアルヴィンの胸に倒れ込む。そんなジュードを抱き寄せて、アルヴィンはその耳を擽った。
「ひゃ、あ、だめ、アルヴィ……!」
くすぐったさと気持ち良さが混ざり合ってジュードはアルヴィンの胸元を掴む。
「効果抜群だな」
「ま、さか、さっきの……」
心当たりなど先程アルヴィンから貰ったジュースしかない。アルヴィンは御明察、と笑った。
「新しく開発された、恋人同士が仲良くなれちゃう不思議な飲み物ってやつ。簡単に言うと即効性の媚薬」
「なんで……」
何もしなくても湧き上がってくるもどかしい快感に震えていると、お仕置き、と笑みを含んだ声が耳を擽る。
「ほいほい男引っかけられないように、搾り取ってやるよ」
耳元で低く囁かれ、ジュードはたったそれだけの事にも感じ入ってぞくぞくと背筋を震わせた。

 


アルヴィンに呼び出されたガイアスがジュードの部屋を訪れると、ベッドにはジュードが横たわっていた。
目隠しをされ、猿轡を噛まされたジュードは腕も後ろで拘束され、その奥まった場所には張型らしきものが埋め込まれている。
何度も達したのか、シーツは白濁とした粘液で汚れている。だがそれでもジュードの熱は高まったままだった。
「何をしている」
ベッドの近くに椅子を引っ張ってきて座っていたアルヴィンがGHSを手にしたままお仕置き中、と答えた。
「ジュード君が男引っかけないようにしてんの」
かしゃっと撮影する音が響き、アルヴィンはGHSに写し取られたジュードの痴態を満足げに見る。
「……っふ、ぅ……!」
ガイアスがいる事に気付いているのかいないのか、ジュードは猿轡から荒い息を漏らしながらシーツに自身を擦りつけている。
「何か盛ったな」
「ドヴォールで手に入れたキッツイやつをちょっと、な」
シーツの上に転がっているローションやらに混じって、見た事のない物が転がっていてガイアスはこれは何だ、とアルヴィンを見る。
「ああそれ、ローターって言ってその先端の丸っこいのが震えるんだよ」
「これも性具なのか」
「リーゼ・マクシアと違ってエレンピオスはこういう道具もたくさんあるからねえ。これを機にジュード君に試してもらおうと思って」
「ふ……ぅ……う……」
喘ぐ事も出来ず呻きながら快楽を追い求めるジュードの姿を見おろし、ガイアスは余りこういうのは好きではない、とその猿轡を外してやった。
唾液で濡れたそれをシーツの上に転がし、目隠しも外してやる。
すると涙で濡れた蜂蜜色の瞳が快感に蕩けてガイアスを見上げた。
「がい、あす……!」
「辛いのか、ジュード」
「も、やだ……なのに、とまらないっ……」
「……」
非難の目を向けてくるガイアスに、アルヴィンはハイハイ俺が悪いですよ、と肩を竦めて立ち上がった。
「そんじゃ、ジュード君を満足させてあげましょうかね」
後ろ手に縛っていた紐を外し、埋め込まれていたそれを引き抜いた。
「あ、あっ」
その刺激だけでジュードはまた達し、薄く量も少なくなった粘液を飛ばした。
低い唸り声のような音を立てて震えているそれを止め、シーツの上に転がすとさてと、とアルヴィンがベルトを外し始める。
「何すればいいのかわかるよな、ジュード君」
ジュードはふらりと身を起こした。この体に巣食ったものを吐き出せるのならもう何でもよかった。

 


ぎしぎしとベッドが軋む音が部屋に響く。そこに卑猥な水音とジュードの喘ぐ声が混じっていた。
「ほら、もっと奥までしゃぶれるだろ?」
「んっ、う、んんっ」
アルヴィンの屹立を喉の奥まで咥え込みながら、ガイアスの長大な熱を体の奥まで受け入れてジュードは腰を振っていた。
もっと喉の奥でその熱を感じたい。もっと体の奥をその熱に貫かれたい。ジュードの頭の中はそれで一杯だった。
「ほらジュード、出すから飲めよ?」
「ん、んく、んんっ」
「ジュード、受け止めろ」
「ふっ、ぅ、んんっ、んんんっ」
低い呻き声と共に喉の奥に熱い粘液を吐き出され、体の奥深くにも熱を放たれたジュードは強く感じ入ってもう何度目かわからない絶頂を迎えた。
濃いそれを飲み下し、名残惜しげに口内から抜き去るともっと、と言う様にその下の袋に舌を這わせる。
「これだけイッても足りないの?」
頭上で笑う声がして、萎えかけていたそれがぴくりと震える。あむあむと袋に包まれた珠を舌で転がしているとアルヴィンのそれが再び勃ち上がった。
体内からずるりとガイアスのそれが引き抜かれ、ジュードは二人に手を借りながら向きを変える。
腰を引き下ろされ、アルヴィンの上に座る様にしてその熱を受け入れさせられる。
「あ、ああ、あ……!」
「ははっ、ジュード君の中、王様のザーメンでどろどろ」
アルヴィンが突き上げるとぐぶんと音がしてジュードは甲高い声を上げた。その嬌声を食むようにしてガイアスが口付けてくる。
「ぅん、む、う、ふぅ……!」
突き上げられながらガイアスと舌を絡めあい、その剛直を手で扱く。
ガイアスの指がジュードの胸の突起を抓み、ジュードは口付けたまま喉を鳴らした。
ああもう僕、どうなってもいい。快楽に溺れた思考でジュードは理性を手放した。

 


言葉通り搾り取られたジュードは、新しく換えられたシーツの上で腰痛い、と呻いた。
「調子乗ってすみませんでした」
「すまん」
髪を撫でるアルヴィンと腰を摩ってくるガイアスに、ジュードは知りません、と唇を尖らせる。
「もう僕動きたくない。でもお腹すいた」
「はいはい、作らせていただきます」
アルヴィンがキッチンへと向かい、冷蔵庫を漁る。それを見送って、ジュードはガイアスを見上げた。
「腰」
「わかった」
言われるがままに腰を摩るガイアスにくすっとジュードが笑い、ガイアスもまた表情を和らげた。
「漸く笑ったな」
「だって、ガイアスって王様なのに僕の腰摩ってるなんて、何か変なの」
「王とて愛する者の前ではこんなものだ」
「ちょっと王様、おたく手伝おうとかそういうの無いわけ」
キッチンから聞こえてくるアルヴィンの声に、無い、とあっさりとガイアスが返す。
「俺はジュードの腰を摩る仕事で忙しい」
「そもそもアルヴィンが悪いんだからね?」
「へいへい俺が働けばいいんでしょ働けば」
そして暫くして出来上がったオムライスにケチャップでハートを描いてアルヴィンがどうぞ召し上がれ、とテーブルの上に置いた。
ジュードはそれにもくすりと笑って、本当に二人とも仕方ないんだから、とスプーンを手に取る。
そもそもの発端はジュードがターネットに手を出した事なのだが、アルヴィンもガイアスも大人なので黙っておいた。
「ん、美味しい」
嬉しそうに笑うジュードに、まあいいか、と思えてしまうくらいには二人ともジュードを溺愛していたのだった。


 

 


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