夜は太陽の保護者



ミジョツカ城最上階にある軍主の部屋。その室内のベッドの上には二つの姿がよりそっていった。
一人はこの部屋の所有者であるカッツェ。そしてもう一人は素性の知れない黒騎士。
「何でだろう…ペシュメルガに抱き着いていると…落ち着く…」
カッツェはうつ伏せに寝転がり、ベッドサイドに座るペシュメルガの腰に抱き着いている。甲冑のひんやりとした温度も少年を心地よくさせた。
「あまり深入りするな…闇に呑まれるぞ…」
カッツェは珍しく口を開いた男を見上げて「それもいいかもね」と大きな溜息を吐くと再び男の甲冑に顔を埋める。
「明日は会議、、明後日もグリンヒルでまた会議。僕は政治なんてわからないのに、『どう思われます?』なんていつもいつも…本当は『わかりません』って答えたいのに、シュウさんは『リーダーらしく』とか延々と言うからシュウさんに丸暗記させられたセリフを喋って……僕、人形みたい……」
むくりと起き上がり、今度は全身でペシュメルガに抱き着く。ペシュメルガはその小さな少年を抱き返してやり、その背を撫でてやる。
「僕を見てよ…僕は「リーダー」じゃなくて「カッツェ」なのに……もう、頭の中、ぐちゃぐちゃだよ……」
「…………」
ペシュメルガは泣きそうな声で今まで溜めていた鬱憤を洩らす少年をそっとベッドに押し倒す。
「……今は闇に抱かれ眠るがいい。光の元だけでは生命は存えない…だが、忘れるな。お前は光の元に生まれし存在。運命の気紛れに選ばれてしまった存在は何時になろうともその運命、歴史に翻弄されるだろう」
カッツェはわかっている、と言いたげにペシュメルガの首に腕を回す。
「今だけで、いいんだ……今だけは…全てを、忘れさせて…………」
唇が重なり、ペシュメルガの手が服の中に侵入してくる。素肌に触れたその指は彼の甲冑と同じくひんやりとしていて、何故か心が安らいだ。
「………ペシュメルガ………」





「……む〜……」
カッツェは薄く瞼を開く。そしてゆっくりと起き上がろうとして
「痛?!え?何、腰痛〜?!」
下半身に走った痛みに顔を顰めながらそろっと上半身だけを起こす。
(何か体全体だるくてギシギシする…)
昨夜の事思い出して首を傾げる。
(昨日はフリックさんと夕ご飯食べて、お風呂入って…それで部屋に戻ってきて……)
ふと何か思い出しかけたがまるで煙の様に消えてしまう。
(……?すぐ寝たよね??)
首を傾げながらカッツェはベッドから降りる。下半身の重い痛みに耐えながら服を着替え、ふと今日の予定を思い出す。
(…昨日まで会議行くのあんなに嫌だったのに…なんだか、やっていけそうな気がする…)
カッツェは仕上げとばかりにサークレットを嵌め、「よし」と満足そうに肯く。
「会議、行かなきゃね!」
カッツェは鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。


少年は運命の道を確実に前へと歩んでいく。
愛された記憶だけを置き去りにして。

――これでいいのだ…

まるで自分に言い聞かせるかのように男は呟く。
光の力を宿す彼に自分は近付いてはならない。
自分の様に闇に染まり、闇を纏う存在にはなってはならない。

かの少年に光りあれ

かの少年に降りかかりし闇は我が剣で切り払おう

少年よ、汚れる事なかれ



かの少年に光りあれ






(了)


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あっは〜★「恋歌2」進まないからまたペシュ主書いちまったよ!!
は〜次はルカ主でも書こうっかな〜♪
2000/05/09/高槻桂




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